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はじまり

 俺は22歳学生。周囲は就職のことばかり気にしているこのご時世で、俺だけはみんなと違った。なぜなら俺には夢があるから……。



 『夢』、そう俺はアメリカンドリームを追い求めてやまない夢追い人in Japanなんだ。おかげで年下の彼女にも呆れられ捨てられそうなくらいモテて困っている。モテるって罪だね!

 さて、俺の夢は偉大なブルースマンになること。3ヶ月前に誰かから借りたCDがきっかけだった。P.P.キングというアーティストの作品で、彼のスリルイズバーンという曲を聴いた瞬間、俺の身体に100万ボルトの電流が流れたのをよく憶えている。あれは凄かった。こんな音楽反則だろって6回は言ったのはよく憶えていないが、とにかく衝撃的音楽体験だったんだ。

 だってそうだろ?あの曲が流れた瞬間、部屋の空気が変わったんだから!!どう変わったかはとても言葉では言い表せないけど、でも嘘じゃないんだ、信じてくれ!その、なんていうか、凄く怪しげな風が俺を優しくも激しく包み込んで、汗ばむ俺を快楽の絶頂へと誘うみたいな……。そんなとてつもない何かが俺を襲ったんだ。

 日本でそれまで大した苦労もせず生きてきた俺に、暮らしが豊かすぎて逆に貧しい感性しかなかった俺にその音楽は本物の何かを与えてくれた。これにはもう降参するしかなかったね。俺はパンクロックとかのCDを円盤投げの選手みたいに窓から投げ捨てた。あっ、某アイドルのCDは捨てなかった!これは命でありかけがえのない存在だからです。


 

というわけで、俺はブルースを歌うことにしたんだ。そこで、オリジナルの曲を創ることにした。俺もアーティストになるわけだし、作曲税とかもあるしな。

 ギターに関しては中学からロックとかパンクバンドをやっていたから、そこそこの腕前ではあった。大学でもジャズ研とか入ってたし、まあジャズは弾けないけどね!エーマイナーとかハネ気味に弾いてりゃもう極上のブルースだろって思うしな。

 問題は声である。P.P.キングみたいに悲しみと荒々しさと喜びと繊細さを内包した声なんて俺にはなかったのだから。

 でも、とりあえずそこは頑張るでよしとした。



 そして3ヶ月の月日を経て、待望のオリジナル曲が完成した。俺は無職になって毎日暇でも楽しみたいことを誇らしげに宣言する『アイムフリーエブリデイ』、最近食費も出してもらって申し訳ない彼女へ感謝の気持ちを溢れんばかりに歌った『サンキュー』、就活をしないことを心配して毎日泣いている母親に向けた優しいメッセージソング『ドンビーアフレイド』などなど、珠玉の名曲たちが誕生したのだった。

 よし、じゃあ行くかと俺は揺るぎない自信を胸にヨーヨー木公園へと向かった。この腐りきった現代をブルースの力で浄化するため、弾き語りをするのだ。そうすればきっと、多くの悩める現代人を救うことが出来るって、その時の俺は確信していたんだ……。


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