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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
冒険者だけれど村娘に戻れるか心配です
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戦いの後

 あたしが一階に降りると、食堂にはベネット達が集まっていた。


「あ、起きられたんですね、エリシアさん」


 リナリーがにこやかな笑みを浮かべて、あたしのところに駆けつけてくれる。


「ええ、おかげさまで」


 特に貧血も感じていないし、普通に動く分には問題なかった。


「エリシアさんすごい活躍されたんですってね! 噂になってますよ!」

「え、いやあれは実質不可抗力よ」


 ガネーシャはあたしを【勇者】と認識していた。何を基準にそう判断をしているか不明であるが、少なくとも祝福で判断していないのは明確であった。

 今はステータスを見れば、自分の能力を確認できるし、現にあたしのステータスのジョブ欄にはあたしの祝福が書かれている。


 《勇者》:Lv5

 《英雄》:Lv7

 《魔法使い》:Lv10★

 《剣士》:Lv9


 実際に見てもどう言う仕組みかわからない。しかし、スキルの項目に【ステータスの閲覧】とあるので、《勇者》の祝福の特権だろう。

 レベルが上がる事による恩恵もわからないし、実感もない。あと、気になるのがレベルの横に★が付いている祝福だ。普通に考えれば、祝福の格が上がると思えば良いのだろうか?

 《魔法使い》から《魔導師》になるみたいな。

 それに、心当たりはあるけれども《剣士》や《魔法使い》の祝福はいつされたと言うのか。


 まあ良い。そう言う検証は後回しにする事にした。


「おはよう、みんな」

「ああ、おはよう」

「おはよう」

「ん」


 あれ、ジェイルが居ない。


「ジェイルは?」

「情報収集に行ってるよ。悪い方向に事態が動いてるみたいだからな」

「どう言う事?」

「シヴァが動き出したと言う話なんだ」


 シヴァは確か、一つの街を破壊し尽くしてそこで瓦礫の城を作って留まっていたはずである。

 考えられるのは、ガネーシャを討伐したからだ。それで活動を開始したと見たら良いのだろう。


「……まさかアクセルの街に向かっているとか?」

「わからん。その部分をジェイルに調べてもらいに行っているんだ」


 なるほどねとあたしは思った。なんだかんだと言ってジェイルの情報収集スキルは高い。ギルドに所属しているあたしなんかよりも良い情報をさらっと入手してくるし、期待して良いだろう。


「それよりも、エリシアちゃん大丈夫だった?」

「大丈夫よ、サシャ。回復魔法をかけてもらったおかげか傷も残っていないし、貧血も大丈夫そうよ」


 あたしは椅子に座りながらサシャにそう言う。


「昨日はあれからずっと意識を失ってた。心配するよ」


 シアがあたしの髪を撫でながらそう言う。そう言えば、今は何時だろうか? 時計に目をやると、10:00であった。ギルドの業務はすでに始まっている時間である。

 その様子に気づいたシアが教えてくれる。


「エリシアは今日はお休みの日。昨日ギルマスが言ってた」

「そうなんだ。それは良かったわ」


 あたしが座っていると、リナリーがご飯を持ってきてくれた。


「さ、昨日はいっぱい血を流したって聞いたので、血を補充するような料理を作りましたよ!」


 あたしの前に並べられたのは、前世で言うところの鉄分が多そうな食品を材料に作られた美味しそうな料理であった。


「ありがとう!」

「いえいえ♪ これでエリシアさんが元気になったら嬉しいです!」


 あたしは早速いつものように女神様への例をしてから食べる。


「女神様、日々の糧をありがとうございます。今日も糧によってあたしは生きています。女神様の祝福あれ」


 ()()で言う「いただきます」の感覚である。シア曰く、アフェリス教特有の言い回しなんだそうだ。

 ご飯の味はベリーやほうれん草、卵料理や魚料理が多い。普通に入っているベリーは独特の酸味があるラジアラベリーだろう。甘くないけれども料理のアクセントになる。ちなみに、ほうれん草はこの世界ではテメリア草と言う。世界が違えば名前が異なるのは当然ではある。


