21.ミャーペリコ登場!そして目的の天空城……じゃないの!?
飛行船で迎える朝というのは、ちょっとした特別感があって新鮮な気分だった。
それに昨日は一日中遊び回ったから、入浴後はバーでガールズトークするに留めて夜はぐっすりと眠れた。
ただ快眠したところで、彼女ら4人揃って朝に強いわけでは無い。
特にルリ以外の3人は長々と熟睡する体質とも言えて、ようやく起きたと思った直後には二度寝してしまう。
そのため一番早く起床したルリはルームサービスで静かに朝食を済ませた後、親友達が目覚めるまで客室内で大人しく過ごしていた。
「そういえばミャーペリコはお腹減らないの?」
唐突にルリは何者かに向けて、一癖ありそうな名称で呼びかける。
その直後、寝息を立ててるアカネを見守っていた触手が反応を示して、上手く飛び跳ねることでテーブルの上へ乗った。
心なしか触手がみゃーみゃー鳴いているように聞こえる。
「すっかり自分の名前だと認識できるようになったんだね。見た目は触手の形をしたスライムって感じなのに、学習が早くて感心するよ」
ミャーペリコとは触手の名前であり、夜のガールズトークの際にルリが名付けた。
なぜ反感を持っていた彼女が名付け親なのか説明すると、せめて愛情を注ぎやすいようにと周りから半強制的に促されたからだ。
ちなみに名付けた瞬間に「これで名づけ『親』!ですね!」とアズミから親の単語を激しく強調されたが、まだペット感覚に近い。
そしてミャーペリコという名前自体は会心の出来栄えだと、ルリは本気で自負している。
「というか、ミャーペリコって何を食べられるの?この姿で固形物とか消化できるのかな」
触手のサイズはアカネの頭に潜められる程度だから、消化や吸収に優れているように思えない。
実際ルリが指で軽く突けば、触手は柔らかい体をしていて緩い弾力性があるだけだ。
これでは生物として成り立っているのか不明なレベルであり、見た目と反応だけでは何も分からないことが多い。
「そうだ、今の内にちょっと調べよーっと。ミャーペリコのステータスオープン。そして生物研究スキル・生物存在証明干渉。個別判明の思考羅列。探偵スキル・推察の狩人」
ルリはミャーペリコの詳細を知るべく、複数の調査系スキルを発現させる。
それは相手のステータスや生態系のみならず、個体ごとの特性と思考パターンまで把握できるものだ。
そして対象に関する情報が事細やかに表示された瞬間、ルリは感心の声を漏らした。
「わぁお?これは中々に……うん、かなり飛び抜けて秀才な気がするなぁ」
ちょっと驚きつつも、ルリは更に数多のスキルを重ねることで自分の記憶から類似する情報を引き出す。
これらの情報開示は文字表記に限らず、多種多様な数式とシミュレーション映像が入り混じった解析結果であり、より鮮明度が高いものだ。
ただし、どれほど明瞭化された事実であっても、その情報を正確に読み取れるかどうかは本人の解釈と解読力に委ねられている。
これはどの種族、そしてどれほど優れた賢者にも言えることで事実に対して偏見が混じってしまうのは避けられない。
それを加味した上でもルリの推察はほぼ正確で、客観的にまとめた情報を独り言で述べる。
「巨大生物を遥かに凌ぐ耐久性と生命力。臓器は無いけど消化、分解、吸収のそれらが高水準で備わっている。排泄はせず、全てを代謝に還元する仕組み。生命維持に空気を必要としない上、宇宙空間でも支障なく生息活動できる適応力持ち。身体能力のみ現状低め。知能は人間の5歳児レベル」
ミャーペリコはスライムを基に造られた触手であって、まだ誕生したばかりだ。
つまり幼児と同等だから、種族や職業による能力成長は全く進んで無いはず。
それらを考慮したとき、この初期ステータスは他の生物と比べて大きく優れていた。
もし成長率も高いのならドラゴンや鬼巨人に匹敵する身体能力、はたまた悪魔や天使が保有する特殊能力を習得できるかもしれない。
