女神様の祝福1
あたしが家にたどり着くと、両親は心配してくれたのか、こんな真夜中にもかかわらず温かく出迎えてくれた。お母さんは涙していて、あたしはものすごく申し訳ない気持ちになった。後日聞いた話だけど、アルフレッドはかなりキツく絞られたらしい。お父さんから、アルフレッドに嫁ぐ事はないと宣言されて、泣きそうな目をアルフレッドがしていたが、成人の儀である女神様の祝福の前に未成年の女性をだまし討ちのように森に連れ出し一泊させたのは言語道断という事だった。そこは、アルフレッドを擁護できる点ではなかった。
ケリィはと言うと、ヴィレディ曰く逃げたそうだった。ヴィレディがあたしから経緯を聞いたときに怒ってたが、おそらくこのままであればケリィは村で処刑されていたようだった。
ケリィがいなくなると同時に、ルビーも行方をくらませてしまったというのも、かなり問題になったが、数日経っても結局見つかる事はなかった。たぶん前世の記憶から言うならば“ドメスティックバイオレンス”の被害女性の行動パターンに当たりそうだなとあたしは感じた。おそらく、ルビーもケリィにレイプされてたのであろう。それで脅されてしまったのだろう。ついて来なければバラすと。
可愛そうではあるが、あたしにはどうすることもできない。ルビーがヴィレディよりもケリィを選んで出て行ったと言う事実は変えられないのだから。
そして、女神様の祝福の日当日まであたしはこの無銘の聖剣をどうするかについて悩むことになった。
まず、この聖剣はあたしの意思一つで自在に取り出しが可能である。あたし自身が鞘であると言うことなのだろう、隠し場所には困らないので、そこは悩むポイントではなかった。
次に、この聖剣の名前である。あたしとしては特にいらないかなとは思うけど、聖剣エリシアとかそういう名前になったら絶対嫌なので、何か名前は付けておいたほうが良いだろう。とはいっても、人前でこれを使うことはほぼ無いはずなので、思いついた時でいいかなとは思う。
そして、一番の問題点は、そもそもあたしは剣を振ったことすらないと言う点である。せっかくの聖剣も持ち主があたしでは、宝の持ち腐れである。誰かに譲渡できないかなと、こっそり試してみたけど、どうやってもうまくいかなかった。
結論を言うと、この聖剣を使わなければ、あたしとしては平穏な生活が送れるのだろう。ただ、気になる点としてはあたしの前世のクラスメイトが召喚されること、女神様からの神託、そして、転生前にもらった【魔女術】に関してである。祝福をもらうまではあたしはこれらについてはどうしようもないだろうし、考えても無駄だろうけどね。
そこから数日も経たないうちに、祝福の日になる。
祝福の日は年間4回の季節の節目に行われ、村に1件しかない教会で行われる。村の子で15歳になる、あたしを含めた3人が祝福を受ける。男の子のエレン、女の子のティアナである。あたしの出番は3人目と言うことになっている。
街だともっと豪華な感じになるそうだけれど、村での祝福は村人全員が集まり、司祭様が管理している水晶に手を触れると言う方法である。すると、水晶に何の祝福がなされたか浮かび上がると言う感じである。前世の世界で言う職業何だなと今では理解できる。
お父さんに連れられて教会に行くと、それなりの人数が教会にすでに集まっていた。それに、甲冑を着込んだ騎士のような人もいる。
「お父さん……?」
「ああ、彼らは国から派遣された騎士さんだよ。昨日到着したらしいよ」
「何でまた……?」
「この村に世界を救う存在が誕生すると言う予言があったらしい」
あたしとしては村から出ないで済むような祝福を望んでいるので、嫌な感じしかしなかった。いや、もう実際のところ確信に近いだろう。あたしの中にある聖剣と言い。要素自体は揃っているのだ。
と、お父さんと話しているとその騎士さんの1人が話しかけてきた。
「そちらの美しいお嬢さんは?」
美しいは余計であると、あたしは思う。