「ん〜〜美味しい♪」


 金糸雀亭の料理のおばちゃんの料理はかなり美味しい。あたしが作るよりも美味しいかもしれない。確かに、出汁とか旨味とかは考え自体がないこともあるけれども、それを差っ引いても美味しい。


「ベネット達は?」

「俺たちはすでに食べたよ。気にせずに食べると良いさ」

「そうなの。じゃあ、遠慮なく」


 それにしても本当に美味しい。今までと変わらないはずなのに何故だろうか? あたしの目的がはっきりしたからだろうか? あたしの中でモヤモヤしていた何かが明確になったからだろうか?

 疑問は尽きないが、せっかくおばちゃんが作ってくれた料理なのだ。美味しくいただくとしよう。


「そうそう、エリシアちゃんは眠っていたからわからないだろうけれど、あの後大変だったのよ」

「んぐんぐ……、大変と言うと?」

「眷属を倒した後、象頭の魔物が暴走しだしてね。鎮圧するのに一苦労したわ。銀級の連中も殺されて人数減っちゃってたし、銅級にもかなり犠牲が出ちゃったのよ」

「え、そうだったんだ……」

「で、鎮圧を終えたら、ギルドマスターがエリシアちゃんが渡された魔石から聞こえる声を聞いて、慌てて会議をしたかと思ったら、魔王シヴァが動きだしたって発表されたのよ」

「あー、だからジェイルがいないのね」

「ああ、ジェイルは昨日から情報収集さ。俺たちはジェイルの帰りを待っていると言ったところだ」


 ジェイルは昨日から戻っていないと言うことは、昨日の時点ではそこまで有用な情報を集められなかったのだろう。

 昨日の今日だし仕方ないのかもしれないけれどね。


「だから、眷属討伐の祝賀会をやろうって話も流れちゃったわけよ」

「一番の功労者が寝てたし、無理」

「それは申し訳なかったわね」


 それはどうしようもないと思った。あの恐ろしく強いガネーシャを討伐した後なのだ。全てを出し切った後であるし、血も魔力も体力も無かったあたしが1日で意識を回復できたのは、実はすごいことかもしれない。


「それにしても、エリシアの表情が良くなった。色々と吹っ切れた……?」

「……そうかもしれないわね」


 心当たりはある。あの鬼畜供をこの世から抹殺する事を決めたわけだし、それで色々と吹っ切れたのかもしれない。

 シアに言われてあたしは腑に落ちた気がした。


「じゃあ、ベネット達は今日はどうするつもりなの?」

「今日は自由行動と言うことにしようと思っているさ。もう、エリシアちゃんを狙うやつもいないと思うけど、エリシアちゃんの護衛任務は続いているから、エリシアちゃんがどうするかによるけどね」


 確かに、眷属を討伐したあたしを倒そうと言う連中はもういないだろう。返り討ちにあうに決まっているからだ。

 それならば、祝福を更新するのも良いかもしれない。前世で例えるならば、ジョブチェンジみたいなものだ。

 うーん、なんだかさっきから前世の記憶と今の記憶がだんだんごっちゃになっている気がする。今までは明確に区別がついていたのに、何故だろうか。


「そうね。アフェリス教の教会に行こうと思うわ」

「それなら、私達がついて行けば良さそうね」

「……私はヴェナン教だから、サシャだけで行って」

「そうだったわね。それじゃ、私とエリシアちゃんはアフェリス教会に行きましょっか」


 サシャの言葉に、ベネットはうなづく。


「了解。それじゃあ俺はギルドで依頼を見てくるとするか」

「……私は魔術ギルドに行ってる」

「それじゃあ、確実方針は決まったわね!」


 と言うわけで、あたし達は今日の予定が決まった。

 と言っても、あたしは食事中なので、先にご飯を食べてしまうのが優先事項ではあるけれどね。

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