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〇〇〇の神の申す事には  作者: 日曜定休のsai山
【第2幕】月曜日
104/121

第16話 月曜日の放課後。氷室神社~市杵島横丁【天気】曇り

「あー、合格祈願(ごうかくきがん)!」


 ひまりの話を聞いた(りく)は納得した。

 ひまりたちは弓道の昇段審査が近く、祈願を終えた今は授与品(じゅよひん)を待っているところだったのだ。


「今まではこういうの個人でやってたんだけど……ほら。今はあの子がいるでしょ?」


 と、ひまり。

 彼女の言う「あの子」とは、勿論(もちろん)咲久(さく)のことだ。

 咲久(さく)はむすひの看板娘として大忙しだけど、あれでも一応はこの神社の娘。

 そんなのが弓道部に所属しているのなら、部として祈願しに来たとしても、たしかにおかしくはない。


「てことは、サクも?」


 陸はそれとなく周りを見渡した。

 今このタイミングで咲久に会ってしまうと、昨日の扱い方についてとか結構面倒臭いことになりそうだ。けど、いると分かってる咲久の顔を見ないなんて選択肢、陸には存在しないわけで。


「残念。あの子なら来てないわ。本当なら一緒に来るはずだったんだけど――」


「ひむひむ、急に先生に呼び出されちゃったんです。しかも教頭と学年主任と担任の3人から。いやさすがにちょっとわけ分かんないですよね」


 ひまりとの言葉を奪ってまで会話に交じってくるスッポンさん。


 ともあれ、陸は考えた。

 よりによって担任のみならず、その上位互換(じょういごかん)の教師たちからも呼び出されるなんて、咲久は一体なにを……


「――て! あっ!」


 ふと思い当たることのあった陸は、声を上げた。

 それは川女(かわじょ)1-A教室の惨状(さんじょう)だ。

 あの教室は破滅騒動の最終決戦地だったせいで、(なか)ば崩壊していたのだ。


 もし教師陣が、あの時の被害について咲久が何か知っているのではと目を付けたのだとしたら……


「違うわよ」


 陸の考えを見抜いたひまりが言った。


「第一、壊れた教室は奇稲田(くしなだ)様が消えた時一緒に直されてたじゃない」


「あ。ああそっか」


 と、コソコソと内緒話を始めるひまりと陸。


 うっかり早とちりしてしまったけれど、そこはひまりの言う通りだった。

 崩壊しかけていた1-A教室は、咲久を救うために奇稲田が犠牲(ぎせい)となった時、あらかた修復されていたのだ。

 まあ、縁結びと稲作を生業(なりわい)とする奇稲田姫にそんな能力があるはずがないので、あの力は別の神様の助力によるもの、と言うことになるのだろうけど。


「で、貴方(あなた)の方は? 随分(ずいぶん)と急いでるみたいだったけど」


「あー、や。実はすね――」


 内緒話を終えた陸はまた普通に話し始めた。

 すると、その様子を見ていたスッポンさんがものすごく驚いた様子で口をパクパクさせていて――。


 あ、あれ? まさか今の破滅の話、聞かれ――!?


「ひ、ひむひむの彼ぴっぴさんが、ひむひむがいないのをいいことにひまちゃんセンパイと浮気してる!」


『してない!』


 二人の声が完全にハモった。


 ◇ ◇ ◇


 それから。


 陸は、九家稲荷(ここのつかいなり)に行くため氷室神社(ひむろじんじゃ)を出てからと言うもの、ずうっと困惑(こんわく)していた。

 

「あのさ……なんでみんなしてオレに付いて来るんす?」


 と、一行(いっこう)の先頭を歩かされている陸。

 なぜだか知らないけど、彼の後ろには雨綺(うき)にひまり。そしてスッポンさんまでもが付いて来ていたのだ。


「別に付いて行ってるつもりなんていないわ。ただ帰り道が同じ方向なだけ」


「……」


 ひまりの言い分に、陸は(いぶか)しんだ。

 たしかに九家稲荷は、氷室神社から川女への道中にある。けど、氷室神社から川女まで2㎞超。歩いて帰るにはちょっと面倒な距離だと、陸は思うのだ。

 それに、今いる市杵島(いちきしま)横丁(よこちょう)は、今となっては地元民ぐらいしか通らない小さな道なので、地元民じゃないどころか川薙(かわなぎ)市民ですらないひまりにそんなこと言われても、いまいち説得力がなく……


「ねえぇ~ひまちゃんセンパぁ~イ。なんでバス使わないんですぅ~? 来るときはバスだったのにぃ~」


 案の定(あんのじょう)、スッポンさんが恨みがましく抗議の声を上げていた。

 この微妙な蒸し加減の曇り空の下、延々歩くのは嫌なんだろう。

 けれどひまりはツンとすまし顔。


「で、雨綺は? 何で付いて来んの?」


 ひまりのことは一旦保留にした陸は、雨綺に話を振った。

 雨綺もまた当然のように付いて来るけれど、一緒に来いなんて言った覚えはこれっぱかりもない。


「九家稲荷はうちが管理してる神社だろ? おれが行かないでどうすんだよ?」


 得意気な雨綺は、指に引っ掛けたキーホルダーをくるくるっと回した。

 このキーホルダーには、九家稲荷の本殿や拝殿の鍵が付いている。


 陸はジトっとした目で雨綺を見ると、ため息を吐いた。

 社務所(しゃむしょ)でひまりと話していた時、うっかり九家稲荷に用が。と匂わせただけで、このまとわりつきよう。

 あの雄狐(おぎつね)との約束は「海斗(かいと)には知られるな」だから、雨綺たちには知られてもたぶん大丈夫なんだけど、それでもご遠慮(えんりょ)願いたいことに変わりはない。




「あの……ちょっとすみませんが、道をお(うかが)いしたいのですが」


「え? あっはい」


 突然降って湧いた質問に、陸は立ち止まった。

 よそ見していたせいで、相手の存在に気付かなかったけど観光客だ。

 川薙は観光地なのでこういうこともままある。


「実は、氷室神社という所に行きたいのですが、ここから行くには……」


「あーそれだと……あ」


 答えかけた陸は、そこで気がついた。

 そしてそれは相手も同じだったようで。


「おや? こんな偶然もあるんですね。そちらにいるのはお友だちですか?」


「あっはい。一応」


 陸に道を尋ねた人物とは、埼先生だった。


(りく)    ……主人公君。高1。へたれ。

咲久(さく)   ……川薙(かわなぎ)氷室(ひむろ)神社(じんじゃ)宮司家(ぐうじけ)の娘。ヒロインさん。高1。割といいかげん。

海斗(かいと)   ……陸の友人。高1。さわやかメガネ。

ひまり  ……咲久の先輩。高2。クール系女子。

雨綺(うき)   ……咲久の弟。小6。ハスキー犬系男子。

朱音(あかね)   ……元迷惑系動画制作者。高1。根はいい子。

(さき)先生  ……朱音の担任。家庭科教諭。うっかりメガネ。


木花知流姫(このはなちるひめ)……桜の神様。ギャルっぽい。

奇稲田姫(くしなだひめ) ……川薙氷室神社かわなぎひむろじんじゃ御祭神(ごさいじん)。訳あって縮んだ。

しいな  ……小さくなってしまった奇稲田姫の仮の名。


雄狐(おぎつね)   ……川薙熊野神社かわなぎくまのじんじゃから出て来たおキツネさん。


川薙(かわなぎ)   ……S県南中部にある古都。

茅山(かやま)   ……川薙の南にある工業都市。


【更新履歴】

2025.7.25 微修正


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