「ああ、エリシアと言ってね、今日祝福を受けに来たんだよ」
「なるほど、エリシアさんね。すでにエレンくんは到着しているから、準備をしたらいいよ。何なら案内いたしましょうか?」
「いや、大丈夫だ。父である私の役割を奪わないでくれ」
「これは失礼」
あたし以外にもエスコートして、1人は奴隷として売っているにもかかわらずそう言うお父さん。まあ、止むに止まれぬ事情があるのだろうけど、娘を売るというのは承服しがたい話である。シエラが売られそうになったらあたしは聖剣でお父さんを退治するかもしれない。
ちなみに、お父さんはなぜか上の姉ではなくあたしを一番に可愛がっているのは、姉妹の中で一番お母さんの若い頃に似ているかららしいと言うことをマーティ兄さんから聞いている。たしかにお父さんの特徴はあたしの瞳の色である濃い青色だけだものね。
お父さんに連れられて教会に入ると、ちょうどエレンが祝福を受けている最中であった。
「エレンの祝福は《騎士》である!」
司祭様がそう宣言するところであった。《騎士》の祝福はこう言う辺境の村では珍しい祝福である。大抵は国に使える騎士になる人がほとんどだったと記憶している。
「おお、《騎士》であるか!」
「エレンは親孝行者だな!」
村を出ることになるが、安定した収入を得ることができる祝福なので、大人たちの人気が高い。それは、もちろん仕送り的な意味でだが。それに、周りの人の声から《騎士》の祝福は【銀級祝福】と呼ばれているらしいから。大人たちの間でも祝福にランクづけがなされてるんだなと感心する。
エレンも大人達から祝福されて、非常に嬉しそうである。エレンは長男では無いので、明日には騎士さん達に連れられて王国の首都行きだろう。
「やったぜ、エリシア!」
「おめでとう、エレン」
通り過ぎにどや顔でそう言うエレンにあたしは祝福の言葉をかける。何にしてもめでたいことだ。奴隷として売られるような祝福を受けなければあたしは大丈夫だろう。そんなことを考えていると、エレンがこう続けてきた。
「その、アルのことは残念だったな」
また答えにくいことを聞いてくるなとあたしは苦笑する。
「ええ、そうね。残念だけど、アルフレッドとの結婚は無くなったわね」
そう、それからと言うものの、あたしが家事にいそしんでいるにもかかわらず口説いてくる村の男たちが多いのだ。「今はそういうことは考えられない、お父さんにもそう伝えてある」と言って断ってはいるけれどヴィレディの言っていたことは事実だったんだなと改めて実感するのだった。
「あのさ、そのことに関してだけど良かったら……!」
「エレンくん、まだ娘は祝福を受けていないんだ。わかるね?」
「え、で、でも」
「エレンくん」
お父さんの威圧を感じる微笑に、エレンは押し黙る。あの騒動以来お父さんはすっかり娘馬鹿になってしまったらしい。昔みたいにあまり干渉しようとはせず一定の距離を置いていたときとはまるで態度が違って困惑してしまう。
と、入ってきた教会の扉が開きティアナが父親につれられて入ってくる。ティアナはあたし的に村の中で一番可愛いと思っている女の子だ。前世の価値観で言うならば、物語のヒロインにいそうなタイプであり、肩までかかったゆるふわウェーブのかかった栗色の髪の毛に整った顔立ち、それにあたしよりもおっぱいは大きい。あたしが前世の基準で言うところのCカップならば、彼女はEカップなのだ。Cでも結構肩がこるのに、Eだと慢性的に肩こりになってそうだなと思う。ちなみに、ティアナには婚約者がいないが、父親が勇者でなければ認めないと豪語しているせいで“アイドル”みたいな状態になっている。ちなみに、ティアナの母親も結構でかい。
「おはよう、ティアナ」
あたしは早速声をかける。誕生日も近く同い年と言うこともあって、あたしとティアナは親友と言っても良い関係である。
「あ、おはようエリシア。今日がいよいよだね」
「ええ、ティアナはどんな祝福がいいのかしら?」
「私はお母さんと同じ《回復術士》が良いかな。エリシアは?」
