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転生魔王の復讐革命  作者: 月輪林檎
転生した魔王

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30/37

シャルロットの戦い

 街から離れた森の中に入ったキティルリアは、身体を伸ばしていた。そして、背後にいる配下の方に向かって振り返る。


「ふぅ……どうだった?」


 配下……ラスティーナがフードを払う。


「存在を知らしめるのには十分だったかと。ただあの者達を見せしめにした方が恐怖を残せたと思いますが」

「恐怖を残す事が目的じゃないでしょ。それにあれの裁きは、人間達に任せるべきだよ。暴力的な手段とかじゃなくてね。暴力は伝播するから。暴力的な手段で解決出来るって知ったら、どんどんその手段に固執し始めるかもしれないでしょ?」

「魔王様のお望みとは異なる結果になりますね」

「そういう事」


 キティルリアがそう言うと、身体が魔素に変わっていく。そして、魔素が消えた後に現れたのは、シャルロットだった。身体を魔素で包み込み、魔力で覆う。そうして自分の姿を過去の自分のものとしたのだ。知っている者が見れば、初代魔王が復活したと分かるが、この世界にそれを知る人物は極僅かだ。


「もう解いてしまうのですね」

「いつまでも偽っていられないからね。まぁ、元の姿を偽れるって分かっただけでも収穫だよ。見た目だけは、全く一緒だったしね。ラスティが居てくれて良かった。完成度高められたし」

「私としてはキティルリア様のお姿の方が慣れているのですが」


 ラスティーナは、姿を偽ったシャルロットを見て、改めて初代魔王であるキティルリアと再会出来たという喜びを覚えていた。だからこそ、キティルリアがシャルロットに戻る事が悲しく感じていた。

 シャルロットは、少しだけ浮き上がってラスティーナの頭を撫でる。


「当たり前でしょ。そっちの身体の方が付き合いは長い訳だし。その内、そっちの姿で再会も出来るよ。今の私はシャルロット。キティルリアとしての再会は、その時まで大切に取っておこう。さっ、教会に戻るよ。ちゃんと透明化してね」

「……はい。シャルロット様」


 ラスティーナは微笑みながら、シャルロットに跪いて返事をする。昔からの事なのでシャルロットは当たり前のように受け入れる。二人で魔法と魔素による二重の透明化をして教会の二階に戻る。

 二階では、リーシェルが二人を持っていた。


「シャル」

「ただいま。上手くいった?」

「どうかしらね。少なくとも大きな暴動には発展していないわ。全体的に落ち着いていると思う。マザーがスラム街の方に治療をしに向かったから、私も行って来る。シャル達は?」

「私も行く。リーシェルと一緒に行動していた方が、キティルリアとシャルロットを結びつけ辛くなるでしょ?」


 魔素という点から、キティルリアとシャルロットを結びつける可能性はなくはない。限りなくゼロに近くても、ないと言い切れない限りシャルロットは可能性を減らしていく方向に動く。


「まぁ、そうね……ラスティーナさんは」

「教会に待機しましょう。こちらに避難される方が現れてもおかしくはありませんので」


 ラスティーナについてあまり知られていない以上、ラスティーナがシャルロットの傍にいる事に対して違和感を覚える人が出て来るかもしれない。そのためラスティーナは教会で留守番をする事になった。留守を預かるという点で、ラスティーナがマザー・ユキムラとリーシェルから信頼を得ているという風に繋げる事も出来る。打算で考えると、この方が良い。


「ありがとう、ラスティ。リーシェル、行こう」

「ええ。よろしくお願いします」


 シャルロットとリーシェルは、教会からスラム街へと走る。自分の足で走っているシャルロットは、自分の愛車が恋しくなっていた。


「自転車欲しい……」

「どのみち一台しかなかったでしょ」

「私が先に行く!」

「姉を何だと思っているの……」

「姉かな?」


 そう答えたシャルロットをリーシェルが軽く小突く。そんな風にいつも通りのやり取りをしながら、スラム街に着いたシャルロット達はマザー・ユキムラを探す前に怪我人の治療に走る。


(最初の爆発の被害とそれまでに起こっていた暴動の被害者が多いみたい。準備に少し時間が掛かったからだ……シャルロットがキティルリアとバレないようにするには、そうするしかなかったのだから仕方ないと言えば仕方ない……でも……)


