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 それからほどなくして、仕事に入る時間になった。おれは「戦闘開始!」と言わんばかり休憩室を飛び出して、早速仕事に取りかかった。おれが班の中で仕分け作業をしていると、神内の奴がおれに郵便物を手渡そうとして、無言で手紙の束を差し出した。おれはその手を引っ叩いて、番犬が不審者を見るような目つきで神内を睨んだ。すると、味方の職員が「大河、いい加減にしろ」と、言ってきた。おれは思わずハッとして「どうもすみません」と、一応謝る素振りをみせた。神内も何も言わずに退散したので、おれは一人で黙々と作業を続けた。しかし、昨日の朝の出来事を蒸し返す人は誰もいなかった。

 おれは次第に気が遠くなるような気分に襲われた。「何かがおかしい…」おれは組立てのパートのおばさんに「昨日、何かありましたっけ」と、訊いてみた。しかし、その人も「何にもありませんよ」と、言っただけで、それ以上は何も言わなかった。

 その日の仕事が終わる頃、岩手真由美は昨日から今日までの一連の出来事を目の当たりにして「うわー、この人やっぱり天使だったんだあ」と、大喜びしていた。

 この日はこれだけで、あとはいつも通りで特に何もなかった。


 郵便局から帰宅して、夜になった。おれは自分の部屋で一人、考えていた。

 「そう言えばウチの親父も、おれが神内に向かって吐いたセリフと同じようなことをおれに言ったことがあったっけ」

 次の瞬間、おれの中でピーンと何かが弾けた。おれは押し入れを開いて部屋に布団を敷きながら「ウチの親父はこんなことをしていたのか!」と、自然に言葉が吐いて出てきた。

 これは映画でもなければ何でもない。現実のことだ。おれは机の上に置いてあるノート型パソコンを開いて、キーボードを叩きながら手紙を書き始めた。小沼サユリ宛に書くつもりでいたが、その文章も彼女ならわかるであろうと思われる文面が、スラスラと出てきた。

 手紙を書き終えると、おれは洗面所まで行き、歯を磨いた。どうするんだ!どうするんだよ!」おれが歯を磨きながら声を思わずあげてしまった。すると、お袋が台所から「うるさいよ」と言った。おれは黙ったが、心の中はpワクワクしていた。

 それから一風呂浴びてから、明日に備えて寝床の中へと入った。おれは真っ暗な部屋でいろいろ考えていた。

 「小沼サユリ宛ではあるが、直接彼女に渡さない方が無難だな。そうだ、確か総務課の女性職員さんが、小津川駅から通っているって言ってたな。あの人に手紙を託そう。そうすると、明日の朝6時には家を出ないダメだ。寝坊して明日中に手紙を渡すことが出来なかったら、それはそれで大変なことになる。よし、今夜は眠らずに朝までしのごう。目覚まし時計を朝の5時半にセットしておいて、と。これでよし」

 おれは一晩中、興奮していて眠くはならなかった。寝床の中で横にはなっていたが、まどろむだけで意識は朝までハッキリしていた。

 

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