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転生魔王の復讐革命  作者: 月輪林檎
魔王として聖女として

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54/60

予定外のキティルリアの出番

 翌日。シャルロットは、変わらず一人で勉強していた。そんな中で、シャルロットの耳に低く大きな音が聞こえてきた。その音により、窓も軽く揺れている。


(爆発音?)


 シャルロットの耳には、それが爆発音に聞こえていた。

 遠くから響く音のため、シャルロットは少し訝しみながら、窓に近づいていく。すると、窓の向こうに黒い煙が上がっているのが見えた。


「ラスティ……」


 シャルロットは、あの爆発にラスティーナが関係している可能性を考えた。ラスティーナは迂闊な真似はしない。戦闘になったとしても、基本的にシャルロットの意向通り、相手を殺さないように動く。

 そして、何よりも魔素の利用が封じられているのも同然のため、魔法だけで対処しなくてはいけない。それでも問題自体はないが状況が状況であるために、心配になっていた。


「動くか」


 シャルロットは、部屋の鍵を厳重に閉めて、ベッドの中に自分の偽物を置く。魔素と魔法で作った偽物が寝ているように見せる。仮に中に侵入された時にまだシャルロットがいるという事を見せるためだ。


「ここに避難の呼び掛けで来たら違和感しかないけど、いないよりマシだよね」


 シャルロットは姿を消して窓から外に出る。窓を閉めて、内側に魔素を通し、鍵を閉めた。


「これで良し。爆発の現場は向こうか」


 魔法で空を飛んだシャルロットは、真っ直ぐ爆発の現場に向かう。爆発が起きたのは、フリージアの端の方だった。工場が並ぶ場所となっているため、ここで爆発が起きても大体は事故だと考えられるだろう。


「爆発の原因は……何だろう?」


 科学に精通していないシャルロットは、工場が危険な物質も扱う場所という事は知っているが、何故爆発が起きるのかやどんな物質が爆発するのか等はよく分かっていない。


「ラスティ……はいなさそうかな。なら、キティルリアになって救助活動をするか。シャルロットがここを彷徨き回っている方が怪しいし」


 シャルロットは、自分が狙われている事を知っている。そのためにホテルで引き籠もっているという事になっている。それを抜きにしても関係者以外がいるという状況が好ましくない工場という場所では、シャルロットが都合良く中にいるという事が逆に怪しく思われるかもしれない。

 それを考えれば、近くにいたキティルリアが爆発音を聞いて救助にやって来たという方がまだあり得ると考えられる。キティルリアがアコニツムに出たということもあり、まだ近くにいた考える事が出来る。

 そして、人間を救助するという行為がキティルリアの平和路線を強調する事に繋がる。

 シャルロットは姿を消したままキティルリアになり、工場地帯に降りて姿を現す。突然現れたキティルリアに周辺にいた人間達は驚愕する。


「大丈夫?」


 キティルリアが手を向けると、工場の作業員であろう中年の男性は怯えて縮まり込む。しかし、キティルリアは全く気にした様子もなく、魔素を出して火傷部分を覆い治療する。

 怪我をしている事を知らせる痛みが消えた事に驚いた作業員は、自分の身体を確認してからキティルリアを見上げた。


「あ、ありがとう……」

「どういたしまして。作業員達の避難誘導を頼める? なるべく安全な場所まで誘導していって。自分の命を優先して良いから」

「あ、ああ……」

「それとここの消火って水を使ったら問題ある?」

「なるべくなら使わない方が良い」

「分かった」


 消火する上での注意点を聞いたキティルリアは、空に上がりながら魔素を広げて、火元の確認と怪我人の確認をしていく。


(火災が起きてる工場内にも何人か残ってる。魔素で保護しつつ治療。外にいる怪我人達は、さっきの作業員がいる場所に移動させながら治療。火元は……ここか。可燃物が集まってるのかな……発火しているものを覆って空気を遮断。確か、窒息消火だっけ。水が危ないなら、こっちで対処しないと。後は……ガス漏れかな? ここら辺は魔素で覆いつつ元の状態に復元しよう。燃える原因になるし)


 火災の原因となっているものを次々に消していき、内部に取り残された人間達の命を繋ぎながら、外に移動させる。


(幸い窓が割れてるから、新しく酸素を得た事での爆発的な燃焼が起きる事はない。そこから出す。出した後は全体を魔素で包んで窒息消火。火災の原因追及は、こっちの消防士に任せよう)


 内部の人間の救出を終えて、ある程度の治療と火災が起きた工場の消火を進めていく。


「作業員はこれで全員か? 私が感知出来たのは、これで全員なのだけど」

「…………ああ、あの場所で作業していたのは全員のはずだ。まさか、あの火災で全員が生き残る事が出来るとは思わなかった。感謝する」


 キティルリアが最初に助けた作業員は、工場内で監督をしている者だった。意識の高い監督であったが故に、自分が監督している作業員の顔と名前はしっかり覚えていた。


「なぁ、あんたは魔王なんだろう? 何で俺達を助けるんだ? 人間なんて憎い敵だろう」


 キティルリアとは会話が出来ると考えた作業監督者は、噂で話を聞いた時から気になっていた事を訊く。


「平和にしたいから。魔族の暮らしを安定化させて、また自由に生きられるようにするには、平和にする事が必要不可欠。人間を滅ぼそうと動いたところで、今の地位が逆転するだけ。いずれひっくり返されるかもしれない。そんなイタチごっこを続けるよりも。魔族と人間が手を取り合える元々の世の中に戻した方が良い。長年の諍いは双方に飲み込む方向で後世に平和を残す。それが私の目的だ」


 問われた内容に、キティルリアはしっかりと答えた。この答えは、作業監督者だけではなく。その場にいた治療中の作業員達も聞いていた。

 一人の疑問に答える事で数十人の耳にキティルリアの望みを聞かせる事が出来た。人間達のキティルリアへの理解を深めるためには、これ以上に良い機会はない。ただ例え人がその一人しかいなくとも、キティルリアは当然の如く答える。

 それはキティルリアにとっての誠意であり、この精神がキティルリアの人望に繋がっていた。

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