苦情は受け付けません
「なあ!!お前の幼馴染なんなの!!マジなんなの!!…まじなんなの!!!」
「先輩、先輩の語彙力まじヤバいです」
「いやお前も大概だろ!!」
教室にわざわざ押しかけてきて、どこにでもいるモブ高校生一年の俺、只野武に文句を言いつつ漫才みたいなやりとりをしてるのは二年生の七光槍男先輩だ
最近この漫才は既に教室の日常風景になりつつある…とほほ
やりおパイセンは親が地元の有力企業のボンボン二代目社長(本人は無能で会社が回ってるのは優秀な専務のおかげというのがもっぱらの噂というかほぼ事実だ)で未来の三代目もドラ息子全開、成績も悪いおバカだ
ルックスだけはいいものの女遊びが激しいことで有名なヤリちん先輩だ
ただ、男子からも女子からもそこまで嫌悪感を持たれてはいない
何故かといえば基本受け身な先輩のハーレムはみんな年上で、主に打算と物欲にまみれた性格ドクソビッチな表参道系JDなどで形成されており、学校の大人しい女子や節度のある陽キャ女子とはクラスメート以上の関わりもないし、被害も皆無だからだと思われる
そんな先輩がクソビッチ女子大生を全部振って?そもそも互いにお遊びというかセフレだろうし真剣な交際でも無いから振ったという表現が適切かも不明だがとにかくえんがちょして真剣に付き合い始めたのが…
俺の隣の家に住んでいる幼馴染の見た目だけは超絶美少女な清原エリカだった
因みにここもランクは真ん中ぐらいの学校だけどエリカの成績はミジンコレベルなのでもっと偏差値低い別の高校に通っている
「…だから最初に言ったじゃないすか!エリカはガチの厨二病だって!!」
「デート中にいきなりすれ違ったサラリーマン殴ったんだけど!?その人キレちゃったよ!!
そりゃいくら美少女とはいえ他人からいきなり殴られて喜ぶ奴居ないよな!!面倒だから20万握らせて黙らせたけどさ!!
で、なんであんなことしたのか聞いたら『敵だと思ったから』って!!!
厨二病にも越えちゃいけない一線ってあるよね?!…あるよね?!」
「金あると楽でいいっすね!!
昔エリカと買い物行った時同じことあったけど俺は諭吉で解決出来ないから相手の男にひたすら土下座しましたよ!!」
「何故そこでしっかり叱ってやめさせない!!!」
「俺はただの幼馴染ですが!!
保護者じゃないし付き合ったことも無いしはなから恋愛感情もないんですが!!」
「あと刺身包丁持ち歩くのダメでしょ!!エアガンとかならまだしも凶器だよ凶器!!」
「あー、エリカは被害妄想やばいっすからねぇ…なんせ厨二病なんで」
「だからね?!限度ってものがあるよね?!
あとさ!!
デート中に俺のことほったらかして通った車のナンバー必死にメモしてるけどあれなんなの?!」
あ、マズい
「…先輩、それ頭ごなしに否定したりしました?」
「いや、怖くて言えない…」
あっっっっっぶねぇ!!
「いや〜良かったです
車観察の否定はエリカの地雷なんで…俺昔それ踏んで馬乗りでバタフライナイフ首に突きつけられましたからね」
「何それ全然羨ましくねぇ!!」
「まあ頑張って下さい彼氏なんだから」
「めげそうなんだけど?!
付き合って3週間になるけどあいつの考えてること1ミリも理解できないんだけど?!」
「安心してください!中学入学ぐらいから幼馴染の俺も全く理解できないんで!!」
「胸張って言うな!!」
「つか、よくそんなんで続いてますね…」
「う…いやまあそれは…初めて自分から好きになった女の子だし…普段寄ってくるのは向こうは金目当てこっちは体目当てってのが暗黙の了解のビッチだけだし…
それにエリカってさ、たまにふと順次無垢な天使みたいな雰囲気になるじゃん?…5分後にはキレて壁殴ったりするけど!!情緒不安定過ぎだけど!!」
「あー、まあそうっすね…」
初恋があいつとかご愁傷様過ぎてなんも言えねぇ…
「あの…ちょっといいですか?」
先輩に心の中で合掌していると真面目清楚委員長の澪さんが会話に入ってきた
「あ、ごめんね?
最近毎度毎度うるさいよね…」
「あ、いえ…それは良いのですが…」
澪さんの表情は…困惑?が主かな?
嫌悪感は見てとれない
まあ先輩は『金!イケメン!高級車!ラグジュアリーブランド!セックス!』みたいな表参道系女子は雑にヤリ捨てまくってるけど普通の女の子にはごく普通の対応しかしないからな
「あの……部外者が差し出がましいとは思いますけど………七光先輩と武くんがエリカさんを厨二病だと思っている根拠って何ですか…?」
俺と先輩は目を見合わせる
「…怪我してるわけでもないのにいつも腕に包帯巻いてるから?」
「…だな」
「あ、うん…そうですか…
あの
その
今までのお二人の会話から察するに
その包帯、ケロイド状になった静脈付近を隠すためでは??
彼女さんや幼馴染に失礼な仮説ですが…どうしても私には厨二病で片付けていい振舞いとは思えないのですが…」
すると一斉にクラスメートがうんうん頷いた
「「……マジ?」」
「マジ、です…」
その後、澪さんの指摘は事実だと判明し先輩とエリカは別れた…というか周囲が問答無用で別れさせた
暴れたエリカは処置入院となった
先輩はこの世の全てに絶望したような顔をしていた
どんまい!