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 おれの詩集をいろんな人たちに目を通してくれるにつれ、一つ面白いことに気がついた。郵便局の人たちに、どの詩が一番面白かったかを尋ねてみると、みんなそれぞれ違う詩のタイトルを口にして、一つとして同じ詩のタイトルがダブっていなかったのだ。おれが推測するには、おれが書いたモノはそれだけバラエティーに富んでいる証拠だった。読む人の感性や個性によって、面白いと感じるモノが人それぞれなんだろな、と思った。そこでおれはさらに自信を深める結果に繋がった。どれもマンネリでつまらない、と感じるような代物ではなかったんだろう、と。


 時は9月へと入り、郵便局では新しい本局への引っ越し作業も準備段階へと入ってきた。ここの郵便局員の半分くらいと、小沼サユリが勤務している郵便局全てが合併されるのだ。おれは期待で胸をワクワクさせていた。その一方で、小沼サユリにはおれが出版した詩集はまだ手渡していなかった。また以前のように、迷惑だ、とか思われやしないか、との迷いがあったからだ。

 ともあれ、おれはここの郵便局と別れを告げて、他の職員たちと新たな本局での勤務が始まろうとしていた。

 新しい郵便局にはおれをリストラした関口課長の顔もあった。当初はおれの敵だと思い込んでいたので、バカ課長だ、とみんなの前で憎まれ口を叩いていた。しかし、よくよく考えてみると、いつまでもアルバイトままでは身分も不安定だったし、おれが短時間職員になるきっかけを与えてくれたのは、紛れもなく関口課長のおかげだった。もう恨みっこ無しだ、おれはそう思った。

 それからは毎朝出勤しては、関口課長に「おはようございます」と、挨拶をして、局内でばったり出くわした時には「お疲れ様です」と、おれの方から積極的に声をかけた。関口課長もそのことを理解してくれて、それ以上ことを荒らげることなく、普通に接してくれるようになった。

 

 その後、小沼サユリともめでたく再会を果たした。おれが嬉しそうにしてはしゃいでいる姿を見て、彼女はキレイな目を輝かせて、おれを見つめていた。

 その一方で、おれのことを苦々しく思っている連中も存在した。船木、志賀、西川といった奴らだ。おれは船木に久しぶり会ったので挨拶した。

 「おお、大ちゃん、久しぶり」と、船木は言ったがその口調は明らかに面白くなさそうだった。たまたま局内でばったり会っても、顔をそむけて目を合わそうともしなかった。

 志賀は志賀で、おれがアルバイトの時は私服姿だったのが、制服姿に変わっているのを見て「アイツが受かってなんでおれが受からないの」と、ケチをつけていた。どうやら志賀は試験に不合格だったようだ。

 西川はもともとおれのことが好きではなかったので、自然とおれを敵にまわした。それは短時間職員の佐藤や神内とて同じだった。おれはコイツらとは関わりたくなかったが、あいにくと神内だけはおれと同じ班に配属されてしまった。

 

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