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転生魔王の復讐革命  作者: 月輪林檎
転生した魔王
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診療所の手伝い

 それから一週間シャルロットはある悩みを抱えていた。


(どうやったらリーシェルの隙を縫って外出出来るんだろう……)


 無断外出(教会&街から)をやってしまったので、基本的に夜はリーシェルの部屋に連れて行かれて寝かされるようになっていた。街の外でやる事と言えば、魔族の捜索なのだが、前回の捜索で感じ取れなかったので、実際に見つかるかどうかは絶望的な確率になっている。その事もあり、シャルロット自身も外出はしたいが、したところで意味があるのかという考えになってしまっている。


(いや、外出の前にまた調べものをするかな)


 今日は診療所の手伝いもない。そのため部屋の中でゴロゴロとしていたシャルロットだが、魔族に関する情報を少しでも集めたいと考えて、図書館に向かう事にした。

 外出の準備をしてから、一階に降りて礼拝堂に入る。そこでは神に祈りを捧げている信徒の姿が見られた。リーシェルが聖書を読み上げているので、教会の入口でリーシェルを見守っているマザー・ユキムラの元に向かう。


「マザー。図書館行って来る」

「はい。いってらっしゃい。気を付けて」


 マザー・ユキムラに頭を撫でられたシャルロットは、マザー・ユキムラに笑みを向けてから教会を出る。そして、自分の愛車である自転車に乗って、図書館へと向かっていった。

 図書館の駐輪場に自転車を停めて中に入る。そして、すぐに受付に向かった。受付には司書のセリエが居り、シャルロットに気付くと微笑む。


「シャルロットさん。本日は如何されましたか?」

「図書館利用です。貸し出しは……まだ分からないです」


 シャルロットはそう言いながら、図書館利用カードを鞄から出してセリエに渡す。


「はい。では、名簿に名前をお願いします」

「はい」


 シャルロットが名前を記入している間に、セリエも手続きを終わらせる。手続きと言っても、カード裏のバーコードを読み取るだけなのですぐに済む。


(コンピューターだっけ。教会にはないから、あまり触った事ないんだよね。便利なものらしいけど、使い方も良く分からないし、私には本の方が性に合ってるかな)


 そんな事を考えているシャルロットに、セリエが図書館利用カードを返却する。


「はい。では、ごゆっくりどうぞ」

「はい。ありがとうございます」


 シャルロットはそう言って、本棚の方へと向かって行った。


(前に調べた勇者と魔王の資料には、魔族のその後とかはあまり書かれてなかったんだよね。てか、総じて魔族のその後に関する資料が少なすぎる。どこかから現れるとか曖昧な事ばかりだ)


 シャルロットは魔族に関する資料が並ぶ小さな本棚の前に来てそう考えていた。そこにある書籍の数は、そこまで多くない。ここにある分の資料は既に全て読み終えている程だった。


(魔族を調べるのは難しいか。あれからどうなったのか知らないと魔族がどこにいるのか予想も出来ないのに……てか、いつの間に大陸が五つになったんだろう……? 私の時はそんなんじゃなかったはず。科学やら魔族やら勇者やらを調べていて、大陸に関する資料はあまり調べてなかったかも)


 シャルロットの記憶では、大陸は大きく分けて三つだった。だが、今の時代のどの地図を見ても大陸は五つも描かれている。他の事を優先して調べ続けていて、大陸が分かれた理由をしっかりと調べるという事はしていなかった。


(リーシェルとかも地図に違和感はないみたいだし、マザーも同じだった。つまり、大分前から大陸の数が五つだったって事。でも、私がいた大陸はかなり大きかったはず……もう一度地図を見てみよう。何か魔族に繋がるかもしれない)


 シャルロットは、魔族関連の本棚から離れて世界地図が載っている本を取り出す。自分の身長の半分くらいもある大きな本を抱えて、閲覧用の机に置き、世界地図を見る。


(う~ん……私の記憶にある大陸の名残が見つかれば……あっ、ここら辺の地形は見た事あるかも。うん……うん……そうだ。この五つの大陸は、二つの大陸がそれぞれ三つと二つに分かれた結果生まれてる。確かに、私が住んでいた大陸の近くには少しだけ小さい大陸があったはずだし。

