33
おれはここの郵便局では、気の合う友人は少なかったが、こんなおれでも気の合う職員は数人いた。
まずは同じ班で働いている酒井。この人はいろいろ話していくうちに、おれと同じく英語が多少話せることを知った。なんでも英語は好きではなかったが、仕事上の必要に迫られて英語を勉強するようになったそうだ。詳しく訊いてみると、ここの郵便局に来る前は外人専用の刑務所で監視係をやっていた、と言った。「英語で囚人と罵り合うこともあったよ」と、酒井は言っていた。
赤口という人もいつも午前中に仕事を終わらせて帰ってしまうため、話をする機会は少なかったが、感じは凄く良い人だった。おれはこの赤口という女性を悪く言う奴は、逆にそいつの方が間違っているんだろうな、と常々そう思っていた。
その一方で、よその班の職員であったが、休憩時間に一緒に昼メシを食べているうちに自然と仲良くなった職員もいた。それぞれ安藤、小久保、小西という名前の三人組だ。おれはまだアルバイトという身分にも関わらず、その三人とは比較的ざっくばらんと何でも話すことが出来た。
特に安藤という職員は、おれが配達の方に移る以前の、内勤で働いていた頃から局内で顔を合わせるたびに向こうから挨拶をしてくれた。要するに面識だけはずっと前からあったという訳だ。
おれは友人仲間はあまり多い方ではなかったが、3,4人ぐらいの話し相手がいれば、それで充分だった。
実際、それは正しかった。




