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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
冒険者だけれど村娘に戻れるか心配です
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決戦準備4日目

遅れてすみません!


ストックが切れたので、追加作業を行います。

 翌日、あたしは午前中からギルドで事務作業行なっていた。予想通り、ギルドでもバックれた職員が複数人おり、どこも人手が足りなくててんやわんやしている。平時ならまだしも男性恐怖症のあたしは受付には向かないという事で、後ろで事務作業をしていたのだ。

 討伐部位からの賞金の換算や、銀貨の準備などもやっている。受付も、対応できる人が3人しかいないので、その3人が頑張って対応している状況だった。

 主に対応しているのは、牛頭の魔族討伐の報奨金の受領や、魔王を倒してくれと懇願する市民への対応である。

 役所は責任を冒険者ギルドに押し付けてきたらしく、なぜか市民への対応もやっていた。

 その分裏方の人手が減り、あたしは忙しく駆け回っていると言う事である。

 すでに避難希望の市民は避難を開始しており、護衛の依頼を受けた銅級冒険者達が役場の人と一緒に誘導を開始している。もちろん、念のため銀級冒険者も何人かつけている。

 今、ギルドに来ているのは逃げない選択をした市民であった。


「なぜ、すぐにでも対応をしないんだ!」

「私たちの財産をどうするのよ!」

「ギルドが保証してくれるのか?!」


 ……逃げない選択をしたのよね? 男性の罵声が聞こえて若干体が強張る。


「大丈夫か?」


 男性職員に気遣われてあたしはうなづく。深呼吸をして落ち着きを取り戻し、あたしは仕事に戻る。

 そんな感じで仕事をしていると、あたしに声がかかる。


「エリシアさん、時間です。二階の応接間で待機をお願いします!」

「あ、はーい」


 あたしは仕事を周りの職員に任せて、移動する。

 応接間の扉の前に立ち、ノックをした。


「エリシアです」

「入りなさい」


 あたしは扉を開ける。

 応接間にはライノスさん含めたパーティとギルドマスターが待っていた。

 それにしても今更であるが、ライノスさんのパーティは女性が多い。と言うよりも、男性2人に対して女性が4人いる構図だ。全員が大人の女性って感じの色気を持っており、あたしでは完全にお子ちゃまでしかない。

 ライノスさんはあたしを見ると、フンっと機嫌悪そうに顔をそらした。


「そこに座りなさい」

「はい」


 あたしはギルド職員の服のままである。鎧や剣は装備していなかった。ギルドの更衣室には預けているので、すぐに着替える事はできるけれどもね。


「では、【破壊魔王】シヴァの討伐作戦について、説明をしようと思う」


 ギルドマスターが真剣な表情でそう宣言した。

 と言っても、コレは以前と同じ内容で、あたしと言ってもライノスさん達を最善の状態でどうやってシヴァと戦わせるかと言う話だ。雑魚は銀級冒険者が討伐するから、それまで力を温存する、その後、集団儀式神聖魔法《裁き》や高等集団魔法《雷光》で先制攻撃を行い、あたし達が連携して突撃すると言った感じである。

 前回は、あたしが討伐に加わることにライノスさんが反対をして終わったわけだが、ライノスさんは折れてくれたのだろうか?


「いいや、ダメだね。シヴァは俺たちだけで倒す」


 不機嫌そうなライノスさんはそう宣言をする。


「たかが軽戦士を一人増やしたところで、俺たちのパーティのバランスが崩れるだけだ。そもそも即興でチームプレイなんてできるはずがないだろう」

「そ、それはライノスさんがエリシアの参加を拒んだためで……」

「だが、俺たちの訓練にこなかっただろう? どうしてもと言うなら、せめて顔を出すぐらいはするんじゃないのか?」

「……」


 それはそうかもしれないが、そもそもライノスさん達は訓練場所すらギルドに明かしていない。


「その子はギルドの職員なんだろ? 俺たちのサポートを大人しくしてれば良いだけだ」


 ライノスさんのメンバーである剣士……ヴィアンさんは肩をすくめながらライノスさんに同調する。

 風貌は長髪のイケメン騎士と言った感じである。ライノスさんは軽戦士、ヴィアンさんは重戦士と言った感じだ。武器はハルバートを使っているらしい。


「勇者であるはずも無いんだし、こんなちっちゃい子が前線に出ること自体がおかしいのよ。全部ライノスに任せてれば上手く行くわ」


 最初に同調したのは、サシャと同じように気の強そうな魔法使いの女性だ。髪の毛の色が緑色をしており、風属性の資質が強調されているのがわかる。服装は、何というか、エロい。ボディラインを惜しげもなく強調しており、女のあたしでさえ、目のやり場に困るぐらいエロティシズムに溢れた服装だった。

