表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/131

3

 おれが働くことになった郵便局で、最初任された仕事は外務の配達ではなく、内勤の事務だった。副課長の話よると、おれには内勤でやれる仕事全般を任せるようにしたい、とのことだった。勤務時間一日4時間と短かったが、そのかわり朝早くから起床しなくてはならなかった。何しろ始業時間が朝の7時からの勤務で、その5分前までには出勤するよう念を押された。

 面接があった日の翌朝おれは言われた通り6時50分ぐらいに郵便局まで到着した。通用口をくぐって郵便局の中に入ると、まだ人影はまばらで静かだった。おれが郵便物の仕分け台のところに行くと、そこには仲原と言う名前の小太りの大学生ぐらいの若い男が私服姿で立っていた。おれはとりあえず、今度からここで働くことなった大河という者だ、と挨拶した。

 仲原はおれと一緒に作業を開始して、仕事内容を確認しながら説明した。おれは仲原に言われた通りに、頭の中で整理しながら、仕事を覚えようと必死になってやった。やるべきこと、覚えるべきことたくさんあったからだ。

 まず仕分け台の上に山積みされた郵便物の整理から始まり、速達郵便の消印、区分け棚での区分け作業、それに受取人後納払いの郵便の枚数の確認、などなどやることは短い勤務時間の中でぎっしりとあった。

 そうこうしているうちに後から来た大学生バイト君や、外務の配達の連中が続々と出勤して来て、局内は次第に話し声で賑やかになってきた。大学生のバイト君は仲原の他に二人いて、それぞれ荒井、田中、という名前の男子学生だった。三人のバイト君の中で、荒井が一番人懐っこい性格で、仲原と田中は多少風変わりに見えた。

 おれは最初のうちは誰が敵で、誰が味方かも分からず、とりあえずみんなで仲良くやっていこうと思っていた。 

 それから前半の作業が無事終わり、9時半から10時まで30分間の休憩に入った。おれたちバイト四人は2階の休憩室へ向かった。そこにはイスと白いテーブルが並んで置いてあり、テレビも一台あった。

 おれたちは休憩室にある自動販売機で缶コーヒーを買って、テレビを見ながら他愛のない話で盛り上がった。おれ以外はまだ大学生だということもあり、学生らしくパソコンの話題を喋っていた。この当時は現在のようにインターネットも普及しておらず、学生であればパソコンを使ってワープロ代わりに文章を入力するとか、CDで音楽を聴くとか、音楽CDのマスターディスクを制作するとか、その程度の使い道しかなかった。

 バイト君の三人はそんな話で持ちきりだったが、おれはまだパソコンを持っていなかったので、話についていけなかった。だからおれは、黙ってみんなのお喋りを聞いているしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