別邸案内
「こちらが姫様の部屋です」
城から別邸に引っ越してきた後、メイドに屋敷を案内して貰っていた。今は私の私室を見ている。
「広いわね」
私が広すぎて驚いているとメイドが説明を続ける。
「王族ですから、他の貴族の屋敷とは違いますよ」
「機会があったら他の貴族の屋敷も見てみたいものだわ」
「姫様は見たことあるじゃないですか。お友達と遊んだり」
「あのね。6歳の私に友達なんているはずないでしょ?」
「確かに魔術学院に通うのは12歳になってからですしね」
「そう。それまでは貴族学院に通うのよ」
「なるほど」
「あと2年で姫様も学生ですね」
「出来ることなら学院になんて行かないで家でゴロゴロしてたいんだけどね」
ホントのことを言うと別邸から出たくないがそれを言っても反対されるだけなので言葉にはしない。
「それは、周りが許しませんよ。第六でも一応、王族なんですから」
「"第六でも"は一言余計よ」
「失礼しました」
ここで私はふとしたことに気が付く。
まだ彼女の名前を知らない。
「今更だけど、あなた誰?」
「誰?とはどちら様のことですか?」
「あなたのことよ。まだ名前聞いてないんだけど?」
「私でしたか、姫様専属メイドになりました。ソフィアでございます。末永くよろしくお願いいたします」
「末永くって、夫婦じゃあるまいし」
「この国は同性同士の婚姻も認められていますよ?」
「え、そなの?」
「まぁ、実際しているのはほとんど女性同士の方が多いですけどね」
ソフィアの説明を聞いて納得した。
「確かに、百合って言葉もあるしね」
「百合とはなんですか?」
「なんでもない。それより案内続けて」
「分かりました」
私はソフィアに案内された後に親睦を深めるために彼女を遊びに誘った。
「姫様、どちらに行かれるんですか?」
「王都を見てみようと思って」
「いつも遊んでるじゃないですか」
「いつもって、私たち初対面よね?」
「そうですね」
これは嘘。本当は一方的に姫様を見ていた。
私は<陰>に属していたため秘密裏に護衛していたからだ。
「楽しむわよ!」
「楽しむのはいいですが民衆の前では丁寧な口調でお願いしますね」
「分かりました」
私はメイドの注意を聞いて言葉遣いを直した。
「王都広いので出発する前にどこ行くのか決めておいた方がいいですよ」
「それもそうね」
「ソフィアは行きたいとこないの?」
「私ですか?」
「お昼はどこで食べたい?」
「姫様の行きたいとこでいいですよ」
「それだと親睦にならないでしょ?お互いのことを知るために出かけるんだから」
「なら、ステーキを食べに行きましょう!」
「ステーキ?」
この世界にステーキあるのね。良いこと聞いたわ。
「ステーキ良いわね。後はどうする?」
「姫様の行きたいとこに行きましょう」
「行きたいとこねぇ。服でも買いましょうか」
「服ですか?」
「今は6歳だから公務には関わってないけど、いくら第六王女とはいえいつかはやらないといけないでしょ。視察とか」
「確かに、他の方はやられてますしね」
「だからその時のための服を買うの」
「何着か買いますか」
こうして私たちは王都に繰り出した。