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村娘だけど実は勇者の転生者でした  作者: 空豆だいす(ちびだいず)
村娘だけど実は勇者の転生者でした
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女神様の祝福2

 あたしの人生はどうしてままなら無いんだろうか。魔法使ってお母さんに怒られるし、前世の記憶がよみがえるし、レイプされそうになるし、聖剣の鞘になっちゃうし。こんな祝福だと、確実にこの村には帰って来れないだろう。さきほどお別れを済ませたティアナと再会確定である。恥ずかしい。


「えーっと、エリシア。流石にこの祝福はこの場で発表はまずいじゃろう。ここは上手く結果が出なかったとしておくから、後でご両親と一緒に私のところに来なさい」

「はい、司祭様。御慈悲をありがとうございます……」


 司祭様の親切にあたしは感謝するしかなかった。確かに、二度も続けて【金級祝福】以上が出たならば、この村自体がとんでもないことになるだろう。ティアナのときの大人の騒ぎ具合から推測してであるけれども。

 まあ、お母さんだったらやっぱりねって顔をしそうではある。あたしがルーン文字で魔法を使えるのを知っているのはお母さんだけなのだから。


「ん、んーっ、申し訳ない。エリシアよ。結果が上手く出ないようじゃ。後日改めて発表させてもらうが良いな?」

「は、はい。わかりました、司祭様」


 微妙なごまかし方ではあるが、まあこんなものなのだろう。騎士さんたちのほうを見ると騒然としているが、村の人たちの方は「なーんだ」と言う感じである。王都の教会ではそういう事例は無いのだろうけど、ここは村である。そういう配慮があって当然とも言える。

 しかし、“そうは問屋が卸さなかった”と言うことであろうか、あたしの世界では“この値段では商人は妥協しない”と言うのだけれど。似た意味だから気にする必要はないけれども。

 そう、近くで待機していた一番偉そうな御髭が綺麗に整えられた騎士さんが申告したのだ。


「司祭様、それは本当でしょうか?」

「か、カーネリック卿、その通りでございます」

「それは虚偽ではないか? エリシア嬢からかつて無いほどの強い力を感じたのだが」

「え、ええ。後日ちゃんと説明しますから」

「ダメだ。ディアシス司祭。今この場でハッキリさせてください。我が王都の教会から借り受けた水晶がここにありますので、こちらを使ってもかまいません」


 司祭様がどうしようと言った感じの目線をあたしに送ってくる。あたしは不満しか無い。せっかく穏便に済みそうなのに、ここで蒸し返されても困るだけである。だけれども、《卿》がつく騎士様である。ここまで言われて止めておきますと言うのは通用しないと、子供のあたしでもわかる。進退窮まるという言葉がこれほど合う状況は無いだろう。あたしの胃がキリキリしてきた。


「わ、わかりました……」


 司祭様は丁重に水晶を受け取ると、あたしに目配せをする。水晶に手を触れなさいと、目で言っているのがわかる。この水晶、王都の教会が使用しているというだけあって、見た目から高性能っぽさをかもし出していた。


(う、恨むわよ! カーネリック卿さん!)


 あたしは恐らくすごく嫌そうな顔をしていたと思う。冬場に扉の取っ手を触った時にバチッとするのを恐れるのと同じように、恐る恐る、あたしは水晶に手を触れた。

 開示されてしまった情報に、あたしは村の水晶の内容を発表しておけばよかったと後悔することになる。


「な、なんと! エリシア嬢。いや、エリシア様。あなたがこの村に現れるといわれている世界を救う者だったのですね!」


 カーネリック卿さんが恭しくそう言う。

 水晶から光が飛び出し、教会の壁にあたしの能力が映し出されていた。転生前の世界で言う、プロジェクターのようにである。


 エリシア・デュ・リナーシス

 祝福:《英雄》

 固有スキル:■■■、聖剣の鞘

 習得魔術:ルーン魔法


「は?」


 あたしの頭は真っ白になる。意識が飛ばなかったのは我ながらすごいなと思ったのだった。【魔女術(ウィッチクラフト)】に関しては黒塗りされており秘匿されているが、何かあることは一目瞭然である。というか、公衆の面前でここまでさらし者にされるのと、あたしの大切な部分を公開しているのは対して差が無いように思った。

 別に祝福を受けたからといって、能力が上昇するわけではない。あたしが一目散に逃げ出そうとしたのを、騎士さん一人に止められてしまったからである。あたしは剣術を磨いてなかったので聖剣を取り出して切りかかろうとしても、熟練した騎士さんの手で簡単に止められてしまうのだった。


