プロローグ
皆さんはじめまして! ワイの名前は山田太郎。どこにでもいる一般人。
彼女? 野暮なことを聞くんじゃないよ。
見た目? 野暮なことを聞くんじゃないよ。
陰キャなワイは陰キャらしく高校生をエンジョイしてたんだよ。
同じ陰キャ仲間とゲームの話やアニメの話、アイドルの話とかで盛り上がってたんだ。
「うわー。キモ」
っていうクラスの女子の声は聞こえないフリをしてた。
華の17歳! 帰宅部!バイトは本屋! 彼女いない歴イコール年齢! 告白なんてされたことない! なのに毎年バレンタインはソワソワしてる!
●
ってワイのことはどうでもいいんだよ!
そんなことよりもワイは今、転生して異世界にやって来たんだ。
転生した経緯? 簡単に説明しようか。
よくある話だよ。道を歩いていたら大きなトラックにひかれてってやつさ。
痛かったかって? 正直覚えてないんだよね。
気が付いたらさ、目の前に変なおっさんが居て、いや普通女神とかなんじゃねーの? ってワイも思ったよ? でもおっさんだった。むさいおっさんだった。
で、そんなおっさんが言うわけよ。
「お主は死んだ。そしてその魂は輪廻転生して別の世界で勇者となる」
まぁ今までに色んなラノベとか読んでたからピンときたね!
あー。よくあるやつかーって。
でもさ、ワイみたいな陰キャが異世界に転生してチートスキルで無双して、俺つえぇぇー! してイキるって、やっぱ一部の人間にとっては夢じゃん? これにハーレムがおまけされるなら、死んだとしてもいいかなーって思えるわけよ。
●
というわけで、突然ですがワイは異世界へと転生しました。
頼もしい仲間と共に、この世界を牛耳ろうとしている魔王との最終決戦!
仲間はお決まりの女の子だらけな上に可愛い子ばかり!
みーんなワイに好意を寄せている。
紳士なワイは誰にも手を出していない。
大事なことだから二度言う。
誰にも手を出していない。
つまり童貞のままだ。
そんなワイは今、ちょっと。いやかなりエッチな仲間たちと共に魔王との最終決戦を終えたのだ。
え? いや終わりじゃないよ? 物語はこれからね。
なら早く話しを進めろって?
「おのれ勇者め」
魔王の最後の一言だよ。ほら、ちゃんと聞こう?
「勇者様!」
「勇者!」
「太郎殿!」
「たろう様!」
女の子たちがワイの名前を呼んでいる。
どことなく切羽詰まった感じがしている。
「みんなどうしたのかしら」
ヒロインが首を傾げる。
このパーティーで唯一ワイが苦手な女だ。
そして唯一ワイに好意を寄せていない女でもある。
「忘れたのか勇者!」
仲間の1人が駆け寄って来る。
今にも泣きそうな顔だ。
「魔王は――」
はっとした。
――魔王は呪いを残して甦る――
なんでこんなことを忘れていたのか……
いや。これこそが呪いの力なのか……
「今度はどんな呪いか楽しみだな」
魔王がほくそ笑む。
「私たちのこと忘れないでね」
駆け寄って来てた女の子が光に包まれる。
あれ? この子の名前なんだっけ?
――魔王を倒すことはできない。魔王は呪いを残して甦る。勇者の仲間は1人残らず呪いにかかる――
脳内に声が流れる。誰が言った言葉だったか。
そうか。みんな呪いにかけられてしまうのか……
ワイのせいで……
●
目もくらむような閃光の後に残ったのはワイとヒロインだけだった。
「あれ? なんでここにいるんだっけ?」
ヒロインから聞こえるのはワイの声。
「え?」
ワイの口から出た声はヒロインの声だった。
なんでこの場にいるのか。今まで何をしていたのかは覚えていないが、確かにわかることがある。
ワイは、この世で一番苦手な女の体になり、ヒロインはワイの体になっているということ。
つまり、体が入れ替わっているのだ。
しかも、お互いに有り得ない病気にかかっていることも分かる。
なんで分かるのか、その理由は不明だがとにかく分かる。
同時にその症状が出たことも分かる。
「「きた」」
2人が同時に言う。
「は、早くシテ」
ワイの顔、声でキモい表情をしないでほしい。
けど……
「ワ、ワイも今すぐ欲しい」
「は、早く抜いて」
「口でいいか?」
「本当は挿れたいけど、お互い初めてだし……」
だからワイの顔でその表情やめてくれ。
なぜかは分からないが、ワイとヒロインは体が入れ替わってしまった。
そしてそれだけではなく、勇者の体は定期的に精〇を出さないといけない体に。
ヒロインは定期的に勇者の精〇を飲むか体内に入れるかしなければならない体になってしまったのだ。
この症状は同時に起きる。
ワイもヒロインも互いに好き同士ではないのに、互いの利害のために精〇を提供し搾取する関係になってしまったのだ。
ワイは自分のアソコを自分の口で舐めるという、情けない行為を行う。
ヒロインは、自分の口で自分のアソコを舐められるという、情けない行為を行われる。
勇者のワイは、ヒロインなしでは生きていけない体になってしまったのだった。