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 おれは自宅に帰り、親父とお袋には、今日は休みを貰った、とだけ報告した。親父が会社の警備員の仕事に出かけたあと、郵便局にいる関口課長に電話をかけることにした。

 「あ、もしもし大河ですが今日はちょっと体の具合が悪ので、休ませていただきたいのですが」

 「具合が悪い?ダメだ、今日は人もいないし出て来てもらわないと困る」

 「いやいや、勘弁して下さい一昨日の神内君との一件もありますし…」

 「神内君?神内君と何かあったのか?」

 「ここでは詳しくは言えないんですが、ちょっとしたことがありまして…」

 「分かった。それじゃあ、明日は必ず来てくれ」 

 「すいません。お願いします」おれはそう言って電話詩切った。

 その後、おれは自宅でゆっくりと静養することにした。

 その日のお昼過ぎにタバコが切れそうなったので、近くのコンビニまで行って一箱買いに行こうかと、外に出た。おれはエレベーターで下まで行き、一階の集合ポストに郵便が届いてないかと、ポストを開けてチェックしたが、ポストの中身はカラだった。と、そこへ関口課長と郵便局の総務主任が一緒になって、やってきた。

 「アッ、今日はすいませんでした。今ごろになってから、少しだけ具合が良くなったモノで…」と、おれは二人の前で頭を下げた。

 「そうか、仕事の方は続けられそうか?」

 関口課長が言った。

 おれはどう説明しようかと、迷った。

 「実は郵便局以外の方でもやりたいことがありまして…。例えば翻訳家の仕事とかも…」

 おれは言葉を選びながら説明した。関口課長はおれの言うことを、うん、うん、と頷きながら聞いていた。すると、関口課長の声なき声が聞こえてきた。

「心配するな。わたしはキミの味方だ」

 総務主任が、おれに声をかけた。

 「今朝方、大河君によく似た人を駅で見かけたって言う人がいたけど、別人かな?」

 「今日はずっと家にいたので、別人でしょう」と、おれはわざと質問をはぐらかした。

 「いいか、明日は必ず来てくれ」と、関口課長が言い残して二人は帰って行った。

 二人がいなくなったあと、おれは一人で考えた。

 「そうか、関口課長はおれのことを心配して、わざわざここまで足を運んでくれたのか。あの課長さんはおれの味方だったんだ。今までずっと敵だと思っていたのに…。それなら明日は関口課長に言われた通り、郵便局に出勤しよう」おれはそう決意した。

 

 

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