「戦闘系を除く基本的な活動スキルは既に備わっているし、学習能力が高いから伸びしろがあるなぁ。だとしたらエフちゃん、けっこう完成度が高いのを錬金したね。神々が闊歩している異世界じゃなかったら、歴史に名を残せる偉業だよ」
ルリが褒めるほどエフは優れた錬金術を実現させており、同時に触手に対して並々ならぬ情熱を注いでいたのが見え透ける。
彼女のことだから、何らかのアダルト作品の影響なのだろう。
はっきり言って稀代の変態で天才だ。
だが、エフは変わった性癖の持ち主だからこそ誰にも頼らず、異様な執着心で成功させてしまったわけだ。
「とりあえず、ミャーペリコにとって有毒となる成分は無いみたいだね。それどころか致死性が高い猛毒まで栄養源にすると思って良さそう。じゃあ魔法はどうかな」
いつの間にか実験気分となっており、ルリは威力が皆無に等しい火焔魔法を指先に発現させてミャーペリコへ近づけた。
すると触手は指に吸い付くものの、あっという間に火焔だけを取り込んでみせた。
それから相手は食べたアピールするために頭を振るので、もはや触手だからと言って侮る要素は完全に無くなった。
むしろ生態だけ見れば、理想的な完璧生物に近い。
「無効化するというより吸収する感じだね。そして取り込む対象を自分の意思で選択できると。つまりアカネちゃんに危害を加えなかったのは、本当に親として認識しているわけだ。そして、それは周りに馴染める社会性を持っている証明かな」
この触手には状況と相手の意図を理解する知性と感受性。
また、高いコミュニケーション能力と心優しい自我が備わっている。
それが分かるとルリの中で1つ連想できるものがあった。
「これはアレだね。自分を人間だと思い込んでいる動物と同じだ」
触手ミャーペリコのことを知れば知るほど、これで人間の姿ならもっと仲良くできるかもしれないと思えてくる。
そんな友好的な気持ちが彼女の中で芽生え始めた。
またしばらく時間が経過して、ようやくエフが目を覚ます。
そして彼女が起きて最初に見た光景は、ルリが見知らぬ少女と室内でキャッチボールしているものだった。
「えっ?はっ……?誰なの?」
エフは朝の挨拶を忘れてしまうほど、寝ぼけ眼のまま現状に混乱した。
最初の数瞬はルリが新しい友人を部屋へ招き入れたのかと思った。
しかし、彼女が親しそうに相容れている態度からして、ついさっき知り合ったわけでは無さそうだ。
なんとも和気藹々とした雰囲気で、愉快にキャッチボールしている様子は昨日のエフ達4人と大差ない。
一方で見知らぬ少女はエフの起床に気が付くなり、橙色の髪をなびかせながら彼女へ突撃した。
「創造主様!おっはよーです!」
まるで愛玩動物みたいに飛びつき、起きたばかりのエフをベッドへ押し倒す。
同時に謎の少女は大きい胸をエフの顔に押し付けながら、大きなアホ毛を犬の尻尾と同じくらい振り回しつつ何度も抱きつき直していた。
「うぅ~ん!創造主様に抱き付けるようになって嬉しいです!」
少女は遠慮知らずに全力でエフを抱きしめ続ける。
それにしても少女の胸に限らず、体全身が妙に柔らかすぎる触感だ。
これに対してエフは戸惑いと歓喜を覚える中、その挨拶を見守っていたルリが声をかけた。
「ミャーペリコ。まだ体の扱いに慣れてないんだから気を付けた方がいいよ。あと人間は口や鼻を塞がれると呼吸できないから」
「あわわっ!?そうでしたね!あやうく創造主様を窒息させる所でした!ごめんなさいです!」
ミャーペリコと呼ばれた少女は馬乗りしたままではあるものの、ひとまず抱き付く行為をやめてくれたおかげでエフの窒息は免れる。
ただ、息苦しかったはずのエフはちょっと満足気な顔をしており、むしろ再度抱きつかれることを期待していた。
だいぶ欲望にまみれた反応で、基本的にエフは相手が女性だったらウェルカム精神なのかもしれない。
