プロローグ
こんにちは、名も知らない貴方。
これを読んでいると言うことは、もうあの事件はかたがついてて
僕らはもう、死んでいる。
これは僕らの人生譚だ。
貴方がどう解釈して、これからどう生きるのか。
それは僕にはわからない。
神様でさえわからないだろう。
それでも
人間同士の殺し合いの記憶は、引き継ぐ義務がある。
二度とこんなものが起こらないように。
…前書きはこんなものだ。
偉そうに聞こえるかな?
だけど僕はこの事件の主犯とも言える人間なんだ。
いや、
人間じゃないのかも知れない。
それもまた、君が決めることなんだ。
ある日。一人の人間が時空間をねじ曲げてひとつの都市を作り上げた。
曖昧な街。「オブスキュール」。
外部から干渉出来ない、閉ざされた都市。
それでも内側からは異形が溢れかえり、人間は驚愕した。
人間はこの出来事を「事件」とした。
国が動き、世界が注目した。
ドイツの首都、ベルリン。
此処が一番の影響を受けた。
此処が一番の、絶望を知った。
「残念だったな。」
「オブスキュール」の創造主が、国のトップに語りかけてきたのだ。
「お前らは進化を怠った。進むことを恐れた。我らが真の支配者になるのだ。己が無能であることを哀れむがいい。」
しかし。
「僕は無能なんかじゃないよ。君たち『ウィッチ』を殺す方法はわきまえているからね。」
恐れを知らない人間であった総統、テオドル・ヴィルマル・ブロムストランドは敵対の意を示した。
『ウィッチ』と呼ばれた創造主は哄笑した。
愚かだ、実に愚かだと。
だが、面白い。と。
創造主は言った。
「我々はお前ら人間からして異形である。何故かというと、数が少ないからだ。」
「我々はお前ら人間が大嫌いだ。」
「しかし、今となっては共存せざるを得ないのだ。」
「だから」
「手始めに 殺して数を減らすのだ。」
「10:1だと駄目だ。我らが不利である。」
「平等にいこうじゃないか。」
「1:1だ。」
無茶苦茶な交渉だった。
テオドルは怖れなかった。
「僕らは君から見て異形でしょ?何故かって、数が多いから。」
「それで、僕も君が嫌いだ。」
「だけども共存することは必要事項ではない訳で。」
「つまり」
「数が少ない方を殺した方が、効率がいいよね。」
創造主は視えない目を見開き輝かせた。
こんな面白い人間がいるのかと。
「我々を見くびるなよ?」
重い言葉であったが、そこには嬉しさが滲んでいた。
「見くびってないよ。…勝算があるだけ。」
テオドルの不敵な笑みにつられ、創造主も口角を上げた。
創造主は高らかに宣言した。
「いいだろう!宣戦布告と受け取った!」
テオドルはなにも言わなかった。
「お前らには我々と違い力がない。その変わりに情けと絶望を与えてやろう。」
「まずは情けだ。我が造った街は外部から何人たりとも入ることはできない。住民でなければな。」
「だが、ひとつだけ方法がある。」
「夜を味方につけるのだ。」
創造主の手には拳ほどの水晶が握られていた。
「これを渡そう。」
「満月に近づく度、ゲートが大きく、強く開く。」
「欠点は…夜中しか使えないことだ。」
「十分だよ。」
テオドルは自分の手に渡った水晶を眺め、微笑した。
「…では次は絶望だ。」
日頃笑い慣れていないのか歪んだ顔つきでテオドルの耳元で囁いた。
「我が殺したのだ。人間の子供二人をな。」
ガラスが砕け散った。
テオドルの拳は血が滲んでいた。
創造主は…姿を消していた。
「…絶望、ね。確かにこれは…キツい。」
テオドルの目には復讐という眼差しに変わっていた。
それから三年。
事件は加速して始まりの号砲を告げるのだ。
まあなんとか0話が出来ました。(白目)
これからよろしくお願いします。