「そうね、とりあえず農業関係が一番ね。マーティ兄さんと同じ《開墾者》かその上位の《開拓者》だとうれしいわ」
「エリシアは相変わらず現実的ね」
別に異世界転生したからスローライフを送りたいわけじゃない。お父さんから冒険者の怖さを散々聞いているので、そういうのになる可能性のある祝福を受けたくないだけなのだ。まあ、あえて言うなら《魔法使い》なら許せるかなとは思うけど。実際ルーン魔法は使えているわけだし。
「それじゃ、私が先ね」
「ええ、《回復術士》になれることを祈っているわ」
「ふふ、ありがとう」
ティアナはそう言うと、父親の手を引いて水晶の近くまで歩いていく。お父さんは、あたしが言うのもなんだけど、美少女のお話にほっこりしていたようである。といっても、そんなきれいごとばかりではない。女の子の世界はマウンティングの世界なのだ。あたしはアルフレッドが居たからそういうことに巻き込まれていなかっただけだったと、ここ数日で実感していた。露骨に自分の方が上アピールをしてくるのだ。今まで楽しみだった2時間の休憩時間はストレスが倍増する状態になっていて、あたしとしては結構げんなりとしている。
さて、祝福であるけど、村のものは簡易的なものであるらしい。洗礼詠唱を行い、どのような祝福を受けても後悔しないという宣誓をし、水晶に手を触れると言ったものである。そして、水晶に移ったものを司祭様が読み取り、祝福を発表するのだ。特別なスキルが出る場合もあるらしいけど、この村ではそんな前例は無いためどうするのかはわからない。【魔女術】が出たら絶対マズイと思うが、出るかどうかは女神様の采配次第なので、あたしが何か出来るというわけではない。
と、ティアナの祝福が終わったようである。ティアナは光り輝いて見えた。
「ティアナは……いや、ティアナ様は《大司教》である!!」
司祭様の言葉に教会がざわめく。《大司教》? 文字通り受け取るなら、宗教の偉い人である。わからないのでお父さんに聞いてみることにした。
「お父さん、《大司教》って一体どういう祝福なの?」
「ああ、【金級祝福】と呼ばれる祝福でね。この祝福は《回復術士》の上位の上位、《回復術士》が最終的に到達するといわれている祝福なんだ。最初からこの祝福を受けている人物はそれこそ伝説級の人ばっかりなんだよ」
「【金級祝福】?」
「ああ、《回復術士》は【銅級祝福】とされているから、かなり上位の祝福だということは理解できるだろう?」
どうやら、あたしと同い年の子はみんなすごい人だったようである。と言うことは……。
「あれ、ティアナとは今日でお別れと言うことじゃないの……?」
「……まあ、そうなるかな」
これだけ騎士さんが来ているのだ。こんな場所でその【金級祝福】なんて出たら、王都に連行確定であるだろう。まあ、ティアナはヒロインみたいな容姿をしているのだ。こういう結果になってもあたしは驚いたりはしない。ただ、ティアナとお別れと言うのは悲しいと思う。恐らく今生の別れとなるのだろう。
「ティアナにお別れを言ってくるわ」
「ああ、そうしておいで」
あたしは困惑しているティアナのところまで駆けて行く。あたしとティアナが仲が言いことは村では有名なので、誰も邪魔をしたりはしてこなかった。騎士さん以外は。
「止まれ! 君の祝福の順番は次だぞ」
「その前に、あたしの親友のティアナにお別れの言葉を!」
「ティアナ様だ。……まあいい。すぐに終わらせなさい」
「ありがとうございます、騎士様」
あたしはお礼をすると、ティアナのところまでたどり着く。
「エリシア、わ、わたし……!」
「ティアナ……」
「わたし、どうなっちゃうんだろう?」
「……この村に帰ってくることはなくなると思うわ」
「え、どうして……」
「そういう祝福だからよ。女神様からの祝福なんだから、ね」
「え、えっ?!」
「だから、もうティアナとは遊べなくなっちゃったわ。あたしの祝福はまだだけど、きっと平凡だからね」