事実、彼女は両腕を広げながら気味悪い声を漏らしている。
「ふふっ……。ふふふっ…」
「あの、創造主様?変顔になってしまっていますが、大丈夫ですか?」
ただ事では無いと察したのか、無知なミャーペリコは素直な想いでエフの調子を気遣った。
その際、先ほどから自身の感情に連動しているアホ毛を垂らしており、本気で心配しているのだという気持ちが読み取りやすくなっている。
そしてミャーペリコの威勢が良い挨拶によってアカネとアズミの眠気まで吹き飛んだらしく、2人ともぼんやりと目を覚ます。
アカネだけは未だに布団の中でモゾモゾと蠢いている状態だが、そろそろ活動準備と紹介を済ませたい。
だからルリは改めて3人の親友を叩き起こし、夢心地気分の彼女達を現実へ引き戻した。
それからルリが朝の出来事を話した後、つい先ほどまで触手だったミャーペリコについても説明するのだった。
「ということで一晩経って考え直した結果、私のスキルパワーでミャーペリコに女の子の姿を与えてみました!どう?可愛い仕上がりになっているでしょ?アカネちゃんと私の良い所を取ったの。特にアホ毛がチャームポイントで触手みたいに動くよ!」
ルリが意気揚々と紹介した直後、ミャーペリコは元気よくお辞儀する。
「皆さん、改めてましておはようございます!そして今日から娘としてお世話になります!触手スライムのミャーペリコです!」
天真爛漫とした雰囲気と愛想満点の振る舞いでミャーペリコが挨拶すれば、合わせて頭のアホ毛もぴょこぴょこ動く。
想像より早い人間化で、最初に提案したアズミですら驚く朝一のサプライズだった。
しかし、今更言うまでもないほど順応性が高い3人だ。
この予想外の出来事に戸惑うどころか、すぐにミャーペリコに対して握手や抱き付きのスキンシップを行うなど、友好的な態度で積極的に迎え入れた。
中でもアズミは興奮した様子でカメラを構えており、あらゆる角度から撮影しながらミャーペリコの特徴を全て言葉にする。
「凄い!ドストレートな萌えキャラじゃないですか!明るい髪色と瞳に、子犬みたいな性格!そして人懐っこくて遊びが大好きな子どもっぽい気質なのに、豊満な胸というギャップ!頭のアホ毛が呑気さと緩い性格を醸し出しているのに対して、実は天才肌で律義!何よりこんな無知っ子を私たち変態集団の中へ放り込むなんて、色々おいし過ぎませんか!?そして露出多めのゆるふわ系ゴスロリファッションもエモい!全くなんですか!狙ってないはずなのに漂う、この無自覚エッチの化身っぷりは!その癖、穢れを知らないままであって欲しいという品がある辺り、属性を盛り過ぎですよ!触手とスライムの要素を兼ね備えた美少女ってだけでヤバいのに!お゛ほっ♡しかもロリママなアカネちゃんの娘なので、アイドル適性あることを私は見抜いています!」
「ヤバいのはアズミだからね。ほとんど独自解釈による妄想だし、一気に喋り過ぎて訳が分からないし」
ルリは冷静に指摘するものの、オタクモードに突入したアズミが相手の話を訊くわけもない。
また、いつもに増して目をギラつかせて暴走する彼女は遠慮知らずだ。
ミャーペリコの小さな手をぷにぷに握って感触を堪能しては、スライムらしく吸いつく唇を撫でたりしていた。
あまりにも一方的かつ過剰な触れ合いを強要すれば、もちろん誰でも嫌がるところだ。
しかし、ミャーペリコ本人は本当に子犬なのかと思うほど、どれほど触られても無邪気に喜んでいる。
ただ一カ所、アホ毛を触った時だけは少しだけ過剰な反応を示していたが、やはり一貫して従順で無抵抗なままだった。
だからアズミのやりたい放題が続く一方、アカネは呑気に感動していた。
「娘が成長してママは嬉しいなぁ。でも、なんて呼ばせたら良いかな。アカネママ、お母さん、母上、マミィ……うーん。悩むなー。あとミャーペリコの人生設計も考えておかないと。私と同じくネット配信活動も悪くないかな。それに学校や習い事とかも決めたいなー」
アカネ自身はまだ幼いのに、先々の物事を現実的に考える力が高いようだ。
おままごと感覚なのか、相手のために考えるのが好きな性根なのか。
どちらにしろ、その前向きな姿勢をルリは心から賞賛する。
「アカネちゃんは凄いね。すぐ相手のために何かしてあげようとするんだから」
「ミャーペリコは愛娘だから、沢山の選択肢を与えらえるようにしないとねー。そういえばルリさんは、ミャーペリコのことを娘として認めてくれたのー?」
「ん~……。それは、まぁこうして名前を付けてあげたり、人間の姿になったら現実味が増したかなぁって感じ。あと、性別をはっきりさせたのも大きいかな。それに親バカってわけじゃないけど、良い子で自慢したくなる子だと思えてきたよ」
「おぉー。なんだかルリさん。親としての自覚が芽生えてきたって雰囲気があるよー」
「そうかな。だとしたら、ちょっとは親らしく振る舞いたいな」
ルリは内心、簡単にミャーペリコを認めてあげられなかった一番の理由は、自分が親の責務を担うことに自信が無かっただけなのかもしれないと感じた。
かつては別の異世界で孤児や養子、そして弟子や高位存在を育てた経験があるのに今回は抵抗感があったなんて、なんだか不思議な話だ。
「思えば、夫婦で子どもを育てることは初めての経験になるかな。関係性的には、とりあえず養子みたいなものだけど」
すっかり心変わりが済んだわけでは無いが、ルリは自分が親であることに悩まなくなる。
恐らく一線を越えたことで踏ん切りがついたのだろう。
加えて、これもロールプレイングの一環だと思えば、なおさら難しく捉える必要が無いと思えてきた。
そう考えてミャーペリコがアズミとエフの2人に揉みくちゃにされている光景を眺めてるとき。
突如、彼女達5人が居る部屋は外部からの爆発で吹き飛んだ。
室内は一瞬で跡形も無く壊滅しており、近くの通路も破壊し尽くされている。
「わぁお。急に何事?」
ルリはアカネ達4人を手荷物と共に飛行船の甲板へ転移させており、寸前ながらも無傷だった。
またルリ以外の全員は前触れも無く場所が変わったとしか思っておらず、急変する事態を呑み込めていない。
そんな中ルリは爆発箇所をスキルで遠視し、爆発原因を発見する。
「遠方からのミサイル飛来とレーザー光線の放射ね。この飛行船が領空侵犯しちゃったのかな。とは言っても、旅客機をいきなり攻撃するのは感心しないなぁ」
続けて彼女は一瞬で攻撃の発射地を探り当てる。
「えっ、上からの攻撃?雲より高いのに?」
ルリが不思議そうに視線を向けると、その先には龍の形をした雲が浮遊していた。
しかも雲はまるで生物みたく優雅に動いている。
相変わらず異様なモノが当たり前のように存在する世界だ。
そんな未知の出来事にルリが戸惑う傍ら、龍の雲に気が付いたアカネは目を輝かせた。
「おぉー!ルリさん、アレだよ!アレが天空城が中にあるって言う、龍の巣だよー!」
「そうなの?巣というより龍そのものに見えるよ」
「あれー、言われてみればそうかもー?だけど、多分あれだと思うんだよねー」
「へぇ。でも、その割にやたら攻撃的というか敵意丸出しな感じが……」
まだ2人が呑気に話している最中、案の定、雲の龍から大量のミサイルとレーザー光線が放たれてくる。
どう考えても飛行船に対する迎撃態勢だ。
何であれ黙って撃ち落とされるわけにはいかず、ルリは対処に出ようとする。
しかし先に飛行船の防衛機能が働き、超強力な電磁波シールドの発生によって攻撃が被弾する前に全て阻害した。
おかげで船体に届くのは爆音と僅かな振動のみ。
これで一時的に耐え凌ぐことはできそうだが、雲の龍からの猛攻は止む気配が見受けられなかった。
「やる気が凄いね。それに獲物を狩る生き物みたいな動きしている。雲はカモフラージュで、内側に人工物があるのか」
ルリの見立て通りならば雲は龍の姿を模しているだけで、外見は分厚い雲に過ぎないはず。
それなのに雲の龍は口を開けながら頭を大きく振りかぶるという、これから火を噴くような予備動作を行っていた。
どのような攻撃手段が実行されるのか分からないが、飛行船のシールド破壊を狙った強力な攻撃の可能性が高い。
要するに危機的状況は依然と続くどころか、より危険が増している最中だ。
だが、旅行気分のアカネ達はやはり楽観的に喜んでいて、それぞれが笑顔で現状を楽しんでいた。
「アカネママ!あの雲、おっきいですね!ふかふかして気持ち良さそうです~!」
「おぉー、そうだねー。それに歓迎の花火が凄いよー。ここまで華やかなんて私は感動だー」
「ずいぶんと派手なパフォーマンスね。どれだけの予算が組まれた演出なのかしら」
「これをバックに皆さんで記念撮影しましょう!うーん!まさしく最高級の旅行って感じで盛り上がります!ちなみに私、この時のために一切れのパンを用意して来ました!あとナイフとランプと光る石!」
最早なぜ落ち着いていられるのか、よく分からないぐらい胆力が優れたパーティーだ。
そんな気持ちをルリが抱いている間に、雲の龍は膨大なエネルギーで光り輝く口を向けてきた。
「あー、これはマズイかも」
ルリだけ状況に適した感性で呟いた直後、照準が定められた口から超巨大なレーザー光線が放たれた。
その規模は飛行船より一回り大きく、ありえない出力のエネルギー放射だ。
皆の視界が一瞬で覆われてしまい、思わず目が眩む。
ただしルリのみ問題無く視認しており、尚且つ数十秒後に起きる出来事を理解していた。
「シールドは耐えているみたいだけど、まぁ無理だよね。はぁ……。この世界だと農民縛りって無理があるのかなぁ」
レーザー光線の直撃を受けた電磁波シールドは耐えはするものの、肝心の攻撃が絶えず照射されていて止む気配が無い。
この調子が続けば飛行船を守るシールドは確実に貫かれ、その次の瞬間には全てが消失してしまう。
だからルリは最悪の状況を避けるため、手遅れになる前にスキルを使おうとする。
「仕方ない。ルリ流ス…」
ルリがいつものように解決しようとした直前、飛行船の外から男性の声が響いてきた。
「Yo!ここは俺達スタッフに任せなYo!行くぜ俺の一族達!そして親友モーセYeah!」
「仙人スキル・海割りの奇跡!」
聞き覚えるのある男性の声と、全く知らない声の両方が聞こえてきた。
同時にレーザー光線は真っ二つに裂けて、ものの見事に飛行船を避ける。
そして隙間ができた瞬間にトライデントの一斉掃射が行われ、全ての槍が雲の龍を刺し貫き、至る場所から爆発と雷撃が巻き起こる。
これにより内部を覆い隠していた雲は吹き飛ばされていった。
すると、その先にはレーザーやミサイルの発射装置を備えた頑強な城が浮かんでいた。
ついに姿を現した天空を支配する城。
しかも先ほどのトライデントで迎撃システムは機能不全に陥ったらしく、今は大人しく飛んでいるだけだ。
「よし、今の内だね。行こうみんな!」
ルリは隙を見つけて、浮遊魔法で仲間達4人を連れて要塞同然の城へ乗り込みに向かった。
その一方で飛行船内ではアナウンスが流されており、ちょっとした説明が行われていた。
『先ほどの攻撃は、宇宙戦闘要塞によるものです。危機は無事に退けられましたので、ご安心ください。それではアミューズメントパーク天空城ラピタへ到着するまでの半日、ごゆるりとお過ごし頂けるようスタッフが対応に当たります。なお、先ほどの被害により一部の通路が通行止めになってしまい、お客様にはご迷惑をお掛け致します』
どうやらルリ達が天空城だと思った建造物は当初の目的地だったモノでは無く、欠片も関係が無い上に危険な宇宙要塞だ。
そのことを彼女らは露知らず、旅行気分のまま期待を胸に遊びへ行ってしまう。




