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 おれが郵便局で通訳を頼まれるようにもなり、格好がつくようになってから小沼サユリとおれとの距離は少しずつ縮まるようになっていった。ある日のこと、おれはその日の仕事を終わらせて、いつも通勤に使っている電車の駅へと歩いていた。自宅からは原付で直接通うこともあったが、その日はたまたま電車を利用したくなって、最寄り駅から電車に乗ることにした。

 おれが駅の改札口を通り越してホームの階段まで行ったところで、通勤していた小沼サユリとバッタリと出くわした。おれがその姿を見るやいなや「おはようございます」と、彼女に挨拶した。

 その声に気づいた小沼サユリは、「あ、大河君…」と、嬉しそうな顔をした。

 おれは彼女の様子から、もしかして彼女もおれに気があるのではないのかと、思い始めた。

 そしてその翌日、おれの予感は決定的なモノになった。おれが昨日と同じ時間に仕事を終わらせて、帰宅するところだった。その日は電車ではなく自宅から原付で来ていた。おれはポケットから原付のキーを取り出して、エンジンをかけた。ふと郵便局の従業員出入り口の方に目をやると、そこに出勤して来た彼女の姿があった。彼女はおれの方に手を振って、おれの名前を呼んでいた。

 「大河くーん、大河くーん」

 おれはあっ、彼女だ、と思って原付に乗ったまま彼女の側まで行こうとした。すると彼女は背を向けて、先に出入り口のドアを開けて、中に入ってしまった。おれは彼女に一言挨拶がしたかったが、それが出来ずにちょっとだけ残念だった。でもいいさ、また明日になれば彼女に会える。おれはそう思うと、ここの郵便局まで働きに来る楽しみが一つ出来た。若かったおれは可愛い彼女の一人や二人できるのは、長年の夢でもあった。

 おれはガキの頃から早熟で、好きな女の子が出来てはフラれて、また別の好きな女の子が出来ては、またフラれての、その繰り返しだった。

 小沼サユリは見た目が可愛いし、性格もおれなんかよりもしっかりしていた。まさに理想的な女だな、おれはそう思った。

 普段、彼女は郵便局員の制服姿だったので分かりづらかったが、私服姿もまたファッショナブルで、それが彼女の魅力を引き立てていた。

 おれは日を追うごとに、そんな彼女にのめり込んでいった。

 

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