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おれがある日のこと、受取人後納払いの郵便物をチェックする作業を机の前で座りながらやっていると、配達員の人から声をかけられた。
「おーい、昨日の枚数が2枚多く記入してあったから、今日の分は2枚少なく記入してくれ」
おれは「あ、そうですか」と言って、言われた通り2枚少なく用紙に記入した。その時はそれだけで済むと思っていたが、そうではなかった。
休憩に入るちょっと前ぐらいの時刻になり、おれが一人で仕分け台で作業していると、いきなり私服姿の中年太りをした、目つきの良くない野郎が入って来ておれを見るなりガミガミ怒鳴り始めた。
「おい!後納払いの枚数が間違っていたぞ。気をつけろ!それから字が汚くて何を書いているのかわからない。ちゃんと書けよ!」
おれは軽く「あ、そうですか、すいません」と、一言謝ったが、コイツがいったい何者なのか分からなかったし、言い方もなんだか気に食わなかった。
そのあと休憩時間になり休憩室に上がると、そこにはバイト仲間の荒井がイスに腰掛けてテレビを観ていたので、先ほど怒鳴り散らされたことをそのまま伝えて、アイツが誰なのか訊いてみた。
「ああ、篠原課長代理ね。あの人、前にいた郵便局から左遷されてここに来たんですよ。一応ウチらの上司だけど、口うるさくてみんなから嫌われているんです」
「じゃあ、おれが一方的に悪い訳じゃないんだね」と、おれは言ったが、荒井の話を聞くとなんだかますますムカついてきた。
その後おれは篠原とか言う奴には警戒して、おれの方からなるべく口を訊かないようにした。
休憩時間が終わり、その日の最後の仕事が待っていた。書留郵便物が不在で、郵便局に保管している期限が切れることを通知する作業だ。専用の赤色のハガキに、配達日と保管期限の日にちを記入していく訳だが、勤務時間ギリギリまでかかっても、全部は終わらなかった。仲原の話だと終業時間がくれば全部出来なくても、用事があるから、と言えば帰っていい、とのことだった。おれはその言葉を信じて、その日はハガキに記入する作業を途中で終わらせて、終業時刻の11時きっかりにタイムカードを押して、郵便局をあとにした。