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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
冒険者だけれど村娘に戻れるか心配です
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エルフ救助作戦

「エリ、行くよ」


 あたしは怒りで振り切れる一歩手前で感情を制御する。

 攻撃は激しく、頭は冷静に、だ。

 シアからバフを受けたのを確認して、あたしはゴブリンロード……ゴブリンの姿をした2mもある巨人に突撃する。

 情報を吐かせるためには、殺してはならないのだ。


 あたしは強化した脚力で地面を蹴ると、一瞬でゴブリンロードの前まで迫る。

 聖剣を振るうと、あたしの剣撃にゴブリンロードが食らいついてくる。

 剣と斧が激しくぶち当たる。

 ──ギャンッ! ギャンッ! ガガガガガガガ! 

 あたしの本気の剣に合わせるようにゴブリンロードは対応してくる。


「グゥ……! サスガハ勇者ト言ウコトカ……!」

「あああああああああああああああああああああ!!」


 あたしとゴブリンロードの戦いは始まったばかりだった。




 ベネットはエリシアとゴブリンロードの戦いを見て驚愕していた。

 とてもではないが、普通の人間が割り込めるような戦いではなかった。

 エリシアやギルドマスターからある程度話を聞いていたが、こんな人間離れした戦い方をするエリシアが魔王を倒した後に消耗してしまうという話を思い出して、魔王と言う存在の恐ろしさを改めて実感する。


「……みんな、エリシアちゃんが足止めをしている間に、エルフの女性たちを救おう」

「おう」

「わかったわ。デリケートな場合もあるから、その場合は私に任せてね」


 ジェイル、サシャが反応する。

 シアはエリシアの支援に回っているので、手隙ではない。


 ベネットは周辺の妨害を仕掛けてくるゴブリンやオークを討伐しながら、奥に進む。


「しかし、ベネットも腕を上げたよな」

「ん、そうかい?」

「ああ、昔だったらオークなんてこんなにあっさりと討伐はできなかったはずだぜ」


 言われてみれば、そうかもしれなかった。

 ベネットは基本的に最前線で盾を構えて敵の攻撃を受けるタンク役である。

 ベネットが受けている隙に、ジェイルやサシャが倒すという戦法がエリシアが入る前の基本であった。

 今では、盾で剣を受け流して素早く弱点に剣を突き立て、そのまま敵を殺すというのが容易にできるようになっていた。

 エリシアの加入でより難度の高い依頼をこなす機会が増えたというのもあるが、魔王の出現により魔物が活性化してより狂暴になったというのもベネットの経験を増やす機会になったと言える。


「……そうだね。俺もいつの間にか銀級中位と言われるようになったしね」


 ベネットは受け答えをしながら、盾でオークの攻撃を受け流し、剣で切り伏せる。

 ベネットの剣は片手剣を使っていたが、技量の上達に伴い現在は両手剣を片手で扱っている。

 そのため、ベネット自身の攻撃力は上がっていた。


「ジェイル!」

「おうよ!」


 ジェイルも戦闘技術は上達しており、エリシアほど素早くはないが敵の急所を的確に突いてゴブリンを倒していた。


「《火炎の槍(ファイアランス)》!」


 サシャも魔法の腕がかなり上達しており、エリシアと相談して作った魔法なんかを短縮詠唱で放つようになった。

 サシャの周囲に炎の槍が生成されて、ゴブリンやオークに直撃して消し炭にしていく。

 ベネットたちはすでに銀級にふさわしい実力を兼ね備えていた。


 ベネットたちがゴブリンロードが出てきた小屋を確認すると、エルフの女性の遺体が……裸にされナニかで貫通して死亡したような無残な亡骸も含めて散乱していた。


「うっ……!」


 サシャが口を押える。

 それはゴブリンロードがどれほど非常な嗜虐的魔物であったかを説明するには十分なほどの惨状であった。


「……遺体の回収は、ここを安全にしたらエルフたちに任せよう。俺たちは生きているエルフの女性を探そう」

「う、うん、わかったわ」

「ああ、こんな悲惨な光景、エリシアちゃんやシアには見せられないしな」


 ベネットは小屋の奥にある洞窟を発見する。

 地下に続くように掘られた穴だった。


「どうやら、ここが保管場所みたいだな。頻繁に出入りしているのか足跡が多数ある」

「ああ、それに、運ぶのに荷車を使っているみたいだな。荷車の跡まで残っているぜ」

「なら、間違いないようだな」


 調べていると、奥から異変を察したのかゴブリンたちが出現する。


「蹴散らすぞ!」


 ベネットたちは文字通りゴブリンたちを蹴散らす。

 ゴブリンはベネットたちにとっては弱く、相手にもならない。

 いくら数で来たところで、ベネットたちほどの実力があればせん滅にもそこまで時間がかかることではなかった。


 洞窟の中は簡単な構造になっていた。

 一直線に彫られていて、一番奥に牢獄があるスタイルだった。

 なぜそこが牢獄だと分かったかと言うと、入口には門番代わりのホブゴブリンが2匹待機していたからだった。


「ニンゲン?!」

「ロードハ?!」

「しとめるぞ!」


 焦るホブゴブリンにベネットは突撃する。


「もう一匹は任せな!」


 ジェイルもホブゴブリンと戦い始める。

 ベネットは自分の戦いに集中する。

 鎧を着たゴブリンナイトと言ったところか。おそらくエルフの国からちょろまかした装備を装備しているように見えた。

 ベネットは盾で殴りつける。シールドバッシュと言う技だった。


「はぁああ!」


 そのまま剣で切り刻む。

 ガンっと鎧がゴブリンを守るが、ベネットの重い一撃は鎧を切り裂く。

 ゴブリンはベネットに攻撃を仕掛ける。

 手に持っていたメイスでベネットを殴りつけるが、ベネットは盾でそれを受け流すと、ゴブリンの右わき腹……鎧の隙間から剣を入れて切り上げる。

 そして、ゴブリンの体は上下に泣き別れてしまった。


 ジェイルの方も、素早い動きで翻弄して、暗器で的確に仕留めていた。

 そろそろ《暗殺者》の祝福をジェイルが身に着けるかもしれないななんて思いながら、ベネットは剣を腰に収める。

 魔物の気配はなくなったからだった。


「よし、片付いたぜ」

「こっちもだ」


 あっという間に片づけた二人に、サシャは苦笑しながらも討伐証明部位のみ切り取って遺体を魔法で焼いて処分していた。


「では、私が先に入りますわね」

「ああ、頼む」


 サシャはベネットがうなづくと、牢屋に突入した。




「ガアアアアアアアア!!!」


 ズバァっとあたしはゴブリンロードの左腕を切り飛ばした。

 いくら早いと言っても、あたしは最小限の動きで切り刻むのに対して、大ぶりの斧で戦っているのだ。

 疲労の蓄積が勝負の差だろう。

 左腕を失いバランスを崩したゴブリンロードを切り崩すのは容易かった。

 あたしはあっという間に両手両足を切断し、行動不能にさせた。

 そのままおなかに聖剣を突き刺す。


「さあ、いろいろと答えてもらうわ!」

「ギャアアアア!!」


 あたしは不快な一物を踏みつけて、ゴブリンロードにそう宣言したのだった。

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