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 それからしばらくしてから、おれは一時帰宅を数回するようになり、その後で退院が正式に決まった。宇都美はおれとお袋の前で「退院が決まりました。おめでとうございます」と、もったいぶって言った。おれは「あまりおめでたいことばかりじゃないんてね」と、やり返してやった。側にいたお袋は「もっとフランクにモノが言えると良いんですけどねえ」と、苦笑いした。  

 ともあれ、ここから退院することが一応は決まった。この病棟での入院生活が最後の夜、さとちゃんは黙っていたが、おれの顔をジッと見つめて「亮太君、会えて良かったよ」と、心の中で呟いた。 

 おれは退院した後も、外来までクスリを貰いに行かなくてはならなかったし、この病院とまるっきり縁が切れる訳ではなかった。その時は、数ヶ月後に再び入院することになるとは、夢にも思っていなかったが。


 その後おれは、郵便局への復職に向けて親父とも相談しながら取り掛かろうとしていた。親父は現場の人たちや課長さんにも迷惑をかけたんだから、関口課長に菓子折りを持って行くようにと、おれに言った。その言葉に従って、おれは親父が用意した菓子折りが入った手提げ袋を片手に、郵便局まで出向いた。 

 久しぶりに局内に入ったが、組み立てのパートのおばさんを含めて、みんなおれの姿を見て喜んでくれた。おれは関口課長のところまで行き、手提げ袋を見せながら「どうもご迷惑をおかけしました」と、菓子折りを手渡そうとした。関口課長は「そんな、気を遣わなくて良いのに」と、遠慮しながら言った。「いやいや、受け取って下さい」と、おれが言うと「そうか、悪いな」と、やっと菓子折りの手提げ袋を受け取ってくれた。

 それから課長と一緒に上まで上がり、総務課長と総務課の職員とで一緒に話し合いをした。その場にいたおれ以外の3人は、おれにもう少しここの郵便局に居てもらわないと困るぞ、との見解で一致した。当然おれもここで働くことを希望していたので、話は早かった。

 その後手続きをトントン拍子に進めて行き、おれはようやく現場への復帰が正式に認められた。 

 

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