表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の復讐革命  作者: 月輪林檎
転生した魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/38

救助活動

 シャルロットとイリスが話している診察室に、勢いよくユイが入ってくる。


「先生!! 大変です! 工事現場で事故が起こり、負傷者が多数出たそうです! 現在救急車が出払っており、向かうのに時間が掛かると!」

「私のところに来るって事は、この近くね?」

「徒歩で十分のところです」

「なら、あそこね。シャルちゃんも来て。人手が欲しいわ。ユイは、ここを閉めてから来て。なるべく多くの道具を持ってね」

「はい!」


 ユイが支度をしに向かうのと同時にイリスが動くので、シャルロットも後を追う。


「身体強化は出来るわね?」

「はい」

「付いてきて」


 身体強化した二人は事故が起きた工事現場に駆け出す。一分で現場に着いた二人はその状況に顔を顰める。ビルの解体工事中に、一部が崩落。作業員を巻き込む。更に作業に使う重機までも倒れて被害が拡大していた。救助活動を行っているのは素人ばかりである。


「応急処置をして運ぶわ」

「分かりました」


 シャルロットとイリスは、それぞれで行動する。効率良く行動しなければ対処が遅れると判断したからだった。


(ビルの崩落は止まってる。この状態を魔素で維持。被害の拡大を減らそう)


 シャルロットは新たな崩落が起こらないようにビルを魔素で覆う。自分の身体やユウキの身体を覆った時よりもぴったりとくっつけて形を維持させる。ビル全体ではなく崩落箇所で行うので、並行作業で治療も可能だった。

 シャルロットは倒れ込んでいる人の元に素早く駆けつける。


「大丈夫ですか!?」

「き、君は……?」

「医者の付き添いです。足が折れているだけですね。少し痛いですよ」


 即座に診断したシャルロットはすぐに治療を開始する。


「がっ……!」

「我慢してください。他に怪我人は?」

「む、向こうの瓦礫……の傍にいた……」

「終わりです。もう歩けますが、無理はせずゆっくりとこの場を離れてください。後日改めて病院で診てもらうように」


 シャルロットはそう言って、教えてもらった瓦礫の方に向かう。


(ビルの崩落は大丈夫そう。全体的な強度はまだ生きているって感じかな。薄く魔素を広げてビルの状態を常に管理しよう)


 シャルロットはそう考えながら、瓦礫の下敷きになっている人を見つける。


「大丈夫ですか?」

「あ……痛い……」


 意識の有無を確認したシャルロットは、瓦礫に埋まっている部分を魔素で確認する。


(力は割と分散してる。問題は完全な下敷きになっている足。事故が起きたのは、ついさっきみたいだけど……)


 シャルロットは患者の状態を確認する。


「まだ大丈夫そう。瓦礫を退かします」


 シャルロットは瓦礫を魔素で持ち上げて、魔力で身体強化をしてから患者を引っ張り出す。折れた足と傷付いた身体を回復させていく。


「他に怪我人は?」

「すまない……瓦礫に挟まれて……他は……」

「いえ、お気になさらず。骨を繋ぎました。痛みはあると思いますが移動出来ます。後日病院で診てもらってください」

「ありがとう……」


 治療を終えたシャルロットはすぐに駆け出して、瓦礫がある場所に向かい魔素を放って人がいないか確認していく。


「いた。大丈夫ですか!? 私の声は聞こえますか!?」


 返事はない。完全に意識を失っている事が分かる。目視で確認がし辛い事もあり、魔素で身体を覆って状態を確かめる。


(頭部から出血。でも、瓦礫が上手く重なったおかげで、挟まれている箇所はなし。これなら持ち上げられる)


 魔素で瓦礫を持ち上げて、埋められていた患者を引っ張り出す。瓦礫を慎重に地面に降ろしつつ、治療を始める。


(頭部以外はない。小さな瓦礫が頭に当たって気絶した後、上から瓦礫が重なって埋まった感じかな)


 頭の傷を塞いで状態が安定した事を確認したシャルロットは、肩に患者を乗せて駆け出す。そうして安全な場所まで運んだ後にゆっくりと降ろした。


「すみません。彼をお願いします」

「えっ!? あ、はい」


 シャルロットは、近くにいた人にその先の運搬を任せて、再び現場へと戻る。子供であるシャルロットがケロッとした顔で大人一人を運んだことに加えて、そのまま現場で大人に交ざって救助をしている事に野次馬で来た人達は唖然としていた。


