番外: ルイスのボーナストラック
主人公が薄いと嘆いていたら、感想でダブルヒロインですねと言っていただき目からウロコが落ちました。
そうか、ダブルヒロインという事にすればいいのか!(後付け感満載)
…という訳で、もう一人の主人公ルイス殿下のその後をお楽しみください。
キャロル:「ヒロインは私でしょぉぉぉ!!」
王子妃に内定したキャロルは、実家の警備上の問題や王子妃としての教育の都合上、しばらくの間王宮の一室に滞在する事になった。
その間のお世話はもちろんアナベルにお願いしてある。
現在王妃陛下と交渉中ではあるが、王子妃になったら正式にキャロルの専属女官としたいと考えている。
アナベルに意向を確認したら、真面目が服着た彼女は、
「ランスロット様が許してくださるなら、結婚後も女官としてキャロル様の力になりたいです。」
と言っていたので、ランスを納得させる方法をどうにか捻り出さないといけない。
…まあそれも、アナベルが潤んだ瞳で、上目遣いで「お願いします…!」とか言えばヤツは呆気なく陥落するだろうと予想しているが。
婚約者としてキャロルと過ごす時間が長くなり、気になりだした事がある…。
それは、アナベル編纂の『キャロル語録』の中の『萌えシチュエーション編』である。
要は、キャロルがされて興奮する事象を表すキャロル語が解説と共にずらずらと書いてあるのだが…
「ねえ、キャロル?この、『壁ドン』(ランスロット様ルートで発生)ってイマイチよく分からないんだけど…教えて貰ってもいいかな?」
一緒にティータイムを過ごしていたキャロルは紅茶を吹いた。
座っていたのが隣で良かった。正面にいたら被っていただろう。
給仕は下がらせているので、被弾したローテーブルなどは後で片付けるとして、とりあえずハンカチで彼女の口元を拭ってあげる。
「ル、ルイス様?!何ですかそれ!『キャロル語録』って!ベルったらそんなの作ってたの?!!」
キャロルは顔を赤くして慌てている。うん、可愛い。
「アナベルは真面目だからね。君の事を理解しようと頑張ったんだよ。それよりもこの『壁ドン』なんだけどね?」
ソファの上の空間を少し詰めて彼女に近づく。
「なんでランス限定なのかなって。だからちょっと試してみたいんだ。僕がしても興奮するならこの(ランスロット様ルートで発生)って一文は削除してもいいよね?」
そう言って甘く笑って小首を傾げると、「顔面殺傷能力高すぎ…!」と心臓を押さえて悶えるキャロル。
悶えている隙に、彼女の手を取って立たせて、壁際に連れて行く。
語録の解説によると、彼女を壁際に立たせて、その彼女を閉じ込めるように壁にドンと手をつき、覗き込む…と。
その通りに実行してみるとキャロルは「無理!直視出来ない!」と慌てて、両手で顔を覆って俯いてしまった。
耳が赤くなっているから、成功はしてるのだろう。
えーと、次は…
顔を覆っているキャロルの手を取り除き、こちらを向くように指で顎をすくい上げる。
「『顎クイ』は王太子ルートで発生…だったかな?…なんで兄上が出てくるんだろうね…?」
「いや、王太子は隠しキャラで…!ってかベル!そんなバカ正直に書いちゃだめでしょー!不敬罪一発アウトじゃないのぉぉ!」
これ以上ない程に顔を赤くして、空色の瞳を潤ませるキャロルを至近距離で堪能する。『顎クイ』はこちらとしてもオイシイ行為だと分かった。
「『顎クイ』からこのまま強引にキスしようとして、邪魔が入るまでが『テンプレ』…お約束なんだっけ?…それも試してみようね?」
そのまま吸い寄せられるようにキス…
「………出来ちゃったね?」
キャロルが壁から滑り落ちるように床にへたりこむ。可愛い。
まあ、邪魔が入らなかったのはドアに『この僕の邪魔をして生涯恨まれてもいい覚悟のある者はノックせよ』って書いて貼って人払いしていたから当然なんだけどね。
えーっと、次は…
へたりこんだキャロルの背中と膝裏に腕を回して持ち上げる。
「『お姫様抱っこ』は他の候補者の護衛騎士だった男ルートだっけ?確かに彼は逞しいからね。でも僕だってキャロルを抱き上げるくらい出来るんだよ?」
そう言って覗き込むと「もう勘弁してぇぇぇ…。」と顔を覆ってしまうキャロル。
残念だけどまだあるんだよねぇ。
そのまま元居たソファに戻り、キャロルを抱えたまま座る。
「『お膝抱っこ』からの『あーん』は僕のルートだったね?」
キャロルの吹いた紅茶が被弾していないプチケーキをフォークに乗せて口に運ぶ。
「はい、あーん。」
「羞恥プレイの極み!!」と呻くキャロルはやがて観念したように口をあけて頬張る。
お約束のように彼女の口の端に付いた生クリームをペロリ。
『テンプレ』ってやつだね。
「甘くて美味しいね…?」
大きく見開かれた潤んだ空色に見つめられ、思わずそのままソファに彼女を寝かせて覆い被さる。
「ル、ル、ルイス様!全年齢なので!これはアカンやつです!!まだダメですー!ベル!助けてぇぇぇ!!」
両手でバツを作り全力で叫ぶキャロルの声に応えるように、ものすごい勢いでドアが開いた。
「殿下!!それ以上はまだ我慢してくださいませ!!」
残念…。
でも、いつも沈着冷静なアナベルがノックも無しにドアをぶち開け、珍しく慌てている『レア』な姿が見られたからまあ良しとしよう。
それに『萌えシチュエーション編』の中身は大体僕で上書き出来たしね?
残りのお楽しみはまた次の機会に取っておくよ。
リクエストいただいた甘い話が書きたかったのに結局黒くなった。流石ルイス殿下。