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ちょうどその頃、郵便局の中で忘年会の話が出ていた。今回は郵便局からクルマで5分ほどの所にある、ホテルの大広間を貸し切って、局員全員が参加出来るとのことだった。そこでおれも参加させてもらうつもりでいた。
その新年会当日、短時間職員ではおれの他に岩手真由美が参加した。おれたちは郵便局の食堂に集まって、時間が来るとマイクロバスに次々乗り込んで、移動することになった。
会場のホテルまで到着すると、みんなは大広間に集まった。そこには普段から郵便局でアルバイトをしている女子大生たちもあわせて2,3人いた。岩手真由美はあまりその娘たちとは口をきいたことがなかったが、同年代ということもあり、お酒を飲んでいるうちに仲良くなって、お互いの電話番号を携帯電話で交換し合った。
その席で、酒を勧めながら京間がおれにこう言ってきた。
「大河、おれのことも書いてくれ」
「ああ、もちろん書きますよ」とおれが言った。
その忘年会は、最初から最後までそれなりに楽しんで終わらすことが出来た。
それから2,3日が経過したあとのこと。おれは仕事が終わり食堂で休憩していると、別のテーブルで忘年会で一緒だった女子大生と岩手真由美がおしゃべりを楽しんでいる姿が見えた。おれはそのまま帰るつもりだったが、ちょっと気が変わった。
おれはその娘たちが座っているテーブルまで行き、一緒に混ぜてもらった。
おれは何も言わず、ただ座っているだけだったが、岩手真由美や女子大生たちはおれに構わず、おしゃべりを続けていた。
そのうちに、郵便局の職員の話題になり岩手真由美がこう言った。
「ああ、あの人ね。あの人アタシの彼氏と同い年」
おれはそのままジッとしてみんなの話を聞いていたが、そのうち仕事で疲れてきたので、先にあがらせてもらうことにした。
「じゃあ皆さん、お疲れ様」おれはそう言うとその場をあとにした。
その帰り道、おれは一人で軽いショックを受けていた。なぜなら岩手真由美とおれは、お互い特別な関係だと思っていたが、その岩手真由美に彼氏がいるという。
「そうか岩手ちゃんには彼氏がいたのか…」おれが内心残念がっていると、岩手真由美の心の声が聞こえてきた。
「アンタのことに決まっているでしょ。バカじゃないの」




