道中の説明会
現在、信也たち5人。…訂正、くろも入れて6人はA樹海へと向かっている。
A樹海は郡山家総本山から一山越えた先にあるらしく、小一時間で到着するとのことだ。
「なあなあ。きんもうきゅうびって、そんなにヤバい奴なのか?」
信也の問いかけに対して水姫が解説を始める。
「金毛九尾は、平安時代末期に玉藻前として鳥羽天皇の寵姫であった。その後、鳥羽天皇が九尾の干渉力により、病に臥せたところで、陰陽師・安部泰成に正体を見破られる。すんでのところで、九尾には逃げられたが、最終的には討伐された」
「金毛九尾の死後、その体は殺生石となり、周囲の生物の命を奪うようになる。その後、玄翁和尚に殺生石は砕かれ、日本各地に飛び散った」
「殺生石は欠片となり、長い年月が経った今では殆ど無害だ。ただし、殺生石はもともと干渉力の塊だ。各地にある欠片を集めて、A樹海のような干渉力の吹きだまりてで、手練れの干渉者が力を施すと金毛九尾が復活する可能性も僅かながらある」
「干渉力って、結局わからないままなんだけど…。どうしてA樹海は干渉力の吹きだまりなんだ?」
「お前なぁ、修行前に説明受けただろ。干渉力は、人の強い想いにより万物の理を書き換える力だ」
「A樹海は自殺の名所だ。死に際の悔恨や怨み、嫉み、妬みにより、本来成仏するはずだった魂の理が書き換わり、現世に留まる。浮かばれない悪霊がわんさかいるぞ。それに伴い、干渉力も充満していく」
「なるほど、わからん。とりあえずヤバいってことはわかった。この干渉力で悪霊を祓えるのは何でだ?」
「朝水。疲れた…説明交代」
「まったく兄さんは…」
説明疲れした水姫は弟に任せてふて寝を決め込む。
「干渉力により、理が書き換わることで、万物は、より高次元の存在へと昇華されます。例を挙げると、3次元の存在の兄さんが、同じ次元の竹取さんに触れるのは容易です。ただ、より高次元のくろさんに触れたければ、干渉力でくろさんと同じ次元まで力を高めなければなりません」
「ふむふむ、わかったような、わからんような…。殺生石がそんなに危ない物なら、事前にどうにか出来なかったのかよ」
「そうですね。できれば殺生石の欠片を封印するか、壊したかったのですが、御三家の力を持ってしてでも、場所を移すことすら出来ませんでした」
今まで黙って聞いていた真依が首をかしげながら質問する。
「…まって、その話し変じゃない。御三家さんでも動かせない物を、シンヤくんのお父さんはどうやって集めたの?」
御三家が人だと思っている真依であったが、敢えて誰も訂正はしなかった。
「竹取さん意外と鋭いですね」
朝水はナチュラルにディスる。
「意外ととは聞き捨てならんですぞ」
真依が頬を膨らませぶぅぶぅ言っている。
「申し訳ございません。つい本音が…。竹取さんが仰るように、誰も動かせない物を動かせてるから、生司馬 大護は危険なんですよ。それほどの干渉力の持ち主なら、金毛九尾の復活も現実味を帯びてくるでしょ?」
「親父って、そんなに凄い人なのか」
「実は私もよく知らないんです。父上のような古参の方なら、何かご存知かもしれませんが…。それほどの力があれば、人間を4次元に出来てもおかしくはないですね」
「爺さんはオレがこんな体になってるのは、楔のせいだって言ってたぞ。ただ…打ち込んだのは親父じゃないらしいけど」
「郡山家で長時間、4次元まで力を高められるのは父上だけです。父上なら信也さんの体のことを詳しく解明できるかもしれませんね」
認識を改めて、水姫の父親は凄い人物だと記憶に刷り込む。普段が“あれ”なだけに、信也はそのことを、信じきれていなかった。
「いまいち、“次元”ってのもよくわからん」
「そうですね。厳密に言えば、4次元など、本来の意味合いは違ってくるのですが…。便宜上、干渉力の力量を数値化して、次元で表しているにだけにすぎません」
「大まかに区別すると私たち人間、多くの物体は3次元。幽霊の類いは3.5次元。大妖怪、土地神クラスになれば4次元に分類されます。話によればそれより上の次元も存在するみたいですが、私は直接対峙したことはありません」
徐々に専門用語が知識として定着しつつある信也は、何となくだが、意味が理解出来るようになってきた。
「なら、オレってめちゃくちゃ強いのでは?」
「万が一、金毛九尾が復活ふれば、間違いなく4次元クラスでしょう。現状、その域まで到達出来る人は限られている。私や兄の全力であっても瞬間火力で4次元の域まで到達できるかどうか…」
「防衛省が無策で我々を集めるとも思えませんので、何かしらの対応策は練っていると思います。とりあえずは現場に着いて確認してみましょう」
情報量が多過ぎて頭がパンクしそうだ。既に信也の頭からは、金毛九尾の情報は記憶の上書きにより、抹消されていた。
長々と説明を受けていると、信也たちを乗せた車は目的に到着した。




