表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/121

第3話 校門と桜

 海斗(かいと)が指差した方にあったのは、校門あたりにできた人だかりだった。




「いやー、あの人なんかめっちゃエモくなかった? ほら、アタシ思わず動画撮っちゃったし。これネットに上げたらマズいかな?」

「そりゃマズいに決まってるでしょ。だいたいあの人、なんかヤベェ雰囲気(ふんいき)あったし、バレたらマジヤバいよ?」


「そういやお前さあ、ギャルが好きとか言ってなかったっけ? なんで声かけなかったん?」

「いや俺が興味あるのはギャル語な。つかなんだったんだ、あの()。魔法?」

「いやマジそれな! 何だあれ? マジシャン?」




 と、ちょうどその人だかりを抜けて来た生徒たちが、満足そうに話している。


「……?」


 そんな彼らの様子に、(りく)は言い訳を止めて首をかしげる。


 エモ? ヤバ? ギャル? そして、木に魔法。――なんだか情報が取っ散らかりすぎて意味が分からない。


「んー、ヤバい系のギャルかあ……」


 海斗の方を見ると、彼も陸と同じような感想だったようで頭をひねっている。

 すると海斗、何か分かったのか、ポンと手を打って、


「……あそっか! カチコミ!」


「昭和の発想!」


 陸はツッコんだ。

 たしかにヤバい系ギャルってだけなら、そんなことも天文学的確率でワンチャンあるかも……いや、ないな。

 それに、それだとエモいが抜けてるし、木も魔法ない。そもそも今の時代にカチコミって。


「んんー……ならエモコワ系ギャルが木を魔法の杖にしてカチコミに来た?」


「昭和の発想!」


 陸はツッコんだ。

 確かにそれならすべてのキーワードの説明はつく。つくけど、そういうのをアリにしたら、もうなんでもアリじゃないか。

 あとツッコんどいて何だけど、これちっとも昭和じゃない。


「えー? なら何だと思うの? 陸君も考えてよ」


「ええ~?」


 問われた陸は困った。

 そんなの分かるわけない。分かってたらこんなわけの分からない漫才をするわけがなくて――


「つかどうせすぐそこなんだから、見に行く?」


「そうだね」


 こうして二人は人だかりの原因を確かめるため、校門に向かった。


 ◇ ◇ ◇


 陸たちが校門の次馬に加わってみると、そこにいたのは校門の壁に背を預け、野次馬なんていないかのように振舞う一人の女子だった。


 その女子、満開の桜のような艶色(つやいろ)を持つ髪を無造作に束ね、目尻に目の醒めるような朱のアイシャドウ。

 ミニ丈のキャミソールに、デニムのジャケットを羽織り、ダメージ系のスキニーパンツに白のスニーカー。と、彼女は確かに、エモくて、ちょっとヤバそうなギャルだ。


 そしてそんなギャル的な彼女が無造作に(いじ)っているのがスマホ。……かと思いきや、木の枝。

 たぶん桜だろう。ただその木、どんな仕掛けがしてあるのか、花が咲いては散ってを繰り返していて、それが野次馬の呼び水になっているようだった。

 しかし……


「陸君」

「うん」


 ここの言いる野次馬のほぼ全員が彼女にスマホを向けている中、陸たちだけは固唾(かたず)を呑んだ。

 陸たちはこの女子を知っているのだ。

 そして彼女の持つ桜の木がなぜあんな不思議な動きを繰り返しているのかも。


 でもどうして?

 今はもう無害(・・)になったとは言え……いや。だからこそ、こんな所に現れる理由が分からない。


 するとその女子。陸たちの存在に気付いたようで、持っていた枝をポイと捨てると、


「……やっと来たし。つかアンタ、ガッコー終わったらソッコー帰れ。折角あーしが時間ぴったしに来てやっても、アンタどんだけ待っても出て来ねーとか、マジで()えるわ」


 謎のギャルこと木花知流姫(このはなちるひめ)が、以前と変わらない口調で陸に言った。


(りく)    ……主人公君。高1。へたれ。

海斗(かいと)   ……陸の友人。高1。さわやかメガネ。

(さき)先生  ……朱音(あかね)の担任。家庭科教諭。うっかりメガネ。


木花知流姫(このはなちるひめ)……桜の神様。ギャルっぽい。


川薙(かわなぎ)   ……S県南中部にある古都。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