番外: 団長はいつ情報漏洩したのかという話
10月4日は天使の日!という事で発作的に投下!
団外秘!
【天使と書いてベルたんと読むの会】創刊号
報告者
ザック・エーカー
我ら第1騎士団で定期的に護衛を担当する事になったアナベル・ガードナー様のことは諸君も知っているだろう。
ここ最近、彼女の護衛任務に志願する者が急増中だ。
というのも、護衛経験者からの評判が、情報操作を疑うほどに恐ろしく良いからである。
護衛任務についた者達から事情聴取した内容を取りまとめた結果以下のようになった。
「第一印象、無表情で冷たそうと思ったら、子供達に向ける笑顔マジ天使。」
「冷たそうなのに、さり気なく俺達に気をつかってくれてるのが分かってじわっとくる。」
「満場一致で嫁に来て欲しい。」
本日、これらの情報の真偽を確認すべく、満を持して護衛任務についたわけだが…。結論から言おう。
ベルたんマジ天使。
この一言に尽きる。
事前情報となんの齟齬もなかった。天使がいた。
ベルたんがいかに天使だったかを延々と書き連ねたいところだが、このあと重大発表を控えているので今回は割愛する。
ベルたんがこんなにも天使だと、今後彼女の護衛任務志願者は更に増え、収拾がつかなくなる事だろう。
そうなると、天使に会えるまで長い期間を待つ事になり、その間に干からびて干し筋肉となってしまう事が目に見えている!
じゃあどうしたらいいのか…。
そこで俺の筋肉な脳ミソは閃いた!
護衛任務報告書のように、護衛担当者が得た情報を紙に記載して回覧すれば、その場に居なくともベルたんをより深く知る事が出来ると共に、平等にベルたん成分を補給出来るのではないかと!
我ながら神ってるのではないだろうか!?そうだろ諸君?!
そこで本日【天使と書いてベルたんと読むの会】を設立する事をここに宣言する!
年会費永年無料!会員には、会報としてベルたん情報を記載し回覧する義務と、それを閲覧し、ベルたんに想いを馳せる権利が与えられる。
俺の熱い想いに賛同してくれる入会希望者は、回覧者サイン欄にその旨を記載されたし。
また、本日8の刻より、この会の為にあるのでは無いかと思われる店、その名も『天使の渚亭』にて決起集会を行う。
夜勤以外の入会希望者は奮って参加されたし!
『天使の渚亭』でボクと握手!
回覧者サイン欄
入会希望。但しくれぐれも御本人には知られないように!!【団長】
入会希望。会報は回覧後、団長に責任もって破棄してもらいましょう。【副団長】
入会希望。副団長に同意。【副団長補佐】
よし任せろ!【団長】
入会希望。ザック神ってる。【アスコット】
入会希望。ザック、グッジョブ!【ナルガ】
入会希望。干からびる前に次の会報頼む。【ベン】
入会希望。入会希望者続出の予感。【ルイード】
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「やだコレ全員入会希望じゃないの…。」
思わず零れた私のつぶやきを聞いて、目の前に待機していた第1騎士団長は、自分のおかした失態に気づき、この世の終わりのように顔を青ざめさせた。
「お、お、お、王妃陛下!!!み、み、見なかった事にしてくださいぃぃぃ!!お願いしますぅぅぅ!!」
瞬時にその場に這いつくばる団長の後頭部にぴょこんとついた寝癖に思わず苦笑してしまう。もう日はとっくに暮れているというのに…一日このままだったのかしら。
この男は実力も統率力も申し分無いが、どこか抜けている所が良い意味で人間臭くて好感が持てると、団員達から慕われている。
要所要所は副団長がキッチリ締めているので、任務に影響するようなウッカリは無いが、逆に誰も困らない寝癖などのウッカリはこうしてそのまま放置されているのがなんとも笑いを誘う。
恐らく今日一日、副団長を始めとする筋肉達から生温かい目で後頭部を見られていたんでしょうね。
そんな団長の今回の特大のウッカリは奇跡的に副団長の目を潜り抜けて、私の手元にやってきたようだ。
【天使と書いてベルたんと読むの会】創刊号
正規の護衛任務報告書に紛れたまま気づかず提出してしまったのだろう。
こんな面白そうなものを破棄されなくて良かった。
ウッカリ団長渾身のお手柄ウッカリね。
私は優しく団長に声をかけた。
「団長?黙っててあげるから、私もマル秘会員にしてくださいね?会員なんだからモチロン、会報を閲覧する権利があるわよね?」
私の手に渡る前に破棄なんかしたら許さないと笑顔で脅す。
「お、仰せのままに……。」
項垂れる筋肉を前に、私は満面の笑みを浮かべた。
団長は初っ端から、やらかしてましたという話でした。