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 次の日の朝おれは関口課長に言われた通り、郵便局に出勤した。しかし、局内には何故か関口課長の姿はどこにも無かった。

 おれがその日の配達を終えて事務作業していると、関口課長とは別の第2集配課長がおれに声をかけた。

 「大河君、ちょっと訊きたいことがある。時間になったら後で来てくれ」

 おれはこの課長とはあまり馴染みがなかったが、すぐにピンときた。

 「マズイ。コイツはおれの敵だ。コイツの前で、おれは天使だ、なんてうっかり口にしたら大変だぞ。下手すればそのまま病院送りになるか、おれの魂まで引き抜かれてしまう」

 おれはそこで後藤副班長に助け船を出してもらおうと思った。

 「後藤さん。おれはもうこの郵便局を辞めようかと思っているんですけど」

 おれがそう言うと、後藤副班長は目を潤ませて、今までよくやってくれたなあ、と、感慨深そうな顔をして涙を浮かべた。しかし、おれの様子が何か違っていることに、すぐ気づいて涙を拭った。

 「さっき第2集配課長から時間になったら来てくれ、って言われたんですけど」と、おれは言った。

 すると後藤副班長は「アッ、そう。じゃあ行って来て」と、口ではそう言ったが、その裏には「帰っちゃえ、帰っちゃえ」と言うメッセージが込められているのを感じ取った。

 おれは退社時刻5分前になると、無言で班から離れて、非常階段を駆け上がり、更衣室へと向かった。それから大急ぎで着替えを済ませると、今度は非常階段を使って一気に下まで駆け下りた。その途中で船木とバッタリとハチ合わせになったが、おれは素通りして、地下にある駐車場まで行った。船木はおれとすれ違う時に、いったいどうなっているんだ?というような顔をしていたが、おれは構わずに船木を無視した。

 おれはそこからスロープを抜けて外まで出ると、駅の方まで全速力で走って行った。

 駅まで行くと改札口を抜けて、電車のホームまで辿り着いた。おれは息をゼイゼイ言わせて、ここまで来ればもう大丈夫だ、と思って一安心した。おかげで喉が渇いてしまい、ホームの中にある自動販売機で缶ジュースを買って、飲むことにした。

 それからすぐその後に電車が到着して、おれは真っ直ぐに帰宅した。

 

 

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