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団外秘!!緊急回覧!!
【天使と書いてベルたんと読むの会】会報番外
〇月✕日 晴天
報告者:ロベルト・クルーズ
緊急事態だ。
夜勤明けに家に帰ろうと、乗合馬車の停留所へ行ったら、幸運にもベルたんをお見かけした。ベルたんに会いたいと毎日神に祈っていたのが通じたのだろうか!
特に今月は第二王子妃選考会のお陰で、孤児院慰問が延期になっていて、ベルたん成分が不足している。
俺は思わずその場で神に祈った。
ベルたんはいつもはアップにまとめている銀糸にも勝る美しい髪を下ろして、可愛らしいバレッタで飾り、さらには清楚なワンピースに身を包んでいたから、休日のお出かけなのだろう。朝からマジ天使だった。
勇気ある団員諸君が少しずつ聞き出した情報からすると恐らく今日も侍女と共に南の孤児院へ行くのだろう。きっとあの大きめのカバンには子供達へのお土産が詰まっている事だろう。マジ天使。
団員の夢であった『名前で呼び合う』ミッションをクリアした今、次のミッションである『休日もベルたんを護衛させてもらう』を何とか早急に達成したいものである。そうすれば、もっと頻繁にベルたんに会えるのだから。
こうなれば早急にミッションクリアの為の人員を選出せねばなるまい。
そう決意を漲らせながらベルたんを見ていると、今日はいつもの侍女殿が居ない。
まさか1人で行くのか?
いくら治安が良いとはいえ流石に危険では?
そこで俺のちっぽけな脳みそが珍しく閃いた。
もしや今この時こそミッションクリアのチャンスなのでは!?
幸いにも俺は夜勤明けでこの後はオフだ。このまま護衛に名乗り出てベルたんに着いて行けばいいではないか!
睡眠?そんなものは今の俺には必要ない!
団員のみんな!オラにパワーをくれ!!
俺は祈りを込めて天に向かって両手を広げて、パワーを取り込む。
周囲の冷たい視線なんて気にしないんだからっ!!
そしていざベルたんの所へと1歩踏み出した所で衝撃的なものを見てしまったのだ!!!
ベルたんは1人ではなかった。
そこには私服姿のランスロット・アンバー卿がいたのだ!
ランスロット・アンバー卿といえば誰もが知る陛下の懐刀で近衛の中でも腕はピカイチと言われている男。
そして王子妃選考会でベルたんとペアを組んでいるという今一番妬ましい男ランキング堂々第1位の男だ!
休日に一緒に出かけるまで2人は親密になってしまったのだろうか?
親しげに言葉を交わす美しい2人は街の雑踏のなかでも一際目を引く、一幅の絵画のようだった。
集めたパワーを手に余らせたまま唖然として見守っていると、なんとベルたんがアンバー卿の腕に親しげに手を回して、更にはアンバー卿を引っ張るようにして乗合馬車へ乗り込んだのだ!!
ジーザス!!
夜勤明けの疲労感も手伝い、俺はガクリと地に膝をついてしまった。しばらくそのまま放心状態でいたが、この未曾有の緊急事態を早く団員諸君に報せるべく、休日返上でこの報告書を書いている。
団員諸君らには今後の対策について、多くの情報と忌憚なき意見を求めたい。
回覧者サイン欄
相手がアンバー卿なら勝ち目はない気がする 【団長】
諦めたらそこで試合終了ですよ。つか陛下に掛け合って何とかしてこい 【副団長】
副団長に同意 【副団長補佐】
無理無理無理!!泣 【団長】
団長が情けない件 【アーサー】
皆焦るな!卿はまだベルたんの生態をよく知らないはず!時間はある! 【ナイジェル】
そうだ!今まで深めてきた俺たちとベルたんの絆を信じよう! 【ベン】
俺もアンバー卿みたくイケメンになりたい 【ルパート】
ベルたんは俺たちの天使だ! 【イーサン】
ベルたん頼むから攻略されないでくれ! 【ノマル】
むしろ俺に攻略されてくれ 【チェスター】
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残念ながらランスは会報の愛読者なのよねぇ〜 【 アイリス】