 でも……謎なのは後もう一つの大陸。確か離れた場所……丁度裏側に位置するくらいの場所にも大陸があったはず。あまり開拓も進んでいない場所だってけど……う~ん……)


 シャルロットは様々な地図を見ていくが、古くても数百年前の地図しか載っていなかった。


(あの時代の地図は、割と高値で取引されていた。それくらい出回らなかった。だから、失われた? 皆、楽しそうに測量とかしていたのに……勿体ないな。私と初代勇者の戦い(誇張)が後世まで伝わっているのだから、大陸が割れた理由とかがどこかにあっても良いのに……でも、この蔵書数から探し出すのって、結構億劫なんだよねぇ……)


 シャルロットは背後に広がる本棚達を見て、どうするべきかと考えていた。そこに司書のセリエがやって来る。


「お探しの本でもありますか?」


 シャルロットが本棚を見ていたので、何か探している本があるのかと思い訊きに来たのだった。


「えっと……この大陸が生まれた時の話がある本とかってありますか?」

「五つの大陸が生まれた話ですか? そうですね……大陸創世の話は数が少ないです。一応、あるにはあるのですが……」


 セリエは、本棚の方に向かって一分程で戻ってくる。それは絵本だった。


「絵本?」

「はい。大陸が出来る理由を絵本で簡単に纏めたものです」


 シャルロットは絵本を軽く見ていく。そこには、シャルロットが欲しいと思っている大陸が割れた理由などは書かれていなかった。そこの内容で予測するならば自然現象なのだが、シャルロットはあまり納得出来なかった。少なくとも何千年という期間で出来るものではない。これが正しければ、シャルロットが生きていた時代は何万年、何億年前という事になりかねない。

 だが、実際にはシャルロットと初代勇者の戦いは数千年前とされている。これが適当に作られたものでない限りは、あり得ないという事になる。


「他の本ってないですか?」

「ここでは扱っていませんね。私が読んだ事があるものでは、元々大きな大陸だったものが、初代魔王の魔素が原因というものがありましたね?」

「え?」


 シャルロットの顔から表情が消える。それに気付いていないセリエは頭の中で過去に読んだものを思い出しながら話していく。


「初代魔王が敗北し、魔素によりダンジョンを生み出して地下深くへと身体を沈めた際、魔素が飛び散っていき、元々大きな一つの大陸だったものが五つに割れたというものや初代魔王の怒りが魔素となって大陸を引き裂いたというものだった気がします」

「え?」


 内容の一部が完全に間違っていたので、シャルロットは少し困惑し始める。間違っているのは、元々一つの大きな大陸だったという点だ。そこから過去の大陸に関する情報が全くないのだと予想する事も出来た。


「あっ、そうでした。これは論文か何かの内容でしたね。ただこれの証拠として、海の中に沈んだ街があるというものがあります。海にも魔物がいるので、確認が困難なのですが……」


 セリエはそう言いながら本棚の方へと向かって、一分程で戻って来た。


「こちらの本にある……これです。この写真のこの部分が街の跡と言われています」


 セリエが持って来てくれた本に載っている写真には、黒くて分かりづらいが家の跡のようなものが朧気に見えている。本当にあるような気がしないでもないようなという程に曖昧な写真だった。

 内容的には、危険を承知で向かった写真家のカメラだけが流れ着いて、こうして載せる事が出来たというものだった。そこから写真家が亡くなった事が考えられる。


「一つの大陸から割れたんですか?」

「論文ではそう書かれていたと思います」


 シャルロットの記憶から考えて、一つの大陸から割れたのだとすると、完全に与太話となる。そのため、これが本当かどうかは分からない。だが、それでも初代魔王の魔素が、二つの大陸を破壊した可能性はあった。

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