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想い出  作者: 彼岸  章華


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内装にて




 さて。

 休息も済み、喉も潤い、準備も十分。


 皆様、大変お待たせ致しました。

 喫茶店の内装、其の姿、ご説明致します。


 ええ。

 ですが、先に此れだけは申し上げておきましょう。


 其の内装は

「美しい」

 ので御座います。


 はい?

「外観も美しくしろ?」


 正論で御座います。

 ですが其れは、わたくしではなく、店主にどうぞ。


 なにせ其の言葉は、料理人に鍛冶をさせようとするようなものですから。


 さて。

 其れでは、茶番は此れくらいにして、本題に入りましょう。


 ええ。

 始めに、大まかな店内の姿から説明致します。


 其のお店は、暖色系の電飾によって明るく照らされております。


 恐らく、皆様は此れから、賑やかな客人同士の楽し気な会話姿を、作品でご覧になることでしょう。


 次に参ります。

 なにせ、色々と見所のある喫茶店です。


 此のような、初歩的な場所で時間を使ってしまえば、三日は必要になりますから、此れには、坊主も飽きるというもの。


 ああ。

 失礼いたしました。


 続けさせていただきます。

 次に、木製の机や椅子が並ぶ店内のとある(カウンター)席の噺です。


 其処では、客人の注文した料理工程が目の前で見られるようになっております。


 客人が食事を注文した際には、乳製品(チーズ)小麦(パン)、珈琲などの芳醇な匂いが、登場人物の鼻孔を擽ることでしょう。


 此れには思わず、皆様の食欲もそそられるはず。


 そして、今では珍しくなった喫煙室があるのも、此のお店の特徴の一つです。


 さらに、此の賑やかな店内では、巧妙な音楽(ジャズ)の旋律で彩られているのです。


 ええ。

 其の姿は、高級食事処(レストラン)さながらの出来栄えですから。


 誰も、あの外観からは、此の素適なお店を予想できないので御座います。


 ええ。

 もし、皆様が億が一の確率で、此のお店に来られましたら、驚かれること間違いなし、で御座いましょう。


 しかし、そんな面白い(ファンタジー)空間にいるからでしょうか。


 此のお店の客人たちの中には

「此の場所は泡沫の夢で、目覚めたら消えるんだ」

 と、信じて疑わぬ者までいるのです。


 実に見事。

 其れ以外の言葉が、思いつきません。


 恐らく、外観との違いが此の印象を裏付けているのでしょう。


 しかし、客人たちの一番の驚きは、其処ではないのです。


 ええ。

 客人たちに、様々な驚きを与えてくれた此のお店。


 最早、此れ以上に何を驚くことがあるのか、と皆様思われるかもしれません。


 ですが、客人たちは其の景色を目の当たりにすると、必ず驚きの声を上げるので御座います。


 其れとは、何か。

 気になりますか?


 其れでは、其の噺を始めましょう。


 ですが此れも、単純なことです。


 ええ。

 なにせ、多種多様な一面の壁を覆うほどの洋風な茶器が数々が、茶器(カップ)棚に、置いてあるのですから。


 ああ。

 何と美しい景色でしょう。


 ええ。

 国内の物から、国外の物。

 現代作家の物から、昔の作家の物まで。


 其の姿は、まるで一糸乱れぬ軍隊のような美しさなので御座います。


 どうやら、飲み物(ドリンク)を注文すれば、好きな茶器を選べるという素晴らしい形式(システム)のご様子。


 噂では、此れを目当てに来る客人も居るのだとか。


 是非、此れからご覧になる作品の中で、其の美しさをお試しあれ。


 しかし其の様な事を言っても、疑問が残るお方もいることで御座いましょう。


 其の疑問とは、即ち、()()で御座います。


 経営。


 其れは、お店を営業するのであれば、誰もが通る道で御座います。


 そして、皆様は客人が来なければお店を続ける事が難しい事を、ご存じのはず。


 そう。

 其の事実に例外は御座いません。


 幾ら料理の腕前が素晴らしいとしても、利益を出さなければ意味がないので御座います。


 此れは、子供でも知っていることで御座いましょう。


 其のためには、店の外観は美しい方が良いに決まっています。


 客を選ぶような真似も、痛手であることに違いありません。


 しかし、此のお店は普通とは異なり、人を選びながら経営をしているのです。


 此れは、外観からお察しのことではありますが、念のため申し上げます。


 そう。

 此のお店は、人に媚びないので御座います。


 しかし其の意図を、理解できなかったのでしょう。


「何故、このようなお店に?」


 ああ。

 或る客人が、過去に此のような文言で、店主に理由を一度尋ねたのです。


 ええ。

 其のとき、店主は困ったような顔をしながら、此のように応えました。


「いや、さすがに驚きますよね。こんな外観をしてるんだ。驚くな、という方が無理でしょう。頑張りましたよ。修復工事(リノベーション)


