表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神の裏垢  作者: 羽田悠平
12/12

死神の標的

「死神の、標的が……分かった?」

 隼人は目を見開き、驚きを露にした。それは瑞奈も同じだった。

「どういうことなの?」

 その答えが待ちきれないというように、前のめりになって涼介に問いただす。

「うん、順を追って説明するから落ち着いて聞いてくれ」

 涼介は二人をいさめながら言った。

「ここまで、俺たちは死神の裏垢から狙われた人を四人知っているよな。まず一人目は馬場、二人目は守屋さんの友人、三人目は瑞奈のクラスメイトだった公太君、そして四人目が瑞奈だ。その四人に、決して偶然とは思えない共通点があることが分かったんだ」

「共通点……」

「まず一つ目、それは全員が死神の裏垢にフォローされる前に、何らかのネガティブな状況にあると傍目から見て推測できることだ。ツイッター上で病んだようなつぶやきをしたり、それまでと打って変わって投稿が減ったりっていう、客観的なサインがあるんだよ。瑞奈も、そうだよな」

 涼介の言葉に瑞奈は顔を赤らめた。

「るしふぁーにフォローされるまで、瑞奈が裏アカウントを持ってるなんて知らなかったよ。でもこの騒動で俺はそのアカウントを知ることになり、申し訳ないけど調査のためにその中身を見させてもらったよ。悪く思わないでくれよな」

「う、うん……」

「そしたらやっぱり瑞奈も、そのアカウントで病んだように見えるツイートをしてた。つらいとか、死にたいとかね」

「ごめん、そこまで深刻につぶやいてたわけじゃなくて……ちょっとしんどいことあると大げさに内容盛ってそのアカウントで発散してたんだよね……」

「なら良かったけど。まあ、裏アカウントの運用としてはよくある話でもあるよな。とは言え、今回はそれが死神を呼び寄せるキーになっちゃったと思われる」

「もう一個の共通点は、何なんだよ?」

「もう一個は、皆が何かしらで『救済の園』に関わってるってことだ」

「なっ……」

 再び話を聞く二人の表情に驚きの色が浮かんだ。

「馬場はツイッターの過去の投稿で救済の園に言及しているのを見つけた。公太君はお気に入りに登録した他人のツイートの中に、救済の園に関するものがあった。守屋さんの友人は、ブログで救済の園を取扱っていた。そして瑞奈は、俺と一緒にそのサイトを訪れたことがあるし、何よりその後興味半分で救いを求めるメールまで送っている」

 涼介の説明の言葉は自然と熱を帯びるようになっていった。

「この2つの共通点が指し示すもの……それは、死神は死を考えるほど心の弱っていそうな人をターゲットにしており、その正体は救済の園の運営団体、『エリクサー』であるということだよ」

 涼介の言葉に二人とも言葉を失った。

「ほんとかよ……」

 ようやく隼人が絞り出すように言葉を漏らした。

「ああ、間違いないだろう。どう考えてもそれ以外に説明がつかない。エリクサーの奴らは、恐らく救済の園から問い合わせがあったユーザーを対象にして、SNSの情報を加味しながらターゲットを絞り込んでいってるんだろう。心が弱っていて、脅しが十分に効きそうな相手をね」

「くそっ、何が死神だ……ふざけんなよ」

「でも、一体何を目的に……?」

「それはさっぱり分からない。異常な信仰を持った宗教団体とか、密かに革命を企むテロ集団とか、色々選択肢は考えられるけど。それを俺たちで暴きにいこう」

「俺たちで……」

「危険じゃない……?」

「じゃあ、指を咥えて見てろって言うのか? 瑞奈の命が狙われてるってのに? 警察に相談したって動いちゃくれないぞ」

 涼介は言葉に力を込めてまくし立てた。その強い覚悟を見て、隼人と瑞奈は言い争うことを早々に放棄したようだった。

「俺たちでやるしかないんだ。明日、エリクサーの本部に忍び込むぞ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