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 おれが郵便局に復帰して、久しぶりに同僚たちの顔を拝めることも出来た。みんなおれのことを心配して、どうしてた?と訊いてきた。おれは精神病院に入院した、とは言わずに、胃の調子を悪くして入院していたと、みんなにはそう答えた。

 岩手真由美と、小沼サユリとも再会を果たすことも出来た。二人とも黙っていて、何事もなかったかのような感じだった。おれも敢えて病院のことも、入院する直前に渡した手紙のことも触れることなく、至って普通に明るく振る舞うように努めた。 

 小沼サユリの局内での様子を黙って見ていると、仕事に没頭して余計なことをなるべく考えないようにしていた。しかし、そんな彼女も仕事が一段落して暇ができると一人でしょんぼりして「あなたが欲しいの」と、いう顔をしておれの方を見ていた。そんな彼女を見ているだけで、おれは胸がいっぱいになってしまった。  

 その一方で、神内をはじめ、佐藤、西川、船木などの一派は未だに何がなんだか全く意に介していなかった。利口な奴はどこまでも利口だったが、バカな奴はどこまでもバカだった。おれはここの郵便局の総大将だ。黙っていたがおれはそう思っていた。

  

 それから時は流れて、おれが郵便局に復職してから数ヶ月が経った。関口課長はここの郵便局での成果が認められて、都内の郵便局の局長就任という栄転が決まった。関口課長にもせっかくお世話になったことだしと思い、送別会に顔だけでも出そうかと思った。   

 その当日。小沼サユリはお酒が飲めないので、最初から顔を出すことは期待していなかった。せめて岩手真由美は顔を出すことを少しだけ期待したが、結局最後まで顔を出すことはなかった。だからおれは早めに切り上げようかと思った。 

 宴もたけなわになりかけた頃に、すきを伺っておれは席を立って、課長に最後にお別れの挨拶をした。

 「どうも、お世話になりました」おれは神妙に顔をして課長に声をかけた。

 「おい、大河君。キミもやりたいことがあるんだろうが、郵便局の仕事も頑張ってな」 課長は晴ればれとした表情でおれに言った。 

 「そうですね。大事ですからね」おれはそう言って頭を下げると、そのまま帰宅することにした。 

 その帰りの電車内で、郵便局での一つのおれの時代が終わりを告げたように思えた。それから岩手真由美と小沼サユリの存在が、今まで以上に大きくなろうかとしていた。

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