87
その翌朝、おれは保護室の中で、早くも主治医である宇都美にも勝負する挑んで決着をつけてやろうと思った。そこで朝食を食べ終わると、おれはギャーギャー騒ぎ出した。
「病気でもないこのおれをこんな所にブチ込みやがって、新聞社にでも弁護士にでも訴えてやる!ここから出しやがれ!」
おれはここで暴れ出したら、また注射を打たれると考えて、部屋の中の布団の上に横になって、「すいませ~ん!すいませ~ん!すいませ~ん!」と何度も繰り返してわめいた。
すると程なくしてから、男性の看護師がただごとではないおれの様子を感じて、3人ばかりやって来た。おれは保護室から看護室まで行かされた。
そこには岩井先生がいて、その場の異様な雰囲気に戸惑った。
「だ、大丈夫ですよね?」おれは不安げに言った。
「大丈夫、大丈夫。注射は一日一本か。今度から二本にするかあ」岩井先生が言った。
おれは半ば強引に注射を打たれて、再び保護室へ連れて行かれた。おれは横になって、そのまま意識を失った。
それから数時間後、ふと意識が戻った瞬間、岩井先生と男性看護師たちが保護室の中まで入って来た。それからおれの体を押さえつけて注射を打った。
そんなことが2.3回続いて、さすがにおれも観念した。おれは脱力状態になり、体の力が抜けてきた。そんな状態になったのを看護師たちも確認すると、もう無理やり注射を打つことをやめにした。
どうやら宇都美に決着をつけるには時期尚早だったようだ。
おれは看護師が朝食を運んできた時に謝った。
「この前は騒ぎを起こしてすいませんでしたね」
「いいよ。許してあげる」看護師はそう言って、その場を立ち去った。
おれが最初に保護室にブチ込まれてから、ちょうどひと月が経過した。ここに運ばれて来る食事も、次第にまともなモノになってきた。それからおれは保護室からベッドが並んで置いてある、
観察室へと移る準備がなされていた。観察室というのは観察室の中の一角にある部屋で、そこで5.6人の入院中の患者さんが共同で生活をしていた。そこは保護室に比べたらかなり待遇が良かった。
そこで様子を見て良好だと判断されてら、今度は大部屋に移される予定だった。ここの看護師や先生方のやり方は少々荒っぽかったが、みんなおれに元気になって貰いたいと、腹の中ではそう思っていた。