「そちらの瓦礫の下に一人! 複雑に重なっていますので私が! 皆さんは向こうにいる方々をお願いします!」


 瓦礫を退かそうとしていた人達にシャルロットはそう指示を出した。一歩間違えれば、瓦礫が下敷きになっている人を更に圧迫する事になるので、シャルロットが魔素を使った方が安全だからだ。


「……分かった! 皆! 行くぞ!」


 先程からシャルロットの救助を目撃していた人もおり、シャルロットの方が確実に助けられるという判断をした。そのくらいの判断が出来る人物達が救助をしてくれている事にシャルロットは内心感謝をしていた。


「聞こえますか!?」


 返事はない。シャルロットは、即座に瓦礫の下敷きになっている患者の状態を確認する。


(頭部外傷、肋骨と大腿骨と脛骨腓骨の骨折。ここまでは問題ないけど、内臓がやられてる。時間がない)


 瓦礫の積み重なり方を確認したシャルロットは、丁寧に素早く瓦礫を移動させて患者を露出させる。そしてすぐに治療を始める。そこにイリスが合流した。


「シャルちゃん」

「内臓をお願いします。私は骨と外傷を」

「分かったわ」


 会話は短く簡潔に終わらせて、二人掛かりで治療していく。シャルロットが骨を繋いでいき、その間にイリスが内臓を戻していく。


(本当は手術をするべき怪我だけれど……シャルちゃんの魔素かしら。破れた内臓がある程度形が整っている。これなら内臓も治せる。さすがは初代魔王という事なのかしら)


 内臓が破裂した場合、開腹してある程度内臓の形を整えながら回復魔法を使う必要がある。そうしなければ、治したとしても癒着が起こる可能性があるからだ。だが、シャルロットが丁寧に魔素で整えてあるため、開腹せずとも癒着の心配がない。感覚的にイリスも理解していた。


(さすがはイリスさん。内臓の損傷がすぐに治っていく。これなら助かる)


 二人で協力する事により、更に治療の速度を上げていき重傷患者を回復させていく。その中で、イリスはシャルロットの身体から金色の光の粒が出ている事に気付いた。


「シャルちゃん、それは?」

「え?」


 シャルロットがイリスを見た瞬間に、金色の粒は消えた。その存在にイリスは心当たりがあったが、今は呑気に話す場面ではないと判断して首を横に振る。


「後で良いわ。内臓の治療は終わったわ。そっちは?」

「こっちももう大丈夫です。私が運びますので、イリスさんは次の救助に」

「ええ。分かったわ」


 意識は戻らないので、そのままシャルロットが再び移動させる。イリスは先に動けない負傷者の元に向かっていった。

 救助活動は一時間に渡って行われていく。救助するまでの時間が延びていくと、救助の際に注意しないといけない事も増えていく事になる。シャルロットは毒素の排除を重視しながら治療をしていき、死者の数を抑えていく。

 そうして全ての救助が終わり、避難も済んだところでシャルロットは魔素による補強を外す。同時にビルが一気に崩落していった。


「おぉ……奇跡だ……」

「ああ、まさか全ての救助が終わるまでビルが保つとはな……」

「奇跡だ……」


 野次馬達が口々にそう言う。魔素を見る事が出来ない人間からすれば、全ての救助が終わるまでの間、ビルが崩落せずに保ってくれていたようにしか見えない。それは奇跡と呼ぶに相応しい現象だった。

 自分の功績が奇跡扱いされている事に対して、シャルロットは何も思わなかった。シャルロットは軽く汚れた服を払ってからイリスとユイに合流する。


「お疲れ様です」

「お疲れ様。シャルちゃん大活躍だったね」


 ユイはそう言ってシャルロットの頭を撫でる。ユイは軽傷者達の治療をしていた。魔法で治す程でもない患者に薬を塗布して包帯を巻く仕事だ。地味ながら重要な仕事だった。


「ひとまず死者は二人だけね。申し訳ない事をしたわ」

「仕方ありませんよ。私達の到着前に既に亡くなられていたらしいので。運が悪かったとしか」


 イリスが死者を出した事に嘆いていたが、ユイが得た情報からは自分達が到着した時には既に亡くなっていた。どう足掻いてもそこを減らす事は不可能だったのだ。そこから死者を出さなかっただけでもイリス達の尽力あっての事だと分かる。


「取り敢えず、診療所に帰りましょう。ユイ、荷物は持っているわね?」

「はい」


救助を終えたシャルロット達は工事現場を後にして、マギア診療所へと戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