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 おれはレストランからホテルの客室へと戻った。もう時間も遅かったので、部屋の灯りを消していったんはそのまま寝ようと思い、ベッドに横になった。しかし、翌朝になればお巡りが再びこのホテルまで押しかけて来るかもしれない。おれはそう思い、ベッドから起き上がって、フロントへ電話をかけた。 

 「もしもし、今日は人と会う予定だったんですが、その人が来なかったので、今すぐにチェックアウトしたいんですが。あと、タクシーも呼んでください」おれはフロント係に頼んだ。 

 それから急いで荷物をまとめて、エレベーターで下まで下りた。おれはフロントでチェックアウトを済ませて、手配してくれたタクシーに乗り込んだ。


 ちょうどその頃、小沼サユリは先ほどのレストランでのおれの様子を、自宅のアパートの一室の中で、フロント係からの電話で聴いていた。

 「橋本様は、レストランの窓際の席にお座りになり、ボンヤリと外を眺めたりしていましたが、その間、一度も席を立ったり、後ろを振り向いたりもしなかったそうです。それから1,2時間お一人でお待ちになり、店員かラストオーダーを告げたのですが、橋本様はもう少し待つように言われたそうです。15分ほどして、再びラストオーダーの時間を告げるど、そこで初めてお一人分をキャンセルなさり、お一人でお食事されて退出なさったそうです」

 小沼サユリはその話を涙が出そうになるのを堪えながら聴いていた。

 「次回はぜひ、橋本様とお二人でまたのご来訪を心よりお待ち申し上げます」フロント係が言った。

 「ハアー、どうもすいませんでした」  

 「おやすみなさいませ」

 小沼サユリは電話を切ると放心状態になった。 

 「ハア、やっぱりそうだったんだ…。アーア、大河君と一緒にお食事したかったなぁ。でも、良い夢見れたし、アタシも何だか疲れちゃった。今日はもう寝よう」彼女は独り言を言った。と、次の瞬間、何かピンと来るモノを感じた。 

 「エエー!?なんでなんで?何だか大河君がこの部屋まで来てくれるような気がしてきた。そんなのウソだ。アタシやっぱり疲れているんだ。早く寝ようっと」彼女は部屋に布団を敷いて、そのまま布団の中に転がり込んだ。

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