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〇〇〇の神の申す事には  作者: 日曜定休のsai山
【第2幕】月曜日
109/121

第20話 月曜日の夜。自室【天気】雨

 夜。


 日没を過ぎた頃からパラついてきた雨が少し強くなる中、今日も一日が終わろうとしていた。

 そしてそんな雨音を聞きながらベッドに寝ころんでいた(りく)は、その雨音になぜか微妙な不快さを感じながらスマホを(いじ)っていた。




「や。これじゃ怒ってるみたいに見えるし、もっと違う書き方は……あ~、にしてもあのキツネ、ホント何なんだ?」


 考えがまとめきれなかった陸は、ぽいとスマホを投げ出すとぼーっと天井を見上げた。


 今日再び訪れた雄狐(おぎつね)との邂逅(かいこう)。それは陸にとって愉快(ゆかい)なものではなかった。

 あのあと、結局雄狐の出した条件を()んでいた。

 けど、それは知流姫(ちるひめ)桜枝(さくらえだ)(しち)を取られていたから。

 もしあそこで「ノー」とでも言おうものなら、あの桜枝はもう戻っては来なかっただろう。

 でも、そうやって苦虫(にがむし)()(つぶ)すような気持ちで「有用な情報」とやらを聞いてみれば、返って来たのは(のど)の奥につっかえた魚の骨みたいに不快なだけの情報で……




――眼鏡(めがね)の彼を信用しないコとでス。彼はそう遠くないうちにあなたの元から去り、そして妨害者(ぼうがいしゃ)となってあなたの前に現れるでしょうかラ――


 それが雄狐の寄越(よこ)した「有用な情報」とやらだった。




「眼鏡っつったら小宮山(こみやま)君しかいないけど、なに言ってんだあのキツネ?」


 陸は折角の情報をまったく信じようとはしなかった。


 だって「眼鏡の彼」こと小宮山海斗(かいと)は、先の破滅騒動(はめつそうどう)ではあの奇稲田姫(くしなだひめ)召喚(しょうかん)するなど騒動の解決に大きく貢献(こうけん)してくれた、陸の頼れる友人なのだ。


 そんな海斗が今さら陸の邪魔?


 今の陸の目的と言えば、神託(しんたく)にあった「川薙(かわなぎ)の破滅を回避」すること。

 それはその神託を一緒に授かった海斗も同じはずで、そんな彼がどうして妨害を?


「はっ、んなバカな!」


 段々イライラしてきた陸は、ベッドの上に放り出したスマホをまた手に取ると画面を眺めた。

 そこには海斗に送ろうとして結局やめた書きかけのメッセージが表示されている。


[今日来なかったけど部活いそが――]


 やっぱりダメだ。いい文章が見つからない。


 実は、今日はあれから海斗がやって来ることはなかった。

 勿論(もちろん)、海斗が来なかったのは生物部の活動が長引いたから。と、そんなことぐらい聞かなくたって予想はつく陸だ。

 けど、いつもの海斗だったら行けなくなった時点で「行けなくなった」と連絡の一つも寄越(よこ)してくれそうなものなのに、今日に限って何の音信(おんしん)もなく。


「ああもう! あンのクソギツネ! イヤなタイミングで変なこと言い出すなよ!」


 海斗の裏切り。――そんなあるはずのない可能性が頭から消えなくて、モヤモヤが(つの)るばかりの陸だった。


 ◇ ◇ ◇


 ところで、陸がまたしてもキツネの世界に行ってしまったのは、突然開かれた拝殿(はいでん)の扉に押されて縁回(えんまわ)りから落とされたのがきっかけだ。

 けれど、じゃあなんで拝殿の扉が勝手に開いたのかと言うと、どうやら拝殿の中にキツネが1匹閉じ込められていたのが原因らしく……


「や。それ、たぶんあの雄狐だよな? あいつ、あんなんでも本当に本物のキツネだったんだ」


 またしてもスマホを放り出した陸は(ひと)()ちた。


 ちなみに、そのキツネのことを教えてくれたのは、ギリギリのところで転倒(てんとう)に巻き込まれずに済んだひまりだ。

 だからキツネの世界に行った時も、ひまりの姿は見えなかったのだけど、そのせいでひまりには余計な心配をかけてしまったようで。




――ちょっと貴方(あなた)! 私を(かば)うなんてどうかしてるんじゃないの! バカっ!!――


 それは、陸がキツネの世界から戻った直後に聞かされたセリフだった。

 どうやら向こうに行っている間の陸は、(はた)から見るとまるで死んでいるように見えるらしいのだ。


――あ! まだ動かないでじっとしてなさい! どこか痛いところはない? 気を失ってたってことは、頭打ったのよね? なら、救急車を……!――


 あの時のひまりは慌てようは、普段の彼女からは想像できないほどだった。

 きっと本気で心配してくれたんだろう。


「ひまセンパイ……今度会ったら謝っとかないと」


 陸はため息を吐いた。

 自分の不注意のせいで彼女にあんな顔をさせてしまった。それは陸にとっても(つら)いことだ。


「ん? や、でもそもそも一番悪いのはあのキツネじゃん?」


――それじゃあお願いしまス。ああそうそう。言い忘れてましたが、今回も期限が必要ですネ。では明日までデお願いしましょうカ――


「は? 『明日までデお願いしましょうカ』じゃねえっての!」


 身勝手ギツネの別れのあいさつを思い出した陸は、憤慨(ふんがい)した。


(りく)    ……主人公君。高1。へたれ。

咲久(さく)   ……川薙(かわなぎ)氷室(ひむろ)神社(じんじゃ)宮司家(ぐうじけ)の娘。ヒロインさん。高1。割といいかげん。

海斗(かいと)   ……陸の友人。高1。さわやかメガネ。

ひまり  ……咲久の先輩。高2。クール系女子。

雨綺(うき)   ……咲久の弟。小6。ハスキー犬系男子。

朱音(あかね)   ……元迷惑系動画制作者。高1。根はいい子。

(さき)先生  ……朱音の担任。家庭科教諭。うっかりメガネ。


木花知流姫(このはなちるひめ)……桜の神様。ギャルっぽい。

奇稲田姫(くしなだひめ) ……川薙氷室神社かわなぎひむろじんじゃ御祭神(ごさいじん)。訳あって縮んだ。

しいな  ……小さくなってしまった奇稲田姫の仮の名。


雄狐(おぎつね)   ……川薙熊野神社かわなぎくまのじんじゃから出て来たおキツネさん。


川薙(かわなぎ)   ……S県南中部にある古都。

茅山(かやま)   ……川薙の南にある工業都市。


【更新履歴】

2025.9.4 微修正


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