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 ここの郵便局に来てから初めての梅雨の季節がやってきた。その日は朝から滝のように雨が降っていた。おれは自宅で朝食を済ませてから合羽を羽織って、原付で郵便局まで行くことにした。しかし、外は合羽なんか全く役に立たない程の大雨だった。おれはあまりにも強く降ってくる大雨のせいで、息苦しくなって呼吸困難になりそうだった。それでも大雨の中で郵便局まで向かうしかなかった。

 それから郵便局に到着したのは始業時刻ぎりの時間だった。おれの姿を見て一人の職員が声をかけた。

 「おや?可哀想に。ズブ濡れじゃないか」

 おれは苦笑いをした。そのズブ濡れになった服を乾かしたかったが、配達に出ればまた下着の中までズブ濡れになるのは分かりきっていた。だからおれはズブ濡れまま作業に入った。

 

 雨は止むどころかいつまで経ってもその日はずっと降り続いた。午前中の配達が終わると、昼休みになったが、おれは誰とも口をききたくなかった。そこで、いつも肌身離さず自分のリュックに入れてある、ポータブルプレーヤーで、音楽でも聴こうと思った。郵便局の中にある食堂でおれはテーブルに置いてあるイスに腰かけた。しかし、いざ音楽を聴こうとしたが、どうもプレーヤーの調子が悪い。どうやら雨水おれのリュックの中まで入り込んで、プレーヤーまでズブ濡れになって故障してしまったようだ。

 「クソ、また新しいプレーヤーを買わないとな」おれは余計な出費がまた増えたと思い、疲れがどっと出てきた。だからそのままうたた寝することにした。


 休憩時間が終わっても、雨は時間と共にヒドイ降り方をしてきた。それはまるで、この地球が終わりを迎える直前になったら、こんな降り方をするんじゃないかと思わせるような降り方だった。それでも雨が止むのを待つ時間なんか無かった。郵便物の組立作業が終わると、他の職員たちは次々にバイクに乗って配達先へと向かって行った。

 おれも配達先へとバイクに乗って向かうことにした。郵便物も自分の体もびしょ濡れになったが、そんなことを気にしていたら、いつまでも配達が終わらなかった。


 それからやっとの思いで配達を全部終わらせて、郵便局へと戻ってきた。おれはやれやれと思い、灰皿が置いてある所でタバコを吸った。すると、若ハゲがやってきた。

 「こんな所でタバコを吸っているんじゃないぞ」と、一言ボソッと嫌味ったらしく言ったので、カチンときた。

 それ以来、おれは班の前に置いてある灰皿ではタバコを吸わず、地下の食堂で吸うことにした。若ハゲは確かに仕事熱心なところがあったが、自分のやり方や価値観を他の連中に強引に押しつけてきた。だから郵便局の中ではみんなから煙たがられていた。もちろんおれも嫌いだった。若ハゲはおれに対してグチグチと口やかましいことを、幾度となく言ってきた。だからおれはすっかり嫌気が差して、仕事を敢えていい加減にやって、若ハゲに暗に反抗することにした。どうせ郵便配達なんて下らない仕事だ、構うモンか。おれは心に決めた。

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