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 おれがイスに腰掛けながら、時折声を出してブツブツ言っていると、別室にいた親父とお袋が心配そうにおれの部屋まで入ってきた。

 「亮太、さっきから何だかおかしいぞ。郵便局で何かあったのか?」

 おれは親父からそう言われると、まるで駄々っ子のような口調でこう言った。

 「ああ、やってらんねえ。やってらんねえなあ、郵便局なんか」

 親父はおれの様子を見た。親父もお袋も一緒になって、いろいろ話し掛けた。おれは二人から話しかけられても、遠くかモノを言われているようで、耳に入ってこなかった。しかし、イヤなら辞めても良いぞ、とか、もう少し頑張ってからにしたらどうだ?、とか言っているように聞こえた。おれはそう言われても、ひたすら「やってらんねえ、ああ、やってらんねえ」と繰り返して言った。親父もお袋もおれの相手をしながら「ほら、可愛いモンだね」と我が子を可愛がっている様子が、ひしひしとおれの方まで伝わった。

 親父は最後に「お前、大丈夫か?熱とかないか?」と言いながら、おれの額に手を当てて、それから部屋から出て行った。

 おれは二人が部屋から出て行くと、生まれて初めて親父とお袋の優しさが理解出来たような気分になった。おれの両目からは、いつしか涙が溢れるように出てきた。

 「やっと人の優しさ気づいたか」親父がそう思っているように感じた。

 するとお袋が「亮太、お昼ご飯まだでしょ。ラーメンが出来たよ」と、おれに言ってきた。

 おれは流れ出していた涙を拭って、親父とお袋がいる部屋へと行った。そこにはラーメンが入った丼が一つ、お膳の上に湯気を出して置いてあった。

 親父もお袋も上機嫌な様子で、おれがラーメンをすすって食べている姿を見ていた。

 「郵便局はどうする?辞めるのか?」再び親父がおれに訊いた。

 「知らねえよっと」おれが言った。

 昼間の明るい日差しが部屋の中まで入ってきた。それは穏やかで平和なひとときだった。


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