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 翌日の朝、おれは朝食を食べてから、宇都美が立ち合い元で、注射を打たれた。そのあと保護室に戻ると、おれは酷い幻覚症状に襲われた。あぐらをかいて部屋の中に座っていたが、自分の足元に今朝、朝食に出されたパック入り紅茶があるように思って、それを手で取ろうとするとパッと消えては無くなった。そんなことを何遍も繰り返していると、今度は意識が朦朧としてきた。頭がボーっとしてきて、あぐらをかいた状態で気絶しては布団の上にバタッと倒れて、ハッと目を覚ました。それからまた起き上がってあぐらをかいて、再びバタッと倒れて、またハッと目を覚ましては起き上がり、とその繰り返しだった。

 そんなことが半日ほど続いて、夕方になるとやっと調子が良くなった。しかしその日の夕食に運ばれてきたトレーの上を見るとゾッとした。とても食欲がわくような食事には見えなかったからだ。おれはこんなモン食えるか、と思い一口も食べなかった。

 「何か他に食べるモノは無いのか」おれは看護師に訴えた。しかし、売店はもう閉まっていて何もない、と言われた。おれは気が狂いそうになった。タバコも吸えず、飯も食えずで一晩過ごせと言うのか?

 その夜は部屋の中にある布団の中で横になることも出来なかった。横になって寝たら、そのまま永遠に目を覚ますことなく、死んでしまうかもしれない、という恐怖感に襲われたからだ。

 おれは一晩中、暗くて狭い保護室の中で、立ったままその夜を徹した。

 翌朝になるとおれはすっかり衰弱していた。自分の体を軽くポンポン叩きながら、おれはもしかするとここで死ぬかもしれない、と覚悟した。その間、おれは保護室の外から誰か扉を開けて、助けに来てくれることを祈るような気持ちで待っていた。

 それから一時間ほどすると、ここの病棟の専属医でもあり、宇都美とはまた別の岩井と言う名前の先生が、看護師と共に部屋の中に入って来た。

 「た、助けてくれ…」と、おれはそう言わんばかりに岩井先生に擦り寄った。それから先生に注射を打たれて、おれの意識はバタッと無くなった。

 ハッとおれが目を覚ますと、別の部屋のベッドの上で、拘束されていた。左の腕には点滴がされた状態で。

 

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