第10.2話 日曜日のおやつ時。バーガー&カフェ・ホロホロ。【天気】霧雨
「ま、鏡のことは一旦置いとくとして」
しいながあんまりにもうるさいので食事が終わるまで話を保留した陸は、ようやく話題を再開した。
「――チルヒメ、どこ行ったの?」
「さあ?」
陸の問いに即答した海斗。
「――神社で雨綺君が説明してたでしょ? 本当にあれで全部なんだよね」
「あれで?」
にわかには信じられないことを言い出す海斗に、陸はあの時の雨綺の説明を思い出してみる。
――おれの次に海斗さんが鏡使ってみたんだけどさあ、おれはちゃんと使えたんだけど、海斗さんは使えなくて、なんでか聞こうとしたらいなかった――
「……や。全然意味が分からん」
ざっくり過ぎる内容に、陸は眉をひそめた。
海斗の言い様からすると、雨綺の説明はそれなりに的確だったみたいだけど、内容がなさすぎる。
「本当に他にないの?」
「ん? あるよ」
「あるんだ」
急に言うことを変えた海斗に、陸はジトっとした目を向けた。
今、雨綺が言ったので全部って言ったじゃん。なんでウソ吐くの?
そういうことばっかりしてると、そのうちオオカミ少年になっちゃうよ?
「まああれだよね。あの説明は雨綺君としては100点なんだけど、実はぼくしか知らないネタがあってさあ――」
海斗はそう言うと、テーブルの上にとある物を置いた。
「なにこれ? ただの枝じゃん?」
出された物を見て訝しんだ陸。
「まあそう言わずによく見てみてよ」
「……」
どこか面白そうにする海斗に、胡乱な目で枝を見てみる陸。
植物にさほど詳しくない陸でも分かるのだけど、これ、本当にどこにでもある桜の枝だ。
なぜこれが桜だと分かったのかと言うと、この枝に付いたつぼみが咲きかけていたからで……
「あ」
その違和感に気付いた陸は枝を手に取った。
今は5月だ。それも、来週にはもう6月に入っちゃうぐらいの最終盤。
なのにこの枝には咲きかけのつぼみが付いている。
「だよね? これあのヒトが校門で持ってたやつだよね?」
陸と同じ結論を持っていたらしい海斗がぱっと表情を明るくした。そして、
「ぼく思ったんだけどさ。これ、あのヒトの御神体なんじゃない?」
海斗の推理に陸はハッとした。
そうだ。
木花知流姫は桜の神様だし、そう言うことあるありそうな話ではある。
そもそもこの枝は、昨日知流姫が校門前でうちの生徒を湧かしていた桜の枝なわけで。
てことは、知流姫が消えたのは――。
「あそっか! 知流姫はこの御神体を何かの理由で手放しちゃったせいで消えて――」
「いや。それだと今御神体が手元にないしいなちゃんが平気な説明がつかないでしょ? それは違うんじゃない?」
「……あ……はい」
海斗の鋭い指摘に、立ち上がっていた陸はしょんぼりと座り直した。
陸 ……主人公君。高1。へたれ。
咲久 ……川薙氷室神社宮司家の娘。ヒロインさん。高1。割といいかげん。
海斗 ……陸の友人。高1。さわやかメガネ。
雨綺 ……咲久の弟。小6。ハスキー犬系男子。
朱音 ……元迷惑系動画制作者。高1。根はいい子。
埼先生 ……朱音の担任。家庭科教諭。うっかりメガネ。
木花知流姫……桜の神様。ギャルっぽい。
奇稲田姫 ……川薙氷室神社の御祭神。訳あって縮んだ。
しいな ……小さくなってしまった奇稲田姫の仮の名。
川薙 ……S県南中部にある古都。
茅山 ……川薙の南にある工業都市。
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明日も更新するかも。未定だけど。




