表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/131

83

 それからしばらくすると、午前9時から午後4時までの間は、独房の保護室から出されて、大部屋で過ごすことが許されるようになった。おれは今回初めて大部屋に出た。そこの談話室と食堂にそれぞれ一台ずつ、テレビが置いてあって、みんなは自由に観ていた。 

 おれは何気なく談話室に置いてあるテレビの画面に目をやった。そこに映し出された映像を観て、おれは我が目を疑った。そこには何か得体のしれないモノが映っていたからだ。おれは思わず気分が悪くなり、テレビの画面から目を逸らした。

 それ以来、今まで普通に観ていたテレビが、実に不自然極まりないモノに見えてきた。いったいコイツらは、どういう意図で番組を制作しているんだ?と、テレビ番組自体に疑問を抱くようになった。まるで観ている人たちを洗脳するために、番組を制作しているようにしか思えなくなった。 

 そのうちおれは、テレビでやっていることなんか、ウソばっかりだ、とも思うようになった。それでも野球や相撲などのスポーツ中継なんかはギリギリ観ることが出来たが、バラエティ番組や下らないお笑い芸人が出ている番組は、もはや観る気が失せてしまった。

 おれはこのことは、しばらくは誰にも言わずに黙っていた。しかし、そのうち病棟の先生にも話しておいた方がいい、と思って岩井先生に面談を申し出た。

 おれは看護室の中にある診察室で、岩井先生と二人だけで面談をした。おれが観た得体のしれない映像のことも話すと、普段は変に茶化したことをいう岩井先生も、その時は真剣な表情をして、おれの話を聴いていた。

 「おれはてっきり、変なビデオでも流して、みんなを洗脳しているのかとも思いました」おれは正直に言った。

 「いや、それはない。また、変なモノが観えたら教えてください」岩井先生はそう言って、とりあえず面談は終了した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