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 ここで配達の仕事をしてから丸一年過ぎようとしていた。始めた当初は、この仕事も悪くない、と思っていた。おれはこの仕事をする為に、生まれてきたに違いない、ぐらいの気持ちでいた。しかし、志賀や課長などのおれに対する態度は気に食わなかった。おれは今までにも散々苦労を重ねてきたつもりでいた。次第にもっと良い仕事に就きたいと、そう思うようになった。

 そんなある日、新聞の求人広告を見ていたら、音楽関係の仕事で、しかもおれが好きなロックに関わる仕事の求人を見つけた。おれは迷わず電話をかけた。

 「もしもし、新聞の求人広告を見て応募したいんですけど」

 「ああ、今日は休みなんですよ。ちょっと待って下さいね」

 電話の声からすると、出たのは若い女のようだった。

 しばらくすると、電話口に別の若い女が出た。その女は何だか人を食ったような態度で、おれの年齢を訊いたり、運転免許証を持っているか、とか訊いてきた。

、「じゃあ一応、応募条件には当てはまっているんですね。この仕事は坊やと呼ばれる仕事で、一見すると楽しいかなって思えるかも知れないですけど実際にはキツいし大変ですよ」電話口の女が言った。

 ボーヤ?こいつバカにしているのかな。それにおれはキツい仕事なんかしたくないぞ。おれは心の中で思った。

 「ああ、そうですか。じゃあ、結構です」おれはそう言うと、一方的に電話を切った。

 しょうがない。おれ一人で何とかしよう。おれはそう思った。


 郵便局での仕事はクソだったが、それでも週休2日は確保されていた。おれは休みの日なると午前11時頃まで布団の中にいて、それから起き上がる食事をした。その後は、大抵一人で電車に乗って、あちこちに出かけた。

 おれ一人ではなく小沼サユリとも二人きりでどこかへいきたいとずっと思っていたが、残念なことに郵便局では彼女は隙を見せることがなかった。複数人のグループ交際なら彼女は喜んで行ったが、どういう訳か、好きな異性と二人きりになるということが、余りにも慣れていなかった。おれはそのことで、かなり思い悩む日々がやって来るのに時間が掛からなかった。おれは彼女の何なんだろうと。

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