「そ、そんな……!」
「これできっとお別れだから、そんな顔しないでティアナ」
ティアナは何が起きているのかわからない状態なのだろう。奴隷になった姉さんも似た様な表情をしていたことを思い出していた。
……いや、もっと醜悪だったかもしれない。姉さんの事はほとんど知らないけれど、両親や兄弟の口から話を聞く事はなかったからだ。
「これから大変だと思うけど、ティアナならきっと乗り越えていけるわ。そばに居れないのは残念だけど、ティアナの活躍を祈っているわ」
だから、精一杯元気付ける言葉をかける。祝福と言うのは残酷なものなのだということを、あたしは改めて実感する。
「うん、うん。ごめんね、エリシア。ありがとう」
と、騎士さんが間に入り、ティアナを連れて行く。ティアナの父親の絶叫が聞こえていた気がするが、騎士さんは職業に忠実なのか無慈悲にティアナを連れて行ったのだった。
結局、ティアナの父親は教会から追い出されてしまった。まあ、あれだけ騒いでいれば当然ではあるが。
すっかり騎士さんの人数も減ってしまった教会で、いよいよあたしの順番が回ってきた。主役はティアナだったのだから、あたしとしては気が楽である。
「エリシアさん待たせてしまって申し訳ありません」
「いえ、司祭様。仕方の無いことでしょうしね」
謝罪をする司祭様に礼を返して、あたしは祝福に挑むことになった。
「それでは洗礼詠唱を」
「はい……」
あたしは事前に覚えておいた洗礼詠唱を行う。魔力を込めないようにしないと、あたしの場合は術式として成り立ってしまうので、意識をして言葉だけを出力するようにしないといけない。練習はお母さんとしてあるので、大丈夫だろう。
あたしは祈るような姿勢になり、洗礼詠唱を行う。
「──私は女神様の僕、女神様に作られし人形。私の信仰は女神様のものである。隣人を愛し、両親を敬い、伴侶を愛し、子を愛し、自分の人生が女神様に祝福されたものであると確信する。之は女神様の祝福と私の信仰と不断の努力によってなされるものである。ここに女神様への信仰を誓う。洗礼詠唱」
もともと、この国では女神様を信仰するのは息を吸って吐くのと同じレベルの常識である。転生前の世界で言うなら、ニホンではシンドーやブッキョーと同じものである。だから、この宗教に名前は無い。まあ、他の国だとどうかはあたしにはわからないけどね。
洗礼詠唱が終わると、司祭様が問いかけをしてくる。
「エリシア・デュ・リナーシスよ。女神様の祝福をこれから授けるが、どのような祝福であっても後悔しないことを誓うか?」
「はい、誓います」
「では、水晶に手を触れるがよい」
あたしは、おずおずと水晶に手を触れる。触れた瞬間にバチっと手に静電気が走ったような感じがした。それと同時に、周りから音が聞こえなくなった。
不思議な出来事にあたしが周りを見渡すと、全ての人達の動きが止まっている。
「えっ……?」
何が起きたと言うのだろうか。あたしが困惑していると、脳内に美しい声が聞こえた。
『エリシア・デュ・リナーシス』
ふと上を見上げると、そこに居たのは、女神様であった。教会の壁画に描かれている女神様そのものである。まるで時が止まっているかのような状況にもかかわらず、あたしは顔を動かすことが出来たので確認することができた。
『あなたにふさわしい祝福を考えた結果、やはりどうしても《勇者》になってしまいました』
女神様は申し訳なさそうにそう言う。
「ねぇ、ちょっと待ってくださいよ。あたしはそんな祝福を与えられてもどうしようもないわ。ただの村娘なのだから」
『いえ、聖剣の鞘になっている時点で普通ではありませんが。それに、代わりのものに「世界中を旅せよ」と伝えましたよね? スローライフはダメですからね。一応世界の危機ですし』
「確かに言われたけど、あたしは承服しかねます。ケリィにレイプされかけてほとほと冒険者は嫌になったし。それに、世界の危機とはどういうことですか?」
女神様の言葉に、あたしは色々と疑問が湧き出てくる。