 シャルロットは被害が出る前に止められれば良かったと反省していた。

 だが、実際はそんな事は出来ない。被害が出なければ、キティルリアが介入する理由がなくなる。人間同士で無益な争いをしている。そうした人間の犠牲者が出ている状況に魔王が介入する事により、今代の魔王は人間との和平を強く願っているという風に知らしめられる。

 そう考えてくれる人間が出て来るのが例え僅かな可能性でも、そうする事がスラム街の住人を護り、魔王としての自分の存在を知らしめられるという最低限の成果を満たせる条件だった。


「シャル!」


 リーシェルの声でシャルロットは我に返る。無意識でもしっかりと治療はしていたので、患者の数は減っている。


「こっちを手伝って!」

「うん!」


 シャルロットはリーシェルの元に走る。リーシェルが治療している患者達は重傷の患者ばかりだった。そこで治療している医者の中にはイリスやマザー・ユキムラもいる。


「火傷……爆発の被害者だね。大分深い……」


 シャルロットは周囲を見回す。重軽傷の差はあるが、火傷の被害者は多い。その他にも骨折などの患者も多くいた。この状況で一人一人治療していったところで、死者を一人も出さないのは厳しいと誰もが考えている。だからこそ、一人でも多く救おうと必死に治療していた。

 それはシャルロットも同じだ。そこで一番の最善手と取る。


「……私が全員治療する! 皆は軽傷者の治療をお願い!」


 子供が何を言っているのかと言おうとした医者をイリスやリーシェルが制止する。


「出来るのね?」

「うん」

「皆指示に従いなさい! 軽傷者の治療をして行くわよ!」


 リーシェルの確認に頷いたシャルロットを見てイリスが指示を飛ばす。イリスが経験豊富なエルフである事もあり、困惑しながらも治療をしていた医者達は軽傷者の治療に移る。リーシェルやマザー・ユキムラだけではこうはいかない。イリスが築いていた信頼による成果だ。

 それを見届けること無くシャルロットは行動を始める。まずやる事は、魔素を重傷者達の身体を肌にぴったりと沿うように包み込む事。密度を濃くすれば、肌を外気に晒さなくなる。当然呼吸するための穴は開けておく。

 その魔素を目印にして魔力を流す。患者の身体全体を分析して、流れてくる情報から治療法を選択。流している魔力で回復魔法を行使して、魔素内部にいる患者達の治療をしていく。


(死んだ細胞を取り除く……新しい皮膚の生成は間に合わないだろうから、患者に合わせて魔素から生成……魔傷を起こさないように魔素要素は最後に取り除く……水分が足りない……水魔法で直接補給……水分が浸透するように魔素で補助……こっちは瓦礫の破片が食い込んでる……分解して排出……破裂した眼球の生成……魔素から作り出す……内臓が破れてる……魔素で補助しながら修復……足りない血液は水魔法を変質させて生成……)


 計二十三名の重傷者。その全ての治療を同時並行で進めていく。新しい皮膚など欠けた患部を補うものは魔素を無理矢理変質させるという離れ技を使用する事で埋めていく。

 拒絶反応を起こさないように、変質させる内容を患者から採取し分析してからの生成となる。そうして出来たものを定着させていき、最後に生成した患部に残る魔素を取り除けば治療が終わる。

 現在シャルロットがやっている治療は、どの人間も魔族も真似する事が出来ない高度な治療だった。そんな治療を二十三名へと同時に施すという事を、簡単に行う事など出来るはずもない。二十三名全員の身体を全て分析するだけでも脳は通常時よりも遙かに酷使している。激しい頭痛と戦いながらもシャルロットは治療を止める事はなかった。

 そうして治療に集中しているシャルロットは全身から滝のように汗を掻いていた。

 軽傷者の治療をしながら、医者達は呆然としていた。呆然としているのは医者だけではない。自分達の家族が無事かと離れた場所から見守っていた住人達やただ見ていた住人達も同じく呆然としていた。

 目の前で起こっている奇跡のような光景とシャルロットの身体から溢れ出して患者達に注がれている金色の光の粒が古の聖女を思わせていたからだ。

 集中状態にあるシャルロットは、自分の魔素と魔力に集中するために目を瞑っていた。だからこそ気付かなかった。自分の身体から聖女の力である金色の光の粒が出ている事、それによって治療がいつもよりも正確で素早く行えている事に。

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