1-13.帰還
一端書いたところまでで投稿!
切りが若干悪いですが、また期間空いちゃうのも嫌だったので出しちゃおっと
洞窟で拝借した抜身の剣を手にしたまま外へ向かって行く。
行きに持っていた剣は失われ、もらったポーションも使い切り、荷物としてはどちらかと言えば減った位と思われるが、体感は今の方が数倍は重い。
次に何かと出会ってしまったら正直もう無理だろうと若干の諦念を抱きつつも何とか足を進める。
だが幸いにも洞窟内で魔物と出会うことは無かった。
そして恐怖に追われ駆け抜けた洞窟を一歩一歩進んで行けばついに外が見えた。
ここに来る前の残念な空模様は嘘だったのか頂上を少し過ぎた太陽が温かく照らしてくれる。
更に目の前には美しい紅葉が広がっていた。
この世界に初めて来たときはあの中にいた。
今は一歩外からその景色を眺めている。
どちらも大変魅力的だが、もし一方を選べと言われたら全体が見える方が好みかもしれない。
この風景を写真に収めたいと思うも、持っていたスマホは電源切れどころか、マギアゴブリンと言うらしい魔物の雷撃で爆弾代わりに空へ還っていった。
芋づる式に呼び起されそうなおぞましい記憶に蓋をするように一つ深呼吸をすれば、洞窟に駆け込む前に見た岩肌に咲く紫色の花『キリユキ草』を目指す。
と言っても簡単なアスレチック位の小山を少し登れば直ぐにその花の前へたどり着く。
灰茶の中で紅一点、その一帯だけ藤色に見事に彩られている。
キリユキ草の特徴を書いたメモを見れば、この美しく鋭い刀のような葉は間違いなくキリユキ草であると思われる。
この時期限定の紫の花も特徴通りだ。
今回目的の毒消しに使われるのは葉だけらしいが、他にも根、花も異なる薬効に加工できる無駄なところがない植物で、余裕があれば一株丸々持って帰ってきて欲しいと言われていたので、改めて周囲を確認し1株丁寧に根っこから掘り起こす。
どうせならば周囲にあるもう2,3本頂いていこう。
いずれも綺麗に掘り起こせば3本のキリユキ草を持ってきていた糸で一括りにする。
これで当初の目的は達成した。
小山からの景色を堪能した後、帰路についた。
◆
もうアストフ村の入口が見える所までやってきた。
幸いなことに道中魔物に出会うことは一度もなく、最後に訪れた教会の方向を指し示す魔法のおかげもあり、疲労はあったものの恐らく行きと大差ない時間で戻ってくることができた。
とは言え既に日は傾いている。後ろを振り返れば大自然は夕日に照らされ真っ赤に燃えていて、どこか温かくも人の存在一切を拒絶すような厳しさも併せ持つように思える。
「ヒロさん!?」
少しの驚きと期待が込められたリンカの声が耳に届く。
「よかった……。無事帰ってきてくれてありがとうございます。早速で大変申し訳ないのですが、キリユキ草は…?」
「キリユキ草ならここに。もしかしてジルさんの体調が?」
「はい…。夕方位から熱がさらに上がってしまっていて。直ぐにポーションづくりが出来る準備はしてあるので、私先生の所に行ってきますね。」
状況が掴めないなか半ば強引にキリユキ草を受け取ったリンカが走り出す。
「あっ、ごめんなさい。ヒロさんは宿の方でゆっくりしていてください。おばあちゃんとシン君がいるはずなので。」
それだけ言い残してリンカは走り去っていった。
◆
宿に行けば聞いた通り村長にシンがいた。状況から察するにジルの調子は良くないのだろう、シンは外で待っている様言われたに違いない。
気を張っていて疲れているのかシンは眠気眼で座っている。
「ヒロか!よく戻ったね。」
気付いた村長が話しかけてくる。どこか安堵したような空気を一瞬滲ませるも、子供の前だからか直ぐにいつもの調子に戻り一方的に話を続ける。
「リンカにキリユキ草を渡せたかい?」
「えぇ、お陰様で何とか。」
「ホント!?ヒロさん、ありがとう!」
自分に気付いてか急に目を覚ましたシンが思わずといった様子で駆け寄ってきたので、優しく頭をなでる。
「ところで、『お陰様で』とか聞こえたが、アストフ村の回復ポーションはよく効くだろぅ?」
出会って数日の相手にこの揶揄い方を出来る村長はやはり只者ではない。
或いはこの世界ではこれがデフォルトなのだろうか?