 あたしは、ティアナと同じ部屋に居た。両腕は縛られ、聖剣は仮の鞘にしまわれ壁に立てかけられている。羞恥心で暴れて押さえつけられた結果である。


「いやすまない、エリシア様。こうなることに対する配慮だったのですね」


 カーネリック卿は謝罪している。あの後、村は大騒ぎになってしまったのだ。もちろんお父さんは質問攻めのめちゃくちゃにされ、英雄の誕生した村だと大騒ぎになっている。


「……うぅ、どうしてこうなるのよ……」


 せめて、出て行くにしても静かに出て行きたかったあたしとしては、このおっさんに対して恨みしかない。いまさら謝罪されたところでどうしようもないのだ。もうあたしの中ではカーネリック卿をおっさん呼ばわりで良いかなと思う。


「だいたい、あたしみたいなただの村娘が英雄っておかしいじゃない。だから隠そうとしたのにこのおっさんは……!」

「ははは、そう睨まれるな。陛下もエリシア様を確保できたことはお喜びになられるであろう」

「王様に喜ばれてもあたしはうれしく無いわよ……」


 あたしは脱力した。このおっさんは、そういう仕事だから仕方ないとしても、職務しか眼中に無いのだ。


「で、でも、私はエリシアと別れずに済んでホッとしているわ」


 ティアナはそう言って微笑むが、たぶんあたしよりはダメージが少ないだろう。あたしの場合は公衆の面前で隠してたことが公開されてしまったのだから。とりあえず、あたしの気持ちは置いておくとしよう。話が進まないし。


「で、あたしたちはこれからどうなるのかしら?」


 ちなみに、《騎士》のエレンは別室である。このおっさんの部下の騎士さんから説明を聞いているらしい。まあ、扱いが違うのは仕方ないわよね。


「まずは、王都に向かってもらい、陛下と謁見をしてもらう。王都までの道のりは3日ほどあるので、その間に陛下に失礼の無いように教養とマナーを身につけてもらうことになる。念のために城に使える侍女を連れてきていたので、彼女から色々とレクチャーを受けると良い」


 おっさんがそう言って紹介したのは、シックなメイド服を着た女性だった。


「ウィータ・エルメスで御座います。3日間ほどマナーと教養を教授させていただきます。よろしくお願い致します」


 そう言って優雅な立ち振る舞いで礼をする。あたしは両手を結ばれているが、参考にして立ち上がり礼をした。ティアナもあたしに続いてあわてて礼をする。


「エリシア・デュ・リナーシスです。ご教授よろしくお願いいたします」

「てぃ、ティアナ・デュ・リナーシスです。よろしくお願いします!」


 それを聞いていたおっさんは、あたしたちのセカンドネームに苦言を呈する。


「ふむ、二人は姉妹ではないのだろう? 家名は無いのかな?」

「いえ、ありませんよ。あたしたちの村は皆、『デュ・リナーシス』と名乗っています」

「なるほど、そういうものか。いやなに、私は王都出身なものでね。家名が無いのは知らなかったのだ」


 おっさんはそう言うと、あごに手を当てて少し考える。髭をじょりじょり触ると言い考えが浮かぶのだろうかと、あたしは思ったのだった。


「そうだな、家名が無い、と言うのは後々問題になりそうだ。冒険者ならまだしも、君たちには公的な立場も与えられることになるだろうからな。まあ、陛下に具申すれば名づけてもらえるだろうから心配しなくて良いだろう。そこは私が取り計らっておこう」


 あたしとしてはうれしくない。貴族なんて面倒くさそうなものにはなりたくないのだ。それにあたしはただの村娘。そういう良くわからないものになりたいとは思わないのだ。だけれども、偉い人に取り計ってもらって、うれしくないというのは通用しないだろうというのはさすがのあたしでもわかる。あたしとしても不本意ではあるが受け入れるしか無いだろう。今頃あたしの前世のクラスメイトたちも理不尽な目にあっているのだろうからね。


「ありがとう御座います」


 おそらく苦虫を噛み潰した表情をしているに違いない。あたしは表情と口先の違いを露呈しているに違いなかった。

 あたしの返事に満足したおっさんは、うんうんとうなづいていた。


「あの……」


 と、ここでティアナが手を上げて発言をしようとする。


「どうしたのかね、ティアナ様?」

「お父さんとお母さん、妹たちには会わせてもらえないのですか? なにぶん急なものだったので」

「ふむ、確かに」


 おっさんはそう言うと、またお髭をジョリジョリさせながら考える。


「われわれの部下付きで、この教会に招くという形になるが良いかな? とくにエリシア様は逃亡する可能性が高いのでね」


 あたしの逃げ道を完全封鎖したお方の言葉にさらにげんなりする。まあ、村を出る前にシエラの顔を見れるなら良いかなと思うが、なるべく最後にはしたくないものである。シエラはまだ8歳なのだ。あたしのようにまだ家事全般が出来るわけじゃないし、料理もまだ出汁を取れるまで習熟していない。少なくともあと2年は足りないのだ。

基本的にエリシアが知ってること、聴いている事に関する情報しか開示していかない予定です。

エリシアはこの段階ではリナーシア村のことに関してのみと、噂話ぐらいしか知りません。後は冒険者であった父親の活躍や、母親の話ぐらいですかね。

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