表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇〇〇の神の申す事には  作者: 日曜定休のsai山
【第2幕】火曜日
110/119

第21話 火曜日の昼休み。川薙南高校1-3【天気】雨

 火曜日。雨足が強くなったり弱くなったりを繰り返す肌寒い日の昼休み。


 すっかり溶け込んだグループで昼食を取った(りく)は、その後すぐに開始されたトランプの手札を確認すると、暗い顔をした。




「陸くん。今引き悪かったでしょ? 今顔に出てた」


「んあ? そ、そう? や。んなことないけど?」


 目聡(めざと)くツッコんできたドンくんに、陸はにへらっと笑い返す。

 けど実際、陸の気分がノって来ないのはそれが理由じゃない。


 陸の手元にあるカードは、3、3、3、4、8、9、9、9、10、10、J、K、K、A、2。

 今から始まるトランプを2組使った大人数(おおにんずう)向けゲーム「シン・大貧民(シン・大富豪?)」の初戦としては、そこまで悪くない。


 じゃあなんで陸はそんなにモヤついているのか?

 それは、今この場に海斗(かいと)がいないからだ。




――眼鏡(めがね)の彼を信用しないコとでス。彼はそう遠くないうちにあなたの元から去り、そして妨害者(ぼうがいしゃ)となってあなたの前に現れるでしょうかラ――




 キツネの寄越(よこ)した「有用な情報」を思い出した陸はますますモヤついた。

 あんなの所詮(しょせん)キツネの与太話(よたばなし)。そう思いたい。

 でも、だったらどうして海斗は昨日の放課後以降一度も姿を見せず、連絡もくれないのか?


「……陸くんの番だよ?」


「んあ? あ、うん」


 心ここにあらずの陸は、ドンくんに(うなが)されると手札から8を出した。

 そして一旦(いったん)場を流し、あらためて4を出してゲーム再開。


「あー、今日小宮山(こみやま)君来てないけど――」


 陸は思い切って海斗の事情を知っている人はいないか尋ねた。けれど、


「さあ? はい『5』」

「ん~知らない。はい『6』」

「じゃあ『10』ね。右に同じ」


 と、返って来る答えは(かんば)しくないものばかり。


「てか、陸くんが知らないんじゃ誰も知らないよ。『ジョーカー』」


 そう告げたのはドンくんだった。

 そうして場を流したドンくんは一度ゲームを止めると、


「てか、陸くんメッセとかした? 陸くんが自分から連絡するのイヤな人なのは知ってるけど」


「んん~……」


 手痛いところを突かれ、反論に困る陸。


 ドンくんは海斗と同様、陸にとって気軽な付き合いができる数少ない友人の一人だ。

 そんな彼から「自分から連絡しなさい」と叱られてしまった。

 でも陸だって昨夜自分から連絡しようとしたのだ。ただ、ちょっと気の利いた文章が思い付かなかっただけで……


「はい。『革命』!」


 ゲームを再開したドンくんが5枚(・・)のカードを出した。


 革命だ! 手札の強弱関係が逆転する最悪の事態に、予定を狂わされたメンバーが一斉に悲鳴を上げる。

 けれどその中で唯一陸だけは、それほど慌てる様子もなく。


「むむう……陸くんだけ反応が悪いなあ……もしかして『革命』するのバレてた?」


「や。まさか」


 不満げに(いぶか)しむドンくんに、陸は不敵(ふてき)微笑(ほほえ)んだ。

 基本的に保険をかけながらプレイするタイプの陸は、こういう時でも安定した戦いができるのが強みなのだ。

 ただし、そんなプレイスタイルで上位が狙えるはずもなく、いつも3位で終わるというデメリットもあるのだけど。


「あ。そうだ。海斗の休みで思い出したけど、今日は(さき)先生も休みらしいね」


「埼先生が?」


 おもむろに飛び出した隣のクラスの担任の話題に、陸は目をぱちくりさせた。


 埼先生とは昨日九家稲荷(ここのつかいない)に行く途中の市杵島(いちきしま)横丁(よこちょう)で出会っている。

 その時は顔色のわりに元気なあいさつをする小学生ぐらいの子を連れていたけど、もしかして……


「あれ? もしかして海斗の方は知らないのにそっちの方は知ってる?」


「や……ん。ノーコメント」


 もしかして、あの子に何か?

 おいそれと口にすべきではない事情を(さっ)した陸は、この話題を打ち切った。

 するとその時、教室のスピーカーから『ジーー』と音が鳴りだして――。


『あー、生徒の呼び出しをします。次の生徒は至急職員室に来るように。えー、1年3組のー――』


「あれ? 陸くん呼ばれてるね。何かした?」


「さあ?」


 まったく心当たりのない呼び出しに、陸は首をかしげた。


(りく)    ……主人公君。高1。へたれ。

咲久(さく)   ……川薙(かわなぎ)氷室(ひむろ)神社(じんじゃ)宮司家(ぐうじけ)の娘。ヒロインさん。高1。割といいかげん。

海斗(かいと)   ……陸の友人。高1。さわやかメガネ。

ひまり  ……咲久の先輩。高2。クール系女子。

雨綺(うき)   ……咲久の弟。小6。ハスキー犬系男子。

朱音(あかね)   ……元迷惑系動画制作者。高1。根はいい子。

(さき)先生  ……朱音の担任。家庭科教諭。うっかりメガネ。


木花知流姫(このはなちるひめ)……桜の神様。ギャルっぽい。

奇稲田姫(くしなだひめ) ……川薙氷室神社かわなぎひむろじんじゃ御祭神(ごさいじん)。訳あって縮んだ。

しいな  ……小さくなってしまった奇稲田姫の仮の名。


雄狐(おぎつね)   ……川薙熊野神社かわなぎくまのじんじゃから出て来たおキツネさん。


川薙(かわなぎ)   ……S県南中部にある古都。

茅山(かやま)   ……川薙の南にある工業都市。


【更新履歴】

2025.9.11 終わりに呼び出しを追加。

2025.9.12 微修正


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