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 ここの郵便局にも、人事異動の季節がやってきた。今まで郵便課で働いていた内勤の連中が相次いで異動となった。すなわち新森主任、坂下、篠原、それに課長もここからおさらばすることが決まった。篠原はウチの班までノコノコやって来て「どうも、お世話になりました」と、みんなに頭を下げたが、おれは黙って一瞥しただけで、敢えて何も言わなかった。

 篠原がいなくなった後、おれは小沼サユリのところへ行き「小沼さん。篠原のオヤジいなくなって良かったね」と、お祝いの言葉をかけてやった。最近、彼女とはすれ違うことが多かったが、その時は多少仲直りしたいという気持ちもあった。

 彼女は笑みを浮かべながら「うん、天国だよ」と、おれに言った。

 「小沼さん、なんかイキイキしてるよ」と、おれが言うと少し恥ずかしそうにして「やっぱり?テンション高いって言われてる」と、言った。おれはクスクス笑いながら、自分の持ち場へと戻った。しかしそのあと、彼女はまたおかしな行動に出た。総務課の男性職員に、明日お祭りがあるからアタシも一緒に連れて行って、とせがみ出したのだ。総務課のその職員は「分かった、分かった。小沼さんにはかなわないや」と、半ば呆れていた。

 彼女は多少躁鬱気質なところがあって、良いことがあると異常にテンションが高くなり、ブレーキが効かなくなるのだ。おれ抜きでみんなと一緒に楽しそうにしながらはしゃいで、その次の日になると、ハッと我にかえり、アタシって何てバカなんだろうと、一人でガックリ落ち込んでしまう。そんなことが何度かあった。決して彼女が悪い訳ではないが、おれはそんな彼女の姿を見て、手を焼いた。


 それから前の課長に引き継いで、我が郵便局にも新たな課長が就任してきた。前の課長よりも見た目は若々しく、いわゆる叩き上げではなく、東大出のエリートのような課長で、関口という名前の課長だった。最初の挨拶で「前の課長の仕事を引き継ぎます」と、みんなの前で言った。おれは内心「前の課長のやり方を刷新します、ぐらいのことを言って欲しかったな」と、思った。

 

 一方で、郵便課に篠原の後に赴任してきた課長代理は、一見した感じでは篠原に比べたら遥かにまともな人だった。篠原はいつでも机の前でふんぞり返って、みんなと一緒に仕事なんかしなかったが、今度の課長代理はちゃんと他のパートやアルバイトや職員の人たちと一緒に仕分け作業をしていた。これで当たり前なのだが、篠原があまりにも酷すぎた。実際、他の人たちとトラブルを起こすような人でない様子だった。小沼サンもこれなら少しは仕事がやり易くなるかな、とおれは思った。

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