表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

第14話 魔界四天王の長、運動会を仕切る。

「俺様の名前は魔界四天王の長、智謀のリグレットだ。オリヴィア代表、そして魔族代表として王から仰せつかった。今回のうんどぉかいを安全安心に遂行すべく、エルフ族代表のミルク・ファンセント共に進行をさせていただく」

「外交官のミルクです。宜しくお願いします」


 円卓の会議室、オストラバ王国内にある建物内、各種族の代表が集まっていた。

 だが空気は重苦しく、まるで凍り付いている。


 気に食わないのか、獣人代表者、ダリアがテーブルを強く叩いた。


「オィオィ、おかしいだろォ、なんで魔族が仕切るんだァ?」


 モフモフの耳、服の上からでも筋肉が盛り上がっており、色々とはち切れそうだ。

 豊満な胸が、ぷるんと揺れる。うむ、彼女は女性である。

 ただし、獣人族を以外を見下す傾向にありと事前に言われておった。


「脳筋の言う通りだ。記念すべき一回目のうんどぉかいは、平和を重んじる人間族が仕切るべきだ」


 人間族代表、アルフレッド。

 西端な顔つきをした黒髪、年齢は若いが、オストラバ王国の騎士に任命されるほどの手腕。

 ただし、人間族を以外を見下す傾向にあり。以下省略


「脳筋だとォ? なんだテメェ!?」

「そうやって論理的な思考を放棄して騒ぐのが獣人おまえたちのやり方だよな」


「落ち着くんじゃよ、普通に考えたら年の功じゃろう。わしが仕切ろう」


 その二人を宥めたのは、ドワーフ代表のダリウス。

 白い髭をワシワシと触りながら落ち着いている風だが、怒らせると激しい。

 ただし、(ry。


 他には小柄のピピン族や混合種族もいるが、誰もが不満を抱いているとのことだ。


 つまりこれこそが、オストラバ王国が抱えている最大の問題である。


 俺様たち魔族を倒した事で均衡が崩れ、失った矛先が種族の優劣になってしまった、と。


「落ち着いてみんな、リグレットは王から直接任命されたのよ。その取り決めは覆らない。それよりも建設的な話し合いをしましょう」


 流石ミルクだ。俺様が言うべきことを全て言ってくれた。

 だがいつまでも甘えているわけにはいかない。オリヴィアとして、魔族代表として、依頼は完璧に遂行しなければならない。


「みなの気持ちはよくわかる。だがわかっているだろう? 今オストラバ王国は大きく揺れている。今こそ、一丸となるべきではないか?」


 ――決まった。

 これにはミルクはもちろん、各国の代表も驚いただろう。


 こうしてうぃんどぉかいは無事に始まり、無事に終わり、そして平和となる。

 これが、争いのない世の中、俺様にとっては至極簡単――。


「ったく、何が偉そうに”揺れている”だァ? 80年も封印されてた魔ヌケだろ?」

「口が過ぎるぞ獣女、だが一理ある。仕切りは任せるが、現地では人間族に従うべきだ」

「ワシなら何とか出来るぞ。ドワーフは中立を重んじる」

「ピ、ピン族も……」


 だが意見がまとまることはなかった。

 

 ……平和な世の中は案外難しいな。



 それから何度も会議を重ねたが、代表者同士が仲良くなることはなかった。

 だが全ての決め事は何とか終わり、後は開催を待つばかり。


 ひとまずの仕事を終えたので、ぷち打ち上げと評して、ミルク、エリアスと共に希望の丘にいた。


「リグほらみて、星空なんて久しぶりでしょ?」

「綺麗だな。もしかすると、みながこの場所にくれば笑顔になるのではないか」

「どうでしょうね。でも、私たちは頑張ったよ。うんどぃかいの目的は一致団結、この大会で仲良くなれるかもしれないしね」

「そうそう、リグは頑張ったよ! 本当にお疲れ様、凄いよ! 流石!」


 二人は褒めてくれるが、どうも気分が晴れなかった。


 気がづけば俺様は、勇者の墓を眺めていた。


 こやつならどうしていただろうか、笑いながら会議を見ていただろうか、それとも何か秘策を思いついただろうか。


『――あんたがリグレットか』

『ほう、お前が東の魔を苦しめた勇者か、ただの弱そうな人間ではないか』


 初めて会った時、あやつは頼りない人間に見えた。だがその印象はまるっきり変わって行った。


 強く、清く、正しく、そして清々しいほどまでに戦いが好きな男だった。


 奴との一番の思い出は、俺様が封印される直前だろう。


『なあ、リグレット、聞いていいか』

『……この状況で対話を求めるか、次の一手でどちらかが死ぬかもしれぬのだぞ』

『――魔族と人間、お互いに理解できる未来はないか』

『はっ、何を言うかと思えば……そんな未来、ありえぬ』

『そうか……残念だ』


 今思えば、あの時の勇者は本当に悲し気だった。

 真意だったのだろう。俺様は、それが理解できなかった。


 だがあいつは、不可能を可能にした。奴なら、この問題も解決したに違いない。


「ミル、ねえ魔法写真撮ろーっ、ぴーす」

「エリ、飲み過ぎよ。まあいいけど、はい、ぴぃす」


 今まさにこの光景が、勇者あいつが望んだ結果だ。


 うんどぉかいは開催される。それは間違いないだろう。

 だが、このままでいいのか? 本当に……全種族が仲良くなるのか?


 もしあいつが生きていたら……どうするだろうか……。


 ――そうか。


「ミルク、イベントプログラムに変更を加えていいか。確か主催者特権があっただろう」


 俺様の物言いに、ミルクは首を傾げながら「追加って何をするの?」と訪ねてきた。


 運動会は、細かなプログラムに分けられている。

 個人種目に加えて団体戦もあるが、種族で分けてしまうと争いの種になるかもしれぬと、チームはバラバラだ。


 だが俺様は、ふふふと笑う。勇者、お前ならきっとこうするだろう。


「魔族、人間、獣人、ドワーフ、ピピン、誰が一番優れておるのか、全ての結果に種族で優劣をつける。うんどぉかいは、種族対抗の戦争に変更する」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