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代わって郵便局の第一集配課に新たに赴任してきた課長さんは、大林課長と言う名前で、関口課長に比べると、やや年配の男性だった。
ある日のこと、おれが郵便局で配達に出ようとして、駐車場の入口までバイクを走らせていたら、集配課の課長さんたちが全員ガン首並べて、みんなを見送ろうとしていた。おれは軽く課長さんたちに会釈をした。それからいきなり大事二集配課の課長さんのすぐ目の前を横切るかたちで、バイクを走らせたモンだから、第二集配課長は少しビックリした。
おれが配達を済ませて、局内に戻ると第二集配課長が大林課長に向かって「あんな乱暴な運転をするなんて…」と、おれのことを愚痴っていた。大林課長は苦笑いをしながら「まあ、大目に見てやれ」と、第二集配課長をなだめていた。
ある日、朝早く郵便局に出勤するなり、大林課長に呼ばれた。おれは課長席のすぐ脇に置いてあるソファーに座らせられて、課長と一緒に話をした。
「実は昨日、苦情の電話があって、メガネをかけた若い職員が、信号無視をしたとの申告があったんだが、間違い無いかな?」おれは昨日はブツの量か多くて、急いでいたせいでついやってしまったことを素直に認めた。
「郵政は今、いろいろと厳しい目を向けられていて…」
課長は声を出して話し始めた。それと同時に(聞きたくなければ、聞き流してくれ)と、課長の心の声が聞こえた。おれはそれに従い、適当に聞き流すことにした。その次に(私には目を見てくれ)と、聞こえたのでおれは課長と目を合わせた。すると今度は(もういい)との声が聞こえたので、おれは課長から目を逸らした。課長は意に介したように「それじゃ、仕事に取り掛かってくれ」と、大林課長は口から声を出して言った。
その様子を傍から見ていた岩手真由美は「大河さんスゴーイ」と、心の中で思って、ニコニコしていた。
大林課長もおれのことを、間違い無いと確信した。