 そして、年若い店主は、向日葵のような爽やかな表情を浮かべて、言葉を続けました。


「けど。元々立地が良くて、価格が安い所を探していたら、此処を紹介されたもんですから。しかも絶対に崩れないって言うんです」


 胡散臭い。

 怪しさ満載の、紹介文句で御座います。


「確かに、最初は怪しいと思いましたよ。けど、いいなって思ったら引き返せないでしょ?」


 素晴らしい。

 何処ぞやの鴨が、細長い緑の健康的な食材を背負ってやって参りました。


 店主が賭け事(ギャンブル)や詐欺に関わらないことを、切に祈りましょう。


「其れに、第一印象が大事だって何処かのお偉方も言ってましたから」


 駄目で御座いました。

 其のお言葉は駄目で御座います。


 何故なら、其の考えは外れるときには外れるからです。


 そうでなければ、全国模試を鉛筆と熱量だけで最高得点を叩き出す猛者が現れてしまいます。


「第一、見た目だけ見てるような人なら、気付かないでしょ。物の本質ってやつは」


 おや。

 此れは、先程の鴨の噺を撤回をしなければならぬかもしれません。


 なにせ、子供のように無邪気な顔で此のようなことを言うお方です。


 人の格が、違います。


 しかし、物の本質とは。

 実に、哲学を象徴するような言葉が出て参りました。


 ですが確かに、此のような廃墟じみた店に来るのは、余程の物好きか、好奇心が服を着て歩いているお方以外おりません。


 希少で御座います。絶滅危惧種のような希少性で御座います。


 けれども、先程申し上げて通り、此の喫茶店には様々な客人が来るので御座います。


 例えば、大学生の青年や博識なご老人。若手の歌手に売れない舞台俳優。さらには、世界的に有名な映画監督に至るまで。


 実に、多種多様な方々が此の喫茶店にいらっしゃるのです。


 如何です?

 不思議な程に大人気な此のお店。此度の舞台に、最適で御座いましょう?


 ああ。まだ、此度の主役の説明が済んでおりませんでした。


 お噺の主役は、とある老人と青年の二人組で御座います。


 しかし、突然其の様な事を申されましても、皆様、困惑なさる事でしょう。


 ですから、其の二人組の噺に詳しいお方を尋ねて参りました。


 ご活用頂ければ、幸いです。

 事前情報がなければ、見るか否かの判断できませんから。


 しかし調べていく中で、実に面白いことが分ったので御座います。


 其れは、二人の関係が不明、ということで御座います。


 なにせ、或る客人の噺では祖父と孫であると言い、別の客人の噺では、彼らは友人関係であると言うので御座います。


 此れには例のお方も

「此の認識の差は、一体?」

 と気になりまして、二人組の共通の知り合いを見つけ、尋ねられたそうなので御座います。


 すると

「分らない」

 と一言冷たく突き放されたのだとか。


 お可哀そうに。


 例のお方は

「其れは此方の台詞だ」

 と、我々に大声で叫び散らかしておられました。


 其の後の行動は、皆様お察しの通り。


 酒をちゃんぽんしながら、一晩に亘る愚痴の雨で御座います。


 此の愚痴の数々は、此処では省略させて頂きます。


 其の理由は、何故、二人組の噺から(かわず)の話になったのか、などの理解できていない点が複数存在するからで御座います。


 其れにしても。

 何故、此のように意見の食い違いが起きたのでしょうか。


 尋ねた方が見ず知らずの他人だったからだ、と言われますと、確かに其の通りなのですが、知り合いの話では其の限りでは無い事も分っておいでのはず。


 では何故か。


 例のお方は分っておりませんでしたが、実は我々は其の答えは分っているのです。


 そう。

 此れには、或る事実が関係していたのです。


 其れは当の本人たちが、周りにどのように思われようと、気に留めず、興味のない方々であったということ。


 そして、秘密などを共有できる程の間柄の友人が、彼らには縁遠い話であったということで御座います。


 悲しいですが、此のような事実の結果。

 必然的に彼らの関係を知る者は少なくなったので御座います。


 しかし、何とも単純な事で御座いました。


 はて。

 何故、其のようなことまで分ったのか、で御座いますか?


 ふふ。其れは、企業秘密で御座います。




 さて。

 しかし此処まで、色々申し上げてきましたが、肝心の其のお二人に興味がなければ、何もお噺になりません。


 其処で、此れから二人の映像をご覧になる皆様に、一つ或る行動をして頂きたいので御座います。


 何、大変なことではありません。


 進まぬのならば、ご退場。

 進むのあれば、其の席に。


 至極、簡単なことで御座いましょう?


 さて。進む方を選ばれたならば、

 此れより先は、彼らの舞台。


 皆様が、此の作品をお気に召されますこと我々一同、心から願っております。


 其れでは、開幕と致しましょう。

 彼らの数奇な人生を、心行くまでご堪能あれ。

お読みくださり、ありがとう御座います。


それでは、続編をお待ちください

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