 他の女性メンバーも役割がはっきりとわかるエロティシズムに溢れた格好をしており、大剣を持った鬼神族の女性はビキニアーマーを、回復魔法使いの女性は白いフードをかぶっているが、服装は前線タイツに布を巻いたレベルで身体がはっきりわかる服をしている。弓を持ったエルフっぽい女性もやっぱり、ボディラインがはっきり出る服を着ており、エロい。全員が出るところは出て、引っ込むところは引っ込むエロい体をしていた。

 何このメンバーはと思うけれども、実力は確かな雰囲気を感じられる。実際、ガネーシャと戦って生き残っているメンバーなのだ。実力は折り紙つきなのだろう。

 前衛2、中衛1、後衛3の、割とバランスのとれたパーティ構成だし、確かにあたしが入る隙は無いのだろう。

 それに、あたしもあのエロいグループには参加できそうに無い。あたしはどちらかと言うと可愛い系の顔をしているのだ。セクシー系が好きなライノスさん達には不要だろう。

 あたしの胸がCからDに成長したのだって、どちらかというと大胸筋がついたからだしね……。

 あたしがそんな事を考えているとライノスと話していたギルドマスターがため息をつく。


「……わかった。では、ライノスさん達に任せるとしよう。エリシア、それでいいかな?」

「構わないわ。あたしは勇者じゃ無いし、ただのギルド職員だしね」


 まあ、ただのギルド職員がガネーシャを倒せるわけもないが。


「だが、その子は強いんでしょ? 私たちの露払いをやって貰えばいいんじゃ無いの?」


 と、フードを被った女性回復術師提案する。


「どっちみち、彼女はギルド職員なのでしょ? 問題ないわよね」


 ニコニコ話す彼女の目を見ると、嫌な目をしていた。あたしを使い潰す気なのだろう。はっきり言うと、嫌な感じである。

 回復術師の女性はライノスさんにそう提案する。


「俺はそもそも、18にも満たない女の子が戦うのが気にくわないんだがな」

「でも、ギルドの職員をやっているってことは、責任を取る覚悟があると言うことでしょお?」

「……そうだな、フン、そいつの扱いはギルドに任せるさ。だが、俺たちと連携などさせん。それだけは譲れないがな」

「わかりました」


 あたしもそうだったからわかるけれど、《勇者》は召喚されるものであって成れるものじゃないからね。あたしも率先して言いたいわけではないし。


「じゃあ、エリシアはライノスさん達の護衛を任せることにする。それで良いですか?」

「……まあ良いだろう。俺たちの側が一番安全だからな」


 と言うわけで、あたしはライノスさん達にくっついてシヴァのところに行くことになった。確かにライノスさんにくっついて行けば、安全は約束されたようなものである。

 まあ、近くに行けるだけで十分だろう。ガネーシャのようにあたしから《勇者》の気配を嗅ぎ取って襲いかかってくる可能性が高いし、ライノスさんのそばにいればそれだけ被害も少なくてすみそうだ。


 その後、ライノスさん達は独自に訓練をするとかで、お開きとなった。時間としては2時間程だったろう。

 ご飯を食べ損なったあたしはご飯を食べに街中に出て行った。

 避難を行なっている店がほとんどで、空いている店は無いに等しい。いつもは活気付いている時間にもかかわらず、人っ子一人居ない。いるのは衛兵さんか、冒険者ぐらいなものである。

 人が居ないアクセルはさみしいもので、1月半ほど暮らしているがだいぶ愛着もわいているせいか、余計に寂しさを感じる。

 ふと、いつもランチに使っている喫茶店を訪れると、なんとやっていた。あたしは早速入る。


「いらっしゃい」


 こぢんまりした喫茶店は、ギルドの受付嬢達に人気の店だ。ご飯も美味しいし、ゆっくりできるのが魅力である。

 あたしは窓際の席に座り、ランチセットを注文する。今日はサンドイッチとコーヒー、ベーコンエッグとサラダにクレムブリュレ……前世の世界でもある、カスタードプディングの表面を焦がした水飴で覆ったやつかな、を注文する。

 前世の記憶が混じってから言語体系とか色々あるが、ダルヴレク語はどちらかと言うとフランス語に近い。発音も含めてである。国によって発音に差異があったり、言語自体が異なることがあるけれども、フェルギンとその周辺国は基本的にダルヴレク語を使う。それでも、リフィル王国は隣の国であるヴァークレイス統合王国の言語であるアフィラリン語……イメージはスペイン語に近いけれども、それが混じっているイメージである。

 そんな感じなので、前世の世界と似たようなお菓子は似たような名前になることが多い。

 あたしはゆっくりとランチを取りながら、寂しくなったアクセルの街をぼんやりと眺めていた。

 ベネット達は無事だと良いけれども……。

 リナリー達金糸雀亭の従業員もベネット達が先導する避難隊で逃げているため、あたしは今日はギルドに泊まることになっていた。


「……さてと」


 あたしは、ランチを取り終えて席を立つ。別に店員さんと親しいわけでは無いので、チップを机の上に置いて立ち去るだけである。

 午後も仕事は残っているので、あたしは決戦前だと言うのに仕事のことで頭をいっぱいにしたのであった。

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