『……確かに、そういえばそうでしたね。それなりに場数を踏んだ冒険者から上手く逃げ切れて、私としてもすごくびっくりしています。そうですね、簡単に言うと、邪神がこの世界にやってきました。それに伴い魔王が複数発生していますね』
「なるほど、だから40人も勇者が必要なのね」
『ええ、エリシアを含めて40人です』
「強調しないで欲しいです。あたしはその、転生前の人間ではなくて、この世界に生きるエリシアなんですから」
『どうやらそのようですね。元男の子であったとは思えない反応ですもの』
「なので、《勇者》ではなく別の祝福にしていただけるとありがたいです。ティアナみたいになるのは嫌ですし。まあ、ティアナとは会えなくなるのは悲しいですが、それはそれです」
『いいえ、どちらにしても、あなたに与える祝福は最低でもティアナと同じレベルになりますよ。そもそも祝福前に聖剣の鞘になった人物が普通の村娘と同じような人生を歩めると思わないでください』
「ええっ、あんなの不可抗力じゃないですか。それに聖剣なんていりませんよ」
『それは私の管轄外なので、どうしようもないです。天啓はもののついでで頼んだことですしね』
「あの天使様、もしかして女神様と同格なんですか? というか、女神様、結構フランクですね」
『似たようなものです。それに、エリシアとは長い付き合いになるでしょうから、ね』
「そうですか。人生60年なので、女神様的にはそこまで長くは無いと思いますけど。まあ、それは良いです。祝福、《勇者》は絶対に嫌ですからね。今出てきたということは、あたしの抗弁を聞く準備があるということですよね」
『ええ、意思の確認です。まあ、あのときからあなたの様子は見ていましたから、《勇者》は絶対受け入れないだろうなと考えて出てきました』
「それはありがたいです。だから《開拓者》にして欲しいです」
『それは無理です。まあ、聖剣の鞘であり、【魔女術】のスキルを持つあなたにふさわしい祝福を用意しておきましたから、楽しみにしてください。それではエリシア、また会いましょう』
「ちょっと待って! 《開拓者》でお願いします!!」
あたしの懇願にもかかわらず、女神様はそのまま天に解けるかのように消えてしまった。ひどいお告げである。今、あたしはすごく微妙な顔をしている自信がある。
不意に、司祭様を見ると、司祭様も口をパクパクさせていた。どうやら女神様がいる間は世界が止まってしまうらしい。
それはそうと、司祭様の表情が驚愕の色を浮かべていた。一体どうしたと言うのだろうか?
「司祭様、どうされました?」
「……こんなことがあっていいものかと、心臓が飛び出るほどびっくりしておってな、エリシア様」
様と言う言葉にあたしは絶望を感じていた。司教様がこういう場合は、ほぼ確実にティアナと同じレベルの祝福、いわゆる【金級祝福】以上なのだから。
「司祭様、《様》付けはやめて欲しいです」
「う、うむ。そうは言ってもだな。さすがにこの祝福ではそうせざるを得まい」
そう言ってあたしに耳打ちで司祭様が告げた祝福は、ドン引きするのに十分な祝福だったのだ。もしかしたら奴隷より悪いかもしれない。あの女神様はどうしてもあたしを村の外に出したいらしい。
「エリシア、お前の祝福は《英雄》じゃ。【白金級祝福】じゃよ」
あたしは女神様を恨んでもいいのかもしれないと思った。これが《勇者》から妥協した結果らしい。あたし泣いても良いかな、なんて思ってしまったのだった。
祝福はいわゆる潜在能力を女神様に認めてもらう儀式です。
祝福を得ると、その職業に見合った才能を伸ばしやすくなるといった特典があります。
例えば、《剣士》であれば、剣の才能を伸ばしやすくなったりします。
ちなみに、女性で《剣士》系統の祝福を得たら、この村では奴隷として売り払うという掟があります。
《剣士》系統だと、家事一般が不得手な女性が多く、嫁ぐには向いていないと判断されるからです。
世知辛いですね。