表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/131

68

 おれはそのあと、配達準備を整えてから郵便局地下ある駐車場へと向かい、バイクに乗って配達に出た。が、外の風景は何ら変わらないハズなのに、今までおれが見てきたモノとはまるで違って見えた。その雰囲気は尋常ではなく、おれは思わず恐怖すら覚えた。これは一体どういうことだ?おれは自分に問いかけた。「世の中っていうのはこんなにも恐ろしいところだったのか」そう思って、ざわざわとその恐怖を実感してきた。


 何とか配達を終えておれは郵便局まで戻った。おれが事務仕事をしていると、職員の一人が今朝方の一件で、おれを気遣うように声を掛けてきた。

 「大河君。神内君とは波長が合わなかったのかな?」

 おれはそんなに簡単に済まされるような出来事ではなかったので、塞ぎ込むように一言「今は何も話したくない」と、ボソッとつぶやいた。その職員もそれ以上の詮索はしてこなかった。

 そのあと、佐藤のジジイともたまたま顔を見合わせたが、佐藤のジジイは「とうとう騒ぎを起こしたな。これで大河も終わりだな」と、内心考えて、上機嫌な様子だった。佐藤はバカだからおれが「騒ぎを起こした」と、その程度しか捉えていなかった。それだけで済めば、こんなにおめでたいことはなかった。


 翌朝になり、通勤の途中で歩きながらおれはハッキリと自覚した。

 「おれは天使だ。おれは天使だ…」

 そのことが分かって、おれは嬉しさや喜びの気持ちよりも、悲しみや諦めにも似た感情が湧き出した。

 「父さん、助けてくれ。おれは変な奴らに殺されてしまうかも知れない」

 おれは通勤電車の座席に座りながら、いつのまにか涙目になっていた。

 そのあと、おれは郵便局まで辿り着き、休憩室でタバコを吸っていた。船木などの敵たちは、怪訝な様子でおれを見ていた。おれはそこで敢えて明るい口調で味方の職員にこう言ってやった。 

 「昨日なんですけどなんかありましたか?何かあったような気がするんですけど」

 「何にもねえよ」

 「そうですか?おれちょっと頭をおかしくなっちゃった。病院にでも行って診てもらった方がいいのかなあ?」

 「アアン?大丈夫かあ?」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