「あんたが噂の勇者様か!ここのポーションはどれもよく効くからな~」
階段から声が聞こえる。いかにも冒険者然とした男がやってくる。
というか『噂の勇者様』と言われた気がして村長を睨む。
「すまないね。村中で噂になっているものだから隠せるものではなかったのさ。まぁこいつのことは信用してやってくれ。この村のお得意様ってやつなのさ。」
「いやぁ、挨拶が遅れてすまん。俺はエド。冒険者パーティ『ヨジン』のリーダで、見ての通り前衛職だ!メンバは今少し外しているから後で紹介させてくれ。アストフ村では昔カシィさんにお世話になってな。この村周辺の依頼は積極的に受けるようにしているんだ。」
「カシィはリンカの父親で元冒険者さ。もう故人だがね。こいつが駆け出しの頃からの付き合いだから口の堅さについては信用してくれ。それに勇者なんてお前達冒険者にとってはそこまで珍しくないだろう?」
「まぁそうだな。最近活躍している冒険者パーティの中には勇者4人組のパーティなんかもあるしな?」
「あぁ噂の。彼らは優秀なんだろうけど護衛を頼むとなると君たちの方が安心できるかな。彼是我々も長い付き合いになってきたしね。」
目の前の冒険者に加え、この世界で今まで見た服とはだいぶ印象が異なるスーツのような恰好の男が入ってくる。
「私はジョン。商人をしている。アストフ村とは先代からの付き合いだから、40年位になるかな?あっ、私も勇者には然して興味が無いから安心してくれ。」
新たな登場人物がまたもや自分が勇者であることを認識していることを悟ると、村長を睨みつける。
「そんな怖い顔しないでおくれよ。ジョンが赤ん坊の頃から知ってるんだ。本人も言っているが信用してやってくれ。」
渋々頷けば村長が話を続ける。
「それにこいつはジルのために急いで毒消しポーションを仕入れて来てくれたんだ。まぁ持ってきてくれたポーションじゃ効果が薄かったけどね。」
「村長、意地悪言わないでくださいよ。アストフ村から流通する薬草がなければ、ここらですぐに手に入るポーションはあれ位が限界です。」
「ははっ、それもそうか。まぁ強力な助っ人を連れて来てくれたし良しとしてあげよう。」
強力な助っ人?とエドの方を見るが首を横に振る。
「レティお姉ちゃんのことだね!」
「ああ。彼女は優秀な聖女だそうだ。正直彼女が来ていなかったらとっくに終わっちまっていたかもしれないねぇ。」
村長のあまりな言い様にシンの方を見ればよく分からなかった様子だったので安堵する。
「本人はまだ聖女見習いだと言っていましたが、本物の聖女でもあそこまで出来る人はあまりいないでしょう。教会内でもここ数年噂になっていますしね。」
「こいつらがカセント町から来るときに着いてきたんだと。教会もここの森の異常事態の対応を考えていて派遣されたらしい。」
「護衛の内容はいつもと変わらないのに報酬が割り増しされていて最高だったな!」
「私もいつもより安く済んだので教会様々ですね。」
「冒険者と言い商人と言い現金な奴ばかりだねぇ。子供の前だから自重しな!」
大の大人が二人して少し縮んだように見える。
信用してもいいかもしれないと思わさせられるのは、この村長の人柄ありきだろう。
「レティお姉ちゃんが魔法でジル姉ちゃんを助けてくれたんだ!」
「えっ?それじゃぁ自分が取ってきたキリユキ草は?」
シンの発言と慌てた様子だったリンカの差に違和感を覚え確認する。
「期待の聖女様…、聖女見習い様でも一時的に症状を和らげることしかできないそうだ。こいつらが村に来てから大分経っているが、ずっとジルに回復魔法をかけてくれてる。そのお陰でおしゃべりする余裕があるわけだ。」
「そっか…、そっか……。」
村に戻ってからもずっと張っていた緊張の糸がやっと緩んだ。気が付けば涙が頬をつたっていた。
「あんたのお陰でジルは助かる。本当にありがとう。」
「ありがとう!!」
村長とシンばかりか、エドとジョンまで頭を下げてくる。
「本当はこういうのは俺たち冒険者の仕事なんだがなぁ、情けなくて申し訳ない。後でお前の冒険譚聞かせてくれよ!」
エドが本当に居心地の悪さを感じているのか、頭を掻きながらそんなことを言ってくる。
「村長としてあたしも聞いておかないとだね。今すぐにとでも言いたいところだが、先に風呂入ってきな!」
村長がタオルを渡してくれる。
ぐしゃぐしゃになった顔を下にしたまま受け取り部屋を後にした。
ゲームでダンジョンクリアした後もストーリ的に帰還せず、
自力で帰らないといけない時ってありません?
もうHPもMPもつきて回復アイテムもなく、何だったら味方の数も少なく、
フィールドの雑魚的にまさか蹂躙されるという。
取り敢えず今回主人公は、前話でヤバいやつとのエンカウントがあったものの、
帰りは何事もなく無事帰ってこれましたとさ。
まだ当初の目的である「ジルを救う」は達成していませんが、流石にこの雰囲気なら大丈夫でしょう。
(未来の自分に言い聞かせ中)
安心して待っていてください!
最後にいくつか登場人物について共有事項を。
・名前だけ登場の「聖女見習い・レティ」は主要キャラです
・「商人・ジョン」「冒険者・エド(+何故か今話で登場できなかった仲間たち2人)」はストーリの1章だけ出てくるタイプなので、そんなに覚えておかなくても平気なはず(多分)
次話もそんなに期間開けずに投稿したいと思っているのでお楽しみに!




