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第14話 二日目。朝。氷室神社前。

 二日目。朝。


 今日から大型連休の後半戦が開始される。


 今日も今日とて朝寝もせずに家を出た(りく)は、氷室神社(ひむろじんじゃ)の鳥居を一人見上げることから始めていた。




「オレ、昨日の夜考えたんすけど――」


 そう切り出した陸。


「――サクにふりかかる破滅って、サルカニとか令嬢系のやつじゃなくて、アラミタマとかもっとそっち系のやつなんじゃないすかね?」


(ほう、それはなにゆえ?)


「だってそれぐらいしか考えられないじゃないすか。サクはあんなだけど、別に恨みを買うようなやつじゃないからサルカニ系の線はないと思うし、どっかの令嬢てわけでもないし」


(ふむ。なるほど)


 陸の推論に、奇稲田は頷いた。


(たしかに、わらわほどの神が現れる事態となっておる以上、そちらの方が自然やも知れぬが……)


「よね?」


 珍しくクソ真面目に思案してるっぽい奇稲田に、陸は同調した。


 実際のところ、彼女の言うことの半分ぐらいしか信じていない陸だ。けれどそれでも、自分の考察が合っていそうだと言うのは、手がかりとして有益以外の何物でもない。


(まあ、その件はおいおい分かるじゃろ……それより陸よ。そなた、昨夜の約束、よもや忘れてはおらぬよな?)


「約束?」


 おもむろに話題を変えた奇稲田に、陸は首をかしげた。


 そう言えば彼女、今日に限ってなぜかテンションが高い。言葉だけでもそのワクワク感が伝わってくる。


(ほほ、とぼけるでない。そなた昨夜、今日一日はわらわの言う通りに動いてくれると申したではないか)


「あ……」


 奇稲田のご機嫌な理由が分かった陸は、ちょっと気まずくなった。


 実はこの約束。寝落ち寸前の微睡(まどろ)みの中で交わされたもので、陸はそのことをろくに憶えていなかったのだ。

 だから陸にとってこの約束は、「言われて見れば、そんな約束をしたような気がしなくもなくはなくない」と、言った程度の認識しかないわけで……


(む? なんじゃそなた。もしや憶えておらぬのか?)


「ええ!? や、や! そんなわけないじゃないすか。ちゃんと憶えてますって」


(だったもっとシャンと返事せい! 昨日も申したであろう。気は心。言葉は気。気のない言葉は霊魂を()えさせる。返事は常に元気よく、じゃぞ!)


 奇稲田は機嫌良さそうに説教を始めた。




 彼女、いくら神様とは言っても、その言動を見る限り、そんなに頼れる存在だとは思えなかった。

 今だって得意気に説教しているけれど、その様子は完全に小うるさいだけのおばちゃん。神様らしい威厳とかオーラ的なものはまるで感じられない。


 そんな彼女だからこそ、今日一日の行動を丸々任せるとなると、陸としてもどうして不安が付きまってしまうのだ。


 けど、こんなに嬉しそうな奇稲田に、今になって「やっぱなしで」なんて言うのも忍びない。それに相手は一応神様。そこで陸は――


「あーでも、今日午後から奉仕あるんで、それまでで……いっすか?」


 陸は午前中だけにしてくれることを提案した。


(む。それはまあ、仕方ないかの……)


 それに対し、意外と聞き分けの良い奇稲田の返事。




 こうして、陸の二日目は、奇稲田の指示に従うところから始まった。


(りく)  ……主人公君。高1。へたれ。

咲久(さく) ……ヒロイン。高1。氷室神社の娘。

奇稲田(くしなだ)……氷室神社の御祭神の一柱。陸に協力する。

海斗(かいと) ……陸の友人。高1。さわやかメガネ。

ひまり……咲久の先輩。高2。弓道部。


川薙市(わかなぎし)……S県南中部にある古都。小江戸。江戸情緒が香るけど、実は明治の街並み。


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