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ボーダレス  作者: 那須 儒一
第二章 金毛九尾討編

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道中の説明会

 現在、信也しんやたち5人。…訂正、くろも入れて6人はA樹海へと向かっている。


 A樹海は郡山家総本山から一山越えた先にあるらしく、小一時間で到着するとのことだ。


「なあなあ。きんもうきゅうびって、そんなにヤバい奴なのか?」


 信也しんやの問いかけに対して水姫みずきが解説を始める。

金毛九尾きんもうきゅうびは、平安時代末期に玉藻前たまものまえとして鳥羽天皇とばてんのう寵姫ちょうきであった。その後、鳥羽天皇とばてんのうが九尾の干渉力かんしょうりょくにより、病に臥せたところで、陰陽師おんみょうじ安部あべの泰成やすなりに正体を見破られる。すんでのところで、九尾には逃げられたが、最終的には討伐された」


金毛九尾きんもうきゅうびの死後、その体は殺生石せっしょうせきとなり、周囲の生物の命を奪うようになる。その後、玄翁和尚げんのうおしょう殺生石せっしょうせきは砕かれ、日本各地に飛び散った」


殺生石せっしょうせきは欠片となり、長い年月が経った今では殆ど無害だ。ただし、殺生石せっしょうせきはもともと干渉力かんしょうりょくの塊だ。各地にある欠片を集めて、A樹海のような干渉力かんしょうりょくの吹きだまりてで、手練れの干渉者かんしょうしゃが力をほどこすと金毛九尾きんもうきゅうびが復活する可能性もわずかながらある」


干渉力かんしょうりょくって、結局わからないままなんだけど…。どうしてA樹海は干渉力かんしょうりょくの吹きだまりなんだ?」


「お前なぁ、修行前に説明受けただろ。干渉力かんしょうりょくは、人の強い想いにより万物の理を書き換える力だ」


「A樹海は自殺の名所だ。死にぎわ悔恨かいこんうらみ、ねたみ、そねみにより、本来成仏するはずだった魂の理が書き換わり、現世に留まる。浮かばれない悪霊がわんさかいるぞ。それに伴い、干渉力かんしょうりょくも充満していく」


「なるほど、わからん。とりあえずヤバいってことはわかった。この干渉力かんしょうりょくで悪霊をはらえるのは何でだ?」


朝水あさみ。疲れた…説明交代」

「まったく兄さんは…」


説明疲れした水姫みずきは弟に任せてふて寝を決め込む。


干渉力かんしょうりょくにより、理が書き換わることで、万物は、より高次元の存在へと昇華しょうかされます。例を挙げると、3次元の存在の兄さんが、同じ次元の竹取たけとりさんに触れるのは容易です。ただ、より高次元のくろさんに触れたければ、干渉力かんしょうりょくでくろさんと同じ次元まで力を高めなければなりません」


「ふむふむ、わかったような、わからんような…。殺生石せっしょうせきがそんなに危ない物なら、事前にどうにか出来なかったのかよ」


「そうですね。できれば殺生石せっしょうせきの欠片を封印するか、壊したかったのですが、御三家ごさんけの力を持ってしてでも、場所を移すことすら出来ませんでした」


 今まで黙って聞いていた真依まいが首をかしげながら質問する。


「…まって、その話し変じゃない。御三家ごさんけさんでも動かせない物を、シンヤくんのお父さんはどうやって集めたの?」


 御三家が人だと思っている真依まいであったが、えて誰も訂正はしなかった。


竹取たけとりさん意外と鋭いですね」


 朝水あさみはナチュラルにディスる。


「意外ととは聞き捨てならんですぞ」

 真依まいが頬を膨らませぶぅぶぅ言っている。


「申し訳ございません。つい本音が…。竹取たけとりさんがおっしゃるように、誰も動かせない物を動かせてるから、生司馬いくしま 大護だいごは危険なんですよ。それほどの干渉力かんしょうりょくの持ち主なら、金毛九尾きんもうきゅうびの復活も現実味げんじつみを帯びてくるでしょ?」


「親父って、そんなに凄い人なのか」


「実は私もよく知らないんです。父上のような古参こさんの方なら、何かご存知かもしれませんが…。それほどの力があれば、人間を4次元に出来てもおかしくはないですね」


「爺さんはオレがこんな体になってるのは、くさびのせいだって言ってたぞ。ただ…打ち込んだのは親父じゃないらしいけど」


郡山家こおりやまけで長時間、4次元まで力を高められるのは父上だけです。父上なら信也しんやさんの体のことを詳しく解明できるかもしれませんね」

 認識を改めて、水姫みずきの父親は凄い人物だと記憶に刷り込む。普段が“あれ”なだけに、信也しんやはそのことを、信じきれていなかった。


「いまいち、“次元”ってのもよくわからん」


「そうですね。厳密に言えば、4次元など、本来の意味合いは違ってくるのですが…。便宜上べんぎじょう、干渉力の力量を数値化して、次元で表しているにだけにすぎません」


「大まかに区別すると私たち人間、多くの物体は3次元。幽霊の類いは3.5次元。大妖怪、土地神クラスになれば4次元に分類されます。話によればそれより上の次元も存在するみたいですが、私は直接対峙したことはありません」


 徐々に専門用語が知識として定着しつつある信也しんやは、何となくだが、意味が理解出来るようになってきた。


「なら、オレってめちゃくちゃ強いのでは?」


「万が一、金毛九尾きんもうきゅうびが復活ふれば、間違いなく4次元クラスでしょう。現状、その域まで到達出来る人は限られている。私や兄の全力であっても瞬間火力で4次元の域まで到達できるかどうか…」


防衛省ぼうえいしょうが無策で我々を集めるとも思えませんので、何かしらの対応策は練っていると思います。とりあえずは現場に着いて確認してみましょう」


 情報量が多過ぎて頭がパンクしそうだ。既に信也しんやの頭からは、金毛九尾の情報は記憶の上書きにより、抹消されていた。


 長々と説明を受けていると、信也しんやたちを乗せた車は目的に到着した。

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